音楽ナタリー Power Push - 花澤香菜

秦基博作曲のバラードで締めくくる充実の2016年

花澤香菜の2016年第3弾シングルとなる新作「ざらざら」がリリースされた。表題曲は花澤本人が作詞を、秦基博が作・編曲を手がけたバラードナンバーだ。またカップリングには、末光篤書き下ろしの明るいロックチューン「クラッシュシンバル」、ナカムラヒロシ(i-dep)とのコラボレーションによる「IN LOVE AND IN TROUBLE」と、それぞれ異なるカラーを持つ3曲がこのシングルには収められている。今回のインタビューでは、声優として多数のアニメ作品で活躍しながら、精力的に音楽制作を行っている花澤に、充実した2016年を振り返ってもらった。

取材 / 小田部仁 文 / 臼杵成晃 撮影 / 塚原孝顕

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単に優しいだけの曲じゃない

──「ざらざら」の作曲を手がけた秦基博さんは、花澤さんが声優として出演していた劇場版アニメ「言の葉の庭」の主題歌を歌っていましたよね。無関係かもしれませんが、ミュージックビデオの雨が降る風景に、「言の葉の庭」の風景を重ねて観てしまいました。

花澤香菜

意識して撮影したわけじゃないんですけど……撮影の日がちょうど雨で、スケジュール的に避けられなくて。でも、曲のイメージには合うかもしれないなということで、強行で撮影しました。

──「ざらざら」の歌詞は、これまで花澤さんご自身が書いてきた歌詞よりも内省的だなと感じました。その内容に、花澤さんが声優として演じているユキノの心情と近いものを感じたんですけど、そこは意識しましたか?

秦さんからいただいたデモは、秦さんのギターと「ラララ」の声だけだったんですね。すごく優しいバラードだけど、ただ優しいだけじゃない、切ない感じを入れたいなと思って。それって「言の葉の庭」にも通じるものだなと思って、書き始めたら自然とユキノ先生を意識するような歌詞になりました。オケ録りも同時に進めてもらっていたんですけど、ストリングスのレコーディングに立ち会わせていただいたとき、そこには秦さんもいらっしゃったので「歌詞はどういうふうにしましょうかね」ってお話したんです。秦さんも「けっこう優しいメロディになったけど、単に優しいだけの曲じゃないほうがいい」とおっしゃったので、背中を押されたような感じでした。

秦基博

──アルバム「claire」のインタビュー(参照:花澤香菜 1stフルアルバム「claire」特集)で、古川本舗さんからの「普段お仕事関係なく聴く音楽はどんなのを聴かれるんでしょうか?」という質問に「最近のマイブームは秦基博さん」と答えていました。満を持してのコラボですね。

あのとき、まさに「言の葉の庭」で秦さんが歌っている主題歌の「Rain」を聴いて、とても素敵な歌声だなと思っていたんです。それをきっかけに、秦さんのそれ以前の作品をたくさん聴いていた頃だったんです。それに、もともと「claire」を作っているときから、スタッフの間でも「秦さんに曲をお願いしたいね」という声は上がっていたんです。なので本当に念願叶って、という感じです。秦さんの音楽は、鋭くて心をえぐるような言葉が使われていても、なぜだか心地よく聴けてしまう、不思議な力があるんですよね。

自分のリズムがつかめてきた

──この優しいメロディで「毒のように」というフレーズが出てくるのはドキッとしますね。

私、歌詞を書くときは内側内側に入っちゃって、あまり明るい言葉をチョイスしない傾向にあるんです(笑)。自分の内面と向き合おうとすると、どうしても暗くなってしまう。あと、出だしについてすごく悩んでいたんですけど、そんなときに突然母から「香菜が泣いてる夢を見たんだけど大丈夫?」ってメールが来て(笑)。そのフレーズがなんだか素敵だなと思って、そこから書き始めたんです。

花澤香菜

──まさかの実体験。

ウフフ(笑)。そうなんです。

──最後に出てくる「じっと待ってる」「ずっと待ってる」というフレーズも印象に残りました。ポップスでは前に向かって進んでいく主人公が多いですけど、この人は「待ってる」んだなと。そこには凛と佇んでいるような力強さを感じました。それは花澤さん自身の実感なのでしょうか。

そうですね。私、自分の感情と体調の波みたいなものがあって、最近そのリズムがつかめてきたんです。そこに照準を合わせると、生活がしやすくなるというか……今年は1度も風邪を引いてないんですよ。仕事にも穴を開けず、精神的にもそこまで落ち込むようなことがなく1年を過ごせたことが、自分にとってとても大きくて。調子が悪くなるとき、落ちるときがなんとなくわかるんです。

──すごい。陰陽道みたいな話ですね。

あははは(笑)。この時期が来ると調子が悪くなるとか、この気圧だと落ち込みそうだなあというの、なんとなくありませんか? 自分のスケジュール帳を見ながら「このとき落ちてたなあ」とか洗い出していくと、自分にどういう波があるのか把握できるんですよ。でもきっと、これからまた歳を重ねるごとに自分の波も変わってきて、そのたびにリズムを合わせていくことになるんでしょうけど、今の自分のリズムはつかめているのかなと思います。

ニューシングル「ざらざら」2016年11月30日発売 / アニプレックス
初回限定盤[CD+DVD]1728円 / SVWC-70225~6
通常盤[CD]1296円 / SVWC-70227
CD収録曲
  1. ざらざら
    [作詞:花澤香菜 / 作曲:秦基博 / 編曲:島田昌典]
    <演奏メンバー>
    あらきゆうこ(Dr)
    美久月千晴(B)
    島田昌典(Piano, Organ, Mellotron, Tambourine)
    秦基博(G)
    八橋義幸(G)
    室屋光一郎ストリングス(Strings)
  2. クラッシュシンバル
    [作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:末光篤]
    <演奏メンバー>
    SATOKO(Dr)
    ミト(B / クラムボン)
    末光篤(Piano)
    山本陽介(G)
  3. IN LOVE AND IN TROUBLE
    [作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:ナカムラヒロシ]
    All Programming & Instruments:ナカムラヒロシ(i-dep)
初回限定盤DVD収録内容
  • ざらざら(Music Clip)
花澤香菜(ハナザワカナ)
花澤香菜

1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には2ndアルバム「25」、2015年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」を発表。同年5月にスタートしたライブツアー「花澤香菜 live 2015 "Blue Avenue"」では初の東京・日本武道館ワンマンも行われた。2016年2月には山崎ゆかり(空気公団)の全面プロデュースによる9thシングル「透明な女の子」、同年6月には全曲自作詞に挑戦した10thシングル「あたらしいうた」、11月には秦基博とのコラボレーションによる11thシングル「ざらざら」と3枚のシングルをリリース。