花澤香菜「灰色」インタビュー|声優デビュー20周年、新曲「灰色」で開けた新たな引き出し

4月発表の「Circle」からわずか3カ月、花澤香菜が今年3曲目の新曲「灰色」を7月16日に配信リリースした。

「灰色」は7月にTOKYO MXほかでスタートしたテレビアニメ「ダークギャザリング」のエンディング主題歌。作詞を藤村鼓乃美と北川勝利(ROUND TABLE)、作編曲を北川が手がけたこの曲は花澤にとって縁の深い作家陣の提供曲ながら、マイナー調のギターロックバラードという、彼女のディスコグラフィの中で新たな存在感を放つ楽曲に仕上がっている。本特集のインタビューでは「灰色」の制作に関する話や、声優デビュー20周年を迎えた心境を語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 佐々木康太

無垢が一番怖い

──新曲「灰色」は、花澤さんも声優を務めているテレビアニメ「ダークギャザリング」のエンディング主題歌です。

詠子ちゃんというキャラクターのオーディションを受けたのがきっかけで、役が決まったうえでタイアップをやらせていただきました。作曲がデビューからずっとご一緒している北川(勝利)さんなんですけど、こういう作品を北川さんが作ってくれるイメージがあまりなくて……。

──確かに北川さんのイメージにはない方向性ですよね。サウンド感的には、言うなれば20年くらい前の下北沢あたりによくいたような陰鬱系のバンドがやりそうな(笑)、マイナー調のギターロックバラードになっていて。

そうなんですよね。新しい引き出しを開けてくださったことにまず感動しました。レコーディングのときも「こういう曲も書かれるんすね! 新鮮ー!」と盛り上がってましたね(笑)。

──これは単なる個人の印象ですけど、むしろ北川さんはこういう音楽を嫌っていそうなイメージすら持っていました。

あははは。すごく作品に寄せてきてくれたんだと思います。私にとっても、しっとり歌い上げる……明確にバラードと呼べるテンポ感の曲はひさびさでしたし、北川さんの新たな一面も見られるし、新鮮な1曲になっているんじゃないかなと思います。

花澤香菜

──花澤さんとしては、「ダークギャザリング」をどういう作品だと捉えていますか?

オーディションを受けるにあたって原作を読ませていただいたんですけど……私、正直ホラー作品が苦手なんですよ。だから「大丈夫かな……」という気持ちもあったんですが、「ジャンプSQ.」の作品ということもあってキャラクターデザインがかわいらしいし、ギャグも多めなんですよね。だから、私でもわりと読める……。

──わりと読める(笑)。

怖いシーンを伏せながらだったら読める(笑)。あと、詠子ちゃんがオカルト好きの女の子ということで、演じるときは「ホラーを楽しむ」みたいな気持ちで臨めるんですよね。物語自体はエピソードごとにオムニバス的に進んでいくのでサクッと読めるんですけど、大きな流れとして「螢多朗くんと詠子ちゃんの呪いを解く」「夜宵ちゃんの家族を救う」という筋が一本通っているお話なので、「これからどうなっていくんだろう?」という興味をすごく引かれる作品です。なので、エンディングではそのシリアスな側面を回収していくというか、「灰色」は観終わったあとに何か思いを馳せられるような曲になっているんじゃないかと思います。

──おっしゃる通り、“後味”をすごく意識して作られた楽曲だなと感じました。

そこに関しては、アニメ制作サイドからの強い要望もあったようでして。けっこう物語がポンポン進んでいく作品だし、怖いシーンもたくさんあったりするので、余韻が必要なんだと思いますね。

──曲調はシリアスで張り詰めたムードなんですけど、ボーカル表現としてはあまりそっちに引っ張られていないですよね。ある種超然とした、イノセントな歌い方をされていて。

そうですね、うんうん。

──これは「あえてミスマッチでいこう」という狙いがあってのことなんですか?

