ナタリー PowerPush - 八王子P

ボカロ流ポップスの最新型「ViViD WAVE」

共同作業の面白さ

──今までの八王子Pさんらしいダンスミュージックの流れにある曲についてはどうですか? 移り変わりの激しいジャンルですけど、流行を意識して作り方を変えたりしますか。

うん、もうそこは単純に新しい音を入れたくなっちゃいますね。最新のサウンドで、とりわけ新しく思えるものが現れたときは特に。今でいうとトラップミュージックみたいな、従来なかったような面白いクラブミュージックの流れがあったりすると、すぐに楽曲に取り入れたいなと思っちゃいますね。

──ダンスミュージックとして作るとなると、アレンジやミックスは一般的なポップスとは違ったハードな音作りになることも多いと思うんですが、どうやって調節しているのでしょうか。

八王子P

トラックダウンとマスタリングは、いつも決まったエンジニアの方にお願いしてるんですよ。セルフミックス&マスタリングではなくほかの人にお願いすると、すごく客観的に自分の作品を見ることができるんですよね。1から10まで自分でやっちゃえば自分の好みにはなるけど、一般的なリスナーが聴いたときにどう聞こえるのか意識できないかもしれない。独りよがりになっちゃう可能性があるから。それに自分の曲が、人の手を加えてよくなっていくっていうのが本当に純粋に楽しいんですよ。ずっと1人で打ち込みをやってきたし、しかもボカロだったので。

──1つの作品を共同制作するという経験があまりなかったわけですね。

そうです。そこが面白くて。実際に曲もよくなっていきますしね。自分みたいなジャンルでやってる人って、プラグインとかをすごく極端な使い方したりするんですよね。例えばEQ(イコライザー)とかをめちゃくちゃ上げたり、コンプもガンガン潰して、歪んでるけどそれが結果的にカッコいい音になったりする。いつもお願いしているエンジニアさんはそういう部分をすごく尊重してくれるんです。そういうエフェクトがかかった状態で曲を渡しても、そこを生かしてくれる。エンジニアの方もレコード会社のスタッフさんとかも含めて、最近はチームでやるということ自体が、本当に楽しいですね。今は全部を1人でできちゃう時代だから、そういう人がすごく増えてると思うんですけど、チームでやる面白さもありますね。まあ周りの人たちが先導してやってくれるので、自分で率先してチームを引っ張っていくよりはラクしてるとは思うんですけど。

──ではそういう共同作業の中で最新のサウンドを取り入れつつ、歌詞とメロディの優れたポップスとしてのよさを目指すという感じですか。

アルバムにはクラブでかけるようなDJ向けの曲もありますけど、Aメロ、Bメロ、サビってあるような曲に関しては、基本的にしっかり聴けるポップスを意識してます。でもそういう曲でも、アレンジは歌詞とメロディに比べてけっこういろいろやっていますね。しっかり歌が聞こえるような展開とか構成を作っておいて、間奏とかで最新のサウンドを差し込んだりすると面白い曲になると思うので。自分はもともとインストのクラブミュージックがルーツにあるので、そこはある意味で個性にもつながってると思っています。そういう意味では、聴いてくれた人にはイベントにも来てくれたらうれしいなって思います。今回の曲でいうと「PARTY KILLER feat. IA」とかはもう、まさにDJで使うことを意識して作った曲なので、ぜひ大音量で一緒に聴くっていう体験をしてほしいですね。

──クラブミュージックに初めて触れる人の、入口のような音楽でありたいという気持ちは強いんですか?

まあ入口になろうと意識して始めたわけじゃないんですけど、その思いはかなり強いですね。自分の音楽をきっかけにクラブミュージックに興味を持ってくれたらいいな、と。そこは最近、本当にかなり意識して活動してますね。ボカロのDJイベントに来るお客さんって大半が初めてクラブに来るような人なので、アルバムの曲をひたすらつないでいくみたいにすると、なんか楽しめないまま終わっちゃうと思うんですよ。だからもっとわかりやすいように、もうガンガン煽って、音源もエディットして、映像とかPVも流して、より盛り上がるようにする演出も考えてます。イベントとかに1回来てもらえば、ボカロ以外の曲もかかったりするし、いろんな音楽を知るきっかけになると思うんですよ。1人でも多くの人にクラブミュージックに興味を持ってもらえたらと思うので、そのためにできることはやっていきたいですね。

八王子P
ニューアルバム「ViViD WAVE」 / 2013年7月17日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤[CD+DVD] / 3000円 / TFCC-86441
初回限定盤[CD+DVD] / 3000円 / TFCC-86441
通常盤[CD] / 2300円 / TFCC-86442
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CD収録曲
  1. Monochrome
  2. GAME OVER feat. 初音ミク
  3. fake doll feat. 初音ミク
  4. take it easy feat. 初音ミク
  5. エレクトリック・マジック feat. 鏡音リン・鏡音レン
  6. Dream Creator feat. GUMI
  7. PARTY KiLLER feat. 巡音ルカ
  8. TRAP×TRAP feat. 初音ミク
  9. Little Summer of Love feat. GUMI
  10. IZAYOI feat. IA
  11. SECRET GiRL feat. 巡音ルカ
  12. フカヨミ feat. 初音ミク
  13. HORIZON feat. 初音ミク
  14. ViViD WAVE feat. 初音ミク
初回限定盤DVD収録内容
  1. GAME OVER feat. 初音ミク
  2. Dream Creator feat. GUMI
  3. fake doll feat. 初音ミク
  4. HORIZON feat. 初音ミク
八王子P(はちおうじぴー)

八王子P

ボーカロイドを使用して音源制作をするボカロPとして活躍中の男性アーティスト。クールな4つ打ちトラックにキャッチーなメロディを乗せたダンスチューンを得意とする。2009年12月、ニコニコ動画で公開した「エレクトリック・ラブ」が注目を集め有名ボカロPの仲間入りを果たす。2011年11月に台湾でリリースしたベストアルバム「Sweet Devil feat. 初音ミク」は現地の週間売上チャートで4位に入る健闘ぶりを見せた。2012年2月、アルバム「electric love」でメジャーデビュー。2013年7月17日にはトイズファクトリーからニューアルバム「ViViD WAVE」をリリースする。