ナタリー PowerPush - ギターウルフ
セイジ改造手術ついに完了! 新作を携え宇宙戦艦が地球に帰還
度重なるハードなステージパフォーマンスが原因でセイジ(Vo, G)が股関節を損傷し、2007年からライブ活動を休止していたギターウルフ。療養期間を経て昨年再始動するも、股関節に入れたボルトを除去する手術のため今年に入って再びバンド活動をストップさせていた。