ナタリー PowerPush - 花澤香菜

“渋谷系”ポップスを継承する傑作アルバム完成

数々の人気アニメで主要キャラクターの声を演じる声優の花澤香菜が、2012年春より個人名義による音楽活動をスタートさせた。ソロデビューから約10カ月で完成した1stフルアルバム「claire(クレール)」は、トータルプロデュースを担当した北川勝利(ROUND TABLE)をはじめ、カジヒデキ、沖井礼二、ミト(クラムボン)ほか1990年代からポップスシーンを支え続けるアーティストが多数集結した、極上のポップアルバムとなった。

ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、サウンドプロデューサー北川の立ち合いのもと、花澤がアーティストとしてデビューするに至ったきっかけやプロジェクトの裏側、楽曲制作にまつわるエピソードを詳しく聞いた。さらに楽曲提供アーティストのうち宮川弾、矢野博康、中塚武、ミト、古川本舗、カジヒデキの6人にアンケートを実施。花澤にはこの6人から挙げられた疑問や質問にも答えてもらった。

取材・文 / 臼杵成晃

 
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花澤香菜×プロデューサー北川勝利 インタビュー

レコーディングの作業自体が好き

──もともと歌うことは好きだったんですか?

花澤香菜

花澤 大好きでした。ちっちゃい頃からアイドルの曲が好きで、フリを完璧に覚えてマネしてました。

──ちなみにどんなアイドルを?

花澤 ハロプロ(ハロー!プロジェクト)ですね。ミキティ(藤本美貴)さんが一番好きでした。「ロマンティック 浮かれモード」のライブ映像をじーっと観ながら振り付けを覚えたり。

──子供の頃から人前で歌うこと、人前で表現をすることには抵抗ないほうでしたか?

花澤 恥ずかしがり屋ではあったんですけど、目立ってみたいって気持ちもあって。

──では声優として活動を始めて、キャラソンなどで歌う機会ができたことはうれしかった?

花澤 うれしかったですねー。声優というお仕事に「キャラクターソング」というものがこんなにくっついてくるとは知らなくて。気付けば週に2回ぐらいレコーディングしてたりして(笑)。レコーディングの作業自体が好きなんです。なんというか、いろいろ試されてる感じがして。それに応えていくのがすごく楽しいんです。コーラスを入れたりするのも好きなんですよね。

「パイレーツ・オブ・カリビアン」みたいなのが来たらどうしよう

──キャラソンとして歌っていたこれまでの活動と、「花澤香菜」としてオリジナル曲を歌うのとでは、やはりご自身の中で違いはありましたか?

花澤 私はあくまで「歌手」ではないと思うんですね。声優というお仕事がなければいただけなかったお話なので、そこは大事にしていきたくて。最初にお話をいただいたのが2年ぐらい前なんですけど、マネージャーと相談しながらそんな話をしました。で、同時に「やるなら今だよね」って(笑)。

──ソロとして歌うなら今、と。

花澤 きっと今が一番いろんなことが試せるタイミングなんじゃないかと思ったんです。そんな話があったあと、少し経って忘れていた頃に、今回のアルバムに入っている「青い鳥」のデモテープをいただいて。

──北川さんからもお話を伺ったのですが、実はこの「青い鳥」が花澤さんのソロ活動のスタートラインだったという。

花澤 そうなんです。

──「青い鳥」はめくるめく展開を持った、すさまじくきらびやかなポップスですよね。

花澤 マネージャーに突然デモを渡されて「いいでしょ? いい曲でしょ?」「ハ、ハイ」って(笑)。「北川さんといういい曲を書く人がいるんだけど、香菜ちゃんの曲はこの人に頼もうと思ってる」って。「いつの間にか話が進んでる!」ってびっくりしました(笑)。まだ具体的な話は進んでなかったんですけど、マネージャーはソロをやるなら北川さんにお願いしたいって思ってたそうです。その段階でデモまで作ってくださるなんて、お会いする前から素敵な人だなあって。

──北川さんに会うよりも前に、すでに「青い鳥」があったんですね。最初に会ったときの印象や当時の会話って覚えてますか?

