ナタリー PowerPush - Hemenway
新曲は「エウレカセブンAO」OPテーマ“夢に向けての脱出”を描く
昨年11月にシングル「Listen」でデビューし、今年1月に2ndシングル「バイマイサイド」を発表したHemenway。それらシングル2枚を携え、3月には大阪と東京でワンマンライブを開催し、大成功を収めた。
勢いに乗る彼らが放つ3枚目のシングル「Escape」はパワフルで疾走感あふれるロックナンバーで、アニメ「エウレカセブンAO」のオープニングテーマとして4月からオンエアされている。このシングルの収録曲のこと、そしてHemenwayとしてのライブへの思いを、メンバー全員に語ってもらった。
取材・文 / 田中隆信 インタビュー撮影 / 高田梓
「Escape」は前向きな意味
──3枚目のシングル「Escape」が完成しましたね。すごく疾走感のある曲で、作詞作曲はIsaacさんがされたんですね。
Isaac(Vo, G) はい、僕が作りました。アニメ「エウレカセブンAO」のオープニングテーマのお話をいただいてから、アニメの資料を見て、浮かんだイメージを曲にしていきました。最初はアニメ用に90秒バージョンを作って、「この曲でいきましょう!」と決まってからフルバージョンに作り直しました。
──完成するまでに2段階あったんですね。
Isaac はい。短いバージョンから、さらにストーリーを広げていきました。歌詞はサビの部分から作り始めたんですけど、最初に浮かんだ言葉が、タイトルにもなっている「Escape」だったんです。歌詞の内容は「エウレカセブンAO」の主人公、アオくんと学生時代の自分を重ね合わせたというか、似てるなっていう部分があったので、そういうところをきっかけに書きました。アオくんは髪が青くて、ほかの人とは違っているのでなかなか環境に馴染めなかったりしたんですが、僕も韓国からアメリカに渡ったとき、アジア人が僕しかいなくて、すぐには環境に慣れることができなかったんですよ。アオくんのそばには彼にしか操ることのできないニルヴァーシュ(劇中に登場するロボット)がいますが、僕にとってそれは音楽だったんです。
──新しい環境に身を置いたときの孤独感や悩み、葛藤というのは、誰もが経験することだと思いますから、多くの人が共感できる歌詞なのかなと思います。
Toshi(Dr) そうですね。僕もアメリカで生活を始めた頃は馴染むまで時間がかかりました。
Charm(G) 「Escape」という言葉は「脱出する」という意味なんですけど、この曲においては「逃げる」というマイナスなイメージじゃなくて、前向きな意味で使っています。
Isaac うん。イメージとしては、僕は日本で音楽をやりたいというのが夢だったので、その夢に向かって脱出する、一歩踏み出すという感じですね。
Charm なので、レコーディングでも「Escape」という言葉から広がる明るい感じをしっかりと表現しようと思ったんです。途中、すごく暗くなる部分があるんですけど、その部分があることによって、その後がより突き抜ける感じになってるんじゃないかなって。
──確かに、その暗い部分がとても効果的だと思います。リズム隊はどういう意識で演奏しましたか?
Toshi この曲の大事なポイントは勢いなので、とにかく疾走感を失わないように気をつけましたね。あとは、メロディの起伏が激しいので、ネガティブなところからポジティブなところへと抜け出すときには感情的に演奏しました。
Ogaching(B) そうそう。静かなところと激しいところの差がすごく激しいんです。Hemenwayの曲の中で一番ヘッドバンギングしやすい曲なんじゃないかな。なので、頭を振れるようにベースも力強く弾いています。
スーパースローの撮影は大変
──ビデオクリップは前作の「バイマイサイド」が屋外での撮影による爽やかな作品でしたが、今回は全く違う雰囲気になっていますね。
Isaac 大人っぽい雰囲気になっています。モノクロの部分があったり、CGを使ったり、ロック感がいっぱい出てますよ。
Ogaching ハイファイ感とローファイ感が混ざった感じがいいんですよ。
──前回のロケは寒くて大変だったと言ってましたけど、今回はどうでしたか?
Toshi 屋内なので寒いとか暑いとか、そういう苦労はありませんでした(笑)。ただ、僕はドラムなので位置がみんなの後ろじゃないですか。メンバーそれぞれに寄ったショットを撮る時もドラムだけは必ず映り込むので、すべてのテイクで演奏しないといけないのが大変でした。でも、やり切ったというか、達成感がありましたし、考えてみればおいしいポジションだったのかなって。
Charm あ、大変だったと言えば、あれだよね。スーパースローのカット。
Isaac そうだね。普通のスピードだったら多少表情が変でもそんなにわからないんですけど、スーパースローだとすっごくわかるんです!
Toshi ホント、モニターをチェックしていて自分が変な顔してたら顔を背けたくなりましたから(笑)。
Ogaching 俺なんか、ベースのヘッドを高く掲げる動きをしたら、スタッフの人に「これ、カツオの1本釣りじゃないの?」って言われたんですよ(笑)。
Charm 「Listen」の頃と比べるとビデオクリップの撮影に少し慣れた感じはありますけど、まだまだですね。あと、ビデオクリップではないんですけど、「エウレカセブンAO」のオープニング映像。これもすごくいいんです! オープニングの画を描くのはすごく大変らしくて、時間もかかったそうなんですけど。
Ogaching 出来上がってきたのを見たら「すごい!」のひと言でした。
Toshi ドラムのフィルとかに合わせて絵が動いていくのを観ると、ホントに感動します。
Ogaching 第2のビデオクリップとも言えますね。
Hemenway(へめんうぇい)
アメリカ・バークリー音楽大学を卒業した韓国系アメリカ人のIsaac(Vo, G)、Charm(G)、日本人のOgaching(B)、Toshi(Dr)の4人からなるロックバンド。2010年にIsaacとCharmが来日し、日本に帰国していたOgachingとToshiとともにバンドを結成した。楽曲制作やライブ活動を行いつつレコード会社にデモテープを送り、Ki/oon Musicからのメジャーデビューが決定。2011年11月にメジャーデビューシングル「Listen」を発売した。アメリカで学んだ音楽理論や技術を反映したハイクオリティなサウンド、美しいメロディ、日本語と英語を柔軟に交えた情感豊かな歌詞で注目を集め、2012年1月リリースのシングル「バイマイサイド」はテレビ東京系アニメ「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のエンディングテーマに起用された。同年5月、TVアニメ「エウレカセブンAO」のオープニングテーマであるニューシングル「Escape」を発売。