うーん、どうだろう……詠子ちゃんとしてではなく、あくまで私として歌うものでもありますし、「あまり感情的に歌ってもなあ」という考えはあったと思うんですけど。そこは特に意識することもなく、レコーディングの最初の段階からこの感じで歌っていた気がしますね。北川さんも「それでいこっか」くらいの感じで、特に意見の食い違いとかもなかったですし。

花澤香菜

──これが花澤さんのスタイルだからと言ってしまえばそれまでなんですけど、とはいえ並の人ならもうちょっと深刻ぶった歌い方をしたくなっちゃう曲ではあると思うんですよね。「淡い世界 黒く染まって」いくわけですし。

確かに……。

──そこで無垢な方向の表現を迷わず選べるということ自体が、まずすごいことだなと。

でもね、言うても無垢が一番怖いと思うんですよ(笑)。

──いや、本当にそうなんですよ。聴きようによってはめちゃくちゃ怖い曲でもあるなと思いまして。

そうですね、確かに。うふふふ。

──なので、そういう異化効果みたいなものを狙った部分もあったりするのかな?と想像したんですけど……。

でも、「ここの表現はどうしよう?」と悩んだところは正直そんなになかったかなあ。レコーディングにめちゃくちゃ時間がかかったかというと、そうでもなかったですし……。

──花澤香菜ディスコグラフィ的にも新機軸と言える曲だと思うんですけど、それを歌うにあたって「苦労しなかった」という話が出てくるあたりはさすがですね。

どうなんでしょうね(笑)。あとは、なんだろうなあ……歌詞自体がそんなに闇に落ちていくような感じでもなくて、ちゃんと希望も残っているイメージだったので、自然とそういうマインドで歌えたのかなとは思いますね。

──その歌詞については、アニメ制作サイドから何か注文などはあったんでしょうか。

作詞は北川さんと藤村(鼓乃美)さんが手がけてくださったので、私は直接聞いてはいないんですけど「しっとりさせてほしい」とは言われていたみたいですね。「ダークギャザリング」のいろんなキャラクターの目線で見られるような歌詞になっていると思います。螢多朗くんを巻き込んでしまっている詠子ちゃんのちょっとした罪悪感みたいなものも感じられるし、夜宵ちゃんの背負っているシリアスなバックグラウンドも読み取れるし。螢多朗くんがかなり闇に落ちがちなタイプなんですけど(笑)、そんな彼を周りの人たちがなんとか食い止めて奮い立たせるようなお話でもあるので、そういういろんな人の視点が入り交じっている歌詞なのかなと感じています。

花澤香菜
花澤香菜

アニメと一緒に楽しんでもらいたい

──ちなみに「灰色」はCDではなく、デジタル配信でのリリースです。この形式だとカップリングなしで1曲だけでもリリースできるから、スピード感を確保できていいですよね。

そうなんですよ。最近だと「Cirlce」(今年4月リリースの菅原圭提供曲。参照:花澤香菜×菅原圭インタビュー)も配信で出したんですけど、やっぱり手軽に曲を聴いてもらえるよさはありますね。

──ただ、花澤さんは“盤に思い入れの強い人”というイメージもありますけど。

思い入れはありますね。だからいずれは「灰色」もちゃんと盤に入れる予定ですけど、別に「配信で出すのは嫌です」みたいな思いはないですよ(笑)。やっぱり最初はアニメと一緒に楽しんでもらいたいので。

──CDで出すとなると、いろいろ事情はあるんでしょうけどアニメ放送から楽曲リリースまでにタイムラグが発生しがちじゃないですか。ファン心理的には「なんでそんなに待たなきゃいけないんだ?」とどうしても思ってしまうので。

7月アニメの主題歌が9月リリースとか、よくありますもんね。やっぱり出す側としても早く聴いてもらいたい気持ちはあるので、タイムラグなくリリースできるのはうれしいです。