音楽ナタリー Power Push - 早見沙織
ライブモードのミニアルバムでつなぐ 私の“これまで”と“これから”
「絶対にこれがやりたい」ではなく「いろんな色を乗せていきたい」
──今回に限らず、早見さんは1stシングルからご自分で作詞をなさっていて、2ndシングルとアルバムでは共作とはいえ作曲もなさっています。つまり、ただ提供された楽曲を歌うだけではない。どのような意識で楽曲にコミットしてらっしゃるんですか?
どのような意識……答えになってないかもしれないんですけど、私は小さいときからいろんな曲を聴いて、いろんなライブを観に行くのが好きで、あっちこっちに手を出していたんですね。で、いざ自分がアーティスト活動をするってなったときに「じゃあ、私は本当は何が好きなんだろう?」と。特に1stシングルって、自分のカラーを決定付けてしまうものなんじゃないかって悩んで……。
──どうしても1stを基準に、「2ndで変わったね」みたいな言われ方をしますからね。
そうなんですよ。だからこそ「私は絶対にこれがやりたい」「これしかない」ではなくて「いろんな色を乗せていきたい」みたいな意識からスタートしていて。特にアルバムではなるべく収録楽曲の幅を広げようとか、今回のミニアルバムにしてもポップな曲(「ふりだし」)とバラード(「雨の水平線」)と、ジャジーな曲を2曲(「Secret」「eve」)というふうに、意図的に違う曲調のものを入れているんですね。そうやって自分が好きな音楽、自分のルーツにある音楽から1つずつ取り出しながら作っている感じですかね。そのほうがいい作用が起こるかなと思って。
ジャズボーカルのレッスンは受けていたけれど
──「ジャジーな曲」といえば、早見さんがデビューコンペティションで披露された「ESCORT」(1stアルバム「Live Love Laugh」に収録)という曲を聴いて、「なんでこの人、ジャズ歌えるの?」って驚いたんですけど、その後のインタビューなどを拝読するに、過去にジャズボーカルのレッスンを受けてらしたそうで。
はい。もともと母がジャズボーカルのレッスンに通ってて、私も母にくっ付いて行って見学してたら、あるとき「沙織ちゃんも歌ってみれば?」と。それで小学生から高校受験の前くらいまでちょこちょこレッスンに参加させてもらってまして。といっても、小中学生に重たいジャズは似合わないじゃないですか。子供が急に「酒バラ」(「酒とバラの日々」)とか歌い出したら「どうした!?」ってなるから(笑)。
──アルコール依存症の歌ですからね(笑)。
だから基本的には軽めの、明るいスタンダードを歌ってたんですけど。
──好きなジャズボーカリストとかは?
いや、それが実は私も母も、例えばビリー・ホリデイとかエラ・フィッツジェラルドとか、そういう“ザ・ジャズボーカリスト”を熱心に聴いてたタイプじゃなくて……どっちかっていうと、私はロックもガンガン聴いてたし、フェスにも行くし、J-POPも洋楽もクラシックも聴いたりしていて、母はファンクとかソウルばっかり聴いてるから。
──じゃあ、なんでお母さんはジャズボーカル習ってたんですか(笑)。
母は昔からジャズボーカルのレッスンに通いたかったらしいんです。でも、若いときはそれが叶わなかったので、子育てが落ち着いてから通い始めて。だから、私もジャズは好きだし、家で聴いたりライブにも行きますけど、それはいくつかある好きな音楽ジャンルの1つというか、(小声で)そんなに詳しくはないんです(笑)。
作詞家 / 作曲家・早見沙織はいかにして誕生したか
──作詞・作曲に話を戻すと、僕が早見さんのことを認識したのって、たぶんアニメ「セキレイ」(2008年放送)なんですよ。
けっこう前ですよね。ありがとうございます!
──早見さんはオープニングテーマも歌ってらして、まず「歌上手いな!」と思い、プロフィールを拝見して「若いな!」って(当時の早見は17歳)。その後もいわゆるキャラソンをたくさん歌われていて、要は早見さんが音楽的な素養のある方だってことは明白だったんですけど、ただ作詞はおろか作曲までなさるとは少々意外で。これはご自身の提案だったんですか?
えーっと、作詞に関しては「私もいつかできたらいいな」くらいにふんわり考えてたんです。でも、デビューシングルの「やさしい希望」が、私が主人公を演じる「赤髪の白雪姫」っていうアニメの主題歌だったんですね。それでプロデューサーさんが「せっかく主人公を演じるんだから、自分の言葉で詞を書いたほうがテーマソングとしてなじむんじゃない?」と言ってくださって。頭の中でほわほわしていたものが急に現実になったような感じなんです。
──では、作曲は?
作詞したあと、「もし作曲にも挑戦したいっていう気持ちがあるなら、メロディの断片とかでもいいから、いつでもアイデアを持ってきて」と言ってくださったので。で、例えばお風呂に入ってるときに鼻歌とか歌うじゃないですか。私も毎日のように口ずさむメロディがあって、じゃあせっかくだからとそれを録っておいて、あとから膨らませたものを「こんなのできたんですけど……」ってビクビクしながらプロデューサーさんにお渡しして。今回のミニアルバムの2曲目の「雨の水平線」もそういう形でできた曲で、実は初期からあるストックなんです。
──あ、そうだったんですか?
はい。「雨の水平線」は、2ndシングルの「Installation / その声が地図になる」の制作中に原型はできてたんです。「Installation」っていう曲は、私があらかじめ詞を書いてから、私と作曲家の矢吹香那さんとディレクターさんの3人で1つの部屋にこもって、矢吹さんがピアノを弾いて、私が歌って、即興でガガガガガーっと作っていって。そのときに私がシングルのもう1つの表題曲の「その声が地図になる」のアイデアを出したんですけど、それと一緒にプラスアルファとして香那さんにお渡ししていたのが「雨の水平線」なんです。だからしばらく寝かしていたかっこうになるんですけど、この曲もライブで歌いたいなということで、この秋に引っ張り出してきました。
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- 1stミニアルバム「live for LIVE」2016年12月21日発売 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
- CD+Blu-ray盤 [CD+Blu-ray+特典CD2枚] 7344円 / 1000636464
- CD+DVD盤 [CD+DVD+特典CD2枚] 6264円 / 1000636465
- CD盤 [CD] 1944円 / 1000636466
CD収録曲(共通仕様)
- ふりだし
[作詞:早見沙織 / 作曲:ヤナガワタカオ / 編曲:渡辺拓也] - 雨の水平線
[作詞:早見沙織 / 作曲:早見沙織・矢吹香那 / 編曲:前口渉] - Secret
[作詞・作曲:川崎里実 / 編曲:大久保薫] - eve
[作詞・作曲:矢吹香那 / 編曲:前口渉]
Blu-ray / DVD収録内容
- Overture –Live Love Laugh–
- NOTE
- やさしい希望
- 水槽
- MC1
- ふりだし
- その声が地図になる
- 雨の水平線
- あるゆらぐひ
- HAYAMInst.
- レンダン
- MC2
- Secret
- ESCORT
- eve
- MC3
- 僕らのアンサー
- where we are
- Installation
- MC4
- LET'S TRY AGAIN
- ブルーアワーに祈りを
- MC5
- 星になって –ENCORE–
- MC6
- To years letter –ENCORE–
特典CD(DISC 1)収録曲
- Overture –Live Love Laugh–
- NOTE
- やさしい希望
- 水槽
- ふりだし
- その声が地図になる
- 雨の水平線
- あるゆらぐひ
- HAYAMInst.
- レンダン
特典CD(DISC 2)収録曲
- Secret
- ESCORT
- eve
- 僕らのアンサー
- where we are
- Installation
- LET'S TRY AGAIN
- ブルーアワーに祈りを
- 星になって –ENCORE–
- Installation(Acoustic) –ENCORE–
- To years letter –ENCORE–
早見沙織 MINIアルバム「live for LIVE」発売記念 アコースティックライブ
2016年12月25日(日)
東京都 ゲートシティ大崎 アトリウム
早見沙織(ハヤミサオリ)
東京都生まれの声優・ボーカリスト。2007年の声優デビュー後、アニメ「セキレイ」の結、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の鶴見知利子、「物語」シリーズの斧乃木余接、ゲーム「ラブプラス」シリーズの高嶺愛花など、毎シーズン主要キャラクターの声を数多く務め、またそれらキャラクター名義で歌う膨大なキャラクターソングにおいて、その歌唱力を高く評価される。2015年8月に自身がヒロイン役を担当するアニメ「赤髪の白雪姫」のオープニングテーマにして自作詞曲「やさしい希望」で待望のアーティストデビューを果たし、翌2016年2月には自作詞・自作曲による両A面シングル「Installation / その声が地図になる」を、5月には初のフルアルバム「Live Love Laugh」を発表。同年秋にこのアルバムを引っさげて全国3会場を回るツアーを開催する。そして12月、そのツアーのために書き下ろした楽曲を集めた1stミニアルバム「live for LIVE」をリリースした。