花澤 もともと北川さんのことは曲づてで知ってたんですよ。「ちょびっツ」の主題歌としてROUND TABLE featuring Ninoを聴いていたり、私が声優で出演した「こばと。」の主題歌にも北川さんが作った坂本真綾さんの「マジックナンバー」が使われていたり。最初にお会いしたのは、にんにく料理屋さんでしたよね(笑)。

北川勝利 おいしいにんにく料理専門店でね(笑)。

花澤 私、人見知りなので「作曲家の方……どんな人なんだろう」ってびくびくしてたんですよ。「しかも渋谷系? どんな感じなんだろう」ってイメージがつかめなくて(笑)。「どうしよう、なんかジャラジャラしたのが付いてたら」とか(笑)。

──それは90年代の"渋谷系"ではなく、現在の渋谷にたむろする若者ですね(笑)。

花澤 「パイレーツ・オブ・カリビアン」みたいなのが来たらどうしようと思ってたんですけど(笑)、お会いしてみたらすごくフランクな方で。おしゃべりしていて、なんか気持ちを持っていかれるというか。話しやすい雰囲気なんだけど、人見知りなのでうまく話すこともできず。「どんなの聴いてるの?」って言われて「チャ、チャ、チャットモンチーとか好きです」って答えたのは覚えてます(笑)。

──そのとき名前を挙げたチャットモンチーのようなロックだったり、昔から好きだったミキティのような打ち込みのダンサブルな曲だったりがやりたいみたいな希望はなかったんですか?

花澤 キャラクターソングを歌っていても思ったんですけど、私の声ってバシバシとリズミカルな曲、って感じじゃないんですよね。それは合わないなって自分でもわかっているので、自分で歌うとなるとまた別で。

北川 いろんな曲を作って歌い方や声を試してみたんだよね。「あと2歳若く歌ってみよう」とか(笑)。「子供っぽすぎたから少し年齢を上げてみよう」「少しウィスパー気味に」「すねてる感じで」とか、少しずつ変えながら、同じ曲で10数テイク録ってみたり。

花澤 歌って、聴いて、話し合って、また歌って……みたいな。最初の頃は、歌ったあとにブースから離れた遠くのほうで会議が行われてるのが見えたんですね。私にはその相談は聞こえないし、どういう歌い方がいいのかわからないから、途中から相談に参加させてもらうようになったんです。それからは「あ、なるほどこうなんだな」というのがすぐ伝わるようになって。

北川 歌ったものを聴きながら話し合うことを繰り返すうちに、自分に合ったやり方、歌い方をどんどん吸収していきましたね。1曲に対するテイク数もどんどん減っていったし、さらに本人のほうからも「こんな感じは?」とか表現の仕方についてアイデアが出てくるようになってきたり。

ニューアルバム「claire」/ 2013年2月20日発売 / 3150円 / アニプレックス SVWC-7929
CD収録曲
  1. 青い鳥 [作詞:北川勝利、acane_madder / 作曲:北川勝利 / 編曲:長谷泰宏、北川勝利]
  2. Just The Way You Are [作詞・作曲:北川勝利 / 編曲:acane_madder、北川勝利]
  3. 初恋ノオト [作詞・作曲・編曲:中塚武]
  4. ライブラリーで恋をして! [作詞・作曲:カジヒデキ / 編曲:関根卓史]
  5. 星空☆ディスティネーション [作詞・作曲・編曲:北川勝利]
  6. スタッカート [作詞・作曲・編曲:宮川弾]
  7. melody [作詞:meg rock / 作曲・編曲:ミト]
  8. Ring a Bell [作詞・作曲・編曲:北川勝利]
  9. Silent Snow [作詞・作曲・編曲:北川勝利]
  10. シグナルは恋ゴコロ [作詞・作曲:矢野博康 / 編曲:北川勝利]
  11. 新しい世界の歌 [作詞・作曲・編曲:沖井礼二]
  12. 眠るサカナ [作詞・作曲・編曲:Fullkawa Head.Q.music]
  13. おやすみ、また明日 [作詞:花澤香菜 / 作曲・編曲:北川勝利]
  14. happy endings [作詞:meg rock / 作曲・編曲:神前暁(MONACA)]
初回限定仕様特典
  • 48P撮りおろしスペシャルフォトブック
  • 三方背スリーブケース
花澤香菜(はなざわかな)

2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。同年7月に「初恋ノオト」、10月に「happy endings」、2013年1月に「Silent Snow」と季節ごとにシングルを発表し、2013年2月20日には1stフルアルバム「claire」をリリース。