あれ、出していいのかな？

──待望のニューアルバムが完成しました。手応えはいかがですか？

一同　（顔を見合わせる）

中村達也　手応え……「あれ、出していいのかな？」って感じ。

チバユウスケ　へっへっへっ（笑）。

──ヤバいものを作ってしまったと。

中村　なかなか……普通に考えたら、これ世に出していいんかなあ、と（笑）。

イマイアキノブ　ふふふふ（笑）。

中村　全然コンパクトじゃないし。

──アルバム2枚構成で、合計収録時間は2時間近く。長尺の曲も多いですね。

中村　悪かったね（笑）。確かに長いよ。でも、シングル盤（7inchアナログ）に入るように3分だとか1曲が短い形になっていったわけでしょう、音楽って。それに対して、そういう制約がなかったベートーベンは曲が長い（笑）。それを聞いて、曲が長くてもいいんだって思ってさ。固定観念化されてっただけから。「世に出すためにこういう形じゃなきゃいけない」なんて決まりごとは最初はなかったはず。

──では制約とか固定観念を取り払って作ることができた？

中村　自然とそうなったんだけどね。

──レコーディングは、音楽ナタリーでThe Birthdayの取材をやったとき（※2015年9月 / 参照：The Birthday「GOLD TRASH」インタビュー）には始まってましたよね？

チバ　うん。だから、それ以降最近までずーっとやってたよ。スタジオ入ったのいつだっけ？

中村　オレとチバくんがスカパラのイベント（「東京スカパラダイスオーケストラ presents トーキョースカジャンボリー vol.6」）に出てさ、その前からスタジオには入っていたけど、このイベント以降で何かが変わった。

チバ　イベントは去年の8月8日とか？

イマイ　だね。で、スタジオ入った日から録り始めたんじゃなかったっけ？

チバ　うん。そこからレコーダーを回しっぱなしで録ってた。

中村　前はもうちょっとコンパクトなポップチューンみたいなのを目指してたんだけど、「スカジャンボリー」から帰ってきたら、みんないい感じにほぐれてた。スタジオに入った初日、夜の深まってきた頃に「CRAZY BOMB」のセッションをやったの。

──そこでモードが切り替わったってことですか？

中村　そうだね。それまではGWFで何をやるか、わりとイメージが中途半端なままだったかもしれん。

チバ　オレは「死の塔の外伝」とか、あのへんから自由になってきた記憶があるな。

イマイ　ああ。オレは最初の4時間で12曲ぐらい録ったのを覚えてる。

──12曲？

イマイ　うん。曲のストックゼロだからね。誰も曲を持ってきてないし、とりあえずセッションしたのを録っていった。

中村　しかも18時過ぎるとみんな人格が崩壊してくるから、止めどなくなってくる（笑）。

──じゃあ曲作りは完全にセッション？

イマイ　うん。あらかじめテーマを決めて、合図をしたらそこに音を重ねていくみたいなのも一切なかったね。

チバ　1枚目の「KILL AFTER KISS」ではある程度作っていってたんだっけ？

中村　うん。

チバ　でも今回は何も決めないで全部即興。

──誰かが弾き始めたり叩き始めたりして、ほかの2人がそれに合わせていくうちに曲になっていく感じですか？

チバ　そうそうそうそう。まさに。録ったままなんにも変えてないし。変えようがないもんね（笑）。そのときの感じがすべてだから、編集しようがない。

イマイ　ライブ盤だもんね、これ。

なかなか終われないレコーディング

──レコーディングはThe Birthdayの事務所にあるプライベートスタジオで行ったそうですね。

チバ　そう。だからもう音は被りまくり。

──ああ、ブースもないような小さなスタジオですからね。

チバ　うん。だけどそれがよかった。面白かった。

──ボーカルも一緒に録ったんですか？

チバ　ボーカルはあとからやり直したのもあるけど、録り直す前の歌もそのまま入ってる。

中村　セッションしながら歌ってる声がスピーカーから出てるわけよ。どしゃめしゃなのが。それも楽器の音と一緒に録音されてるからさ、歌だけやり直そうとしても無理な話。

チバ　歌だけで録ってないから、削れない（笑）。

──まさに即興ですね。それもすごくプリミティブな。GWFに関してはそういう作り方がベストですか？

チバ　うん。今回は最初っからそうしたくて。とにかく、スタッフにレコーダーを回しっぱなしにしてくれっつって（レコーディングはデジタルで実施）。

──じゃあボーカルを入れることを前提としてトラックを作ったわけじゃない。

チバ　ないないない。好き勝手だもん。誰がどこで歌うとか一切決まってない（笑）。

──だから自然と曲も長くなる？

チバ　そう。なかなか終われないんだよね（笑）。

──やってて気持ちよかったら終わりたくないだろうし。

チバ　そうだね！ うん。

中村　セッションをやってると、ミュージシャンによっては暗黙の了解で、「そろそろ終わりかなー？」みたいな意識が生まれてくることもあるけど、GWFの場合は終わりゃあしねえ（笑）。

イマイ　だいたい起承転結で物語があって、終わりどきを見っけたりするんだけど、GWFのレコーディングは終わったと思いきや、続きがその場で生まれたりして。またそこから起承転結があるから。連続で録ったのを、最終的に3つに分けたりしてね。1曲につなぐと15分ぐらいになるんだけど。

中村　レコーディングは興奮状態が続いてる感じだったね。まあ、お客さんがいないからいいのかもしれない。お客さんがいると、曲を区切らなきゃって意識するから。だからスタジオの中は特殊な空間だったと思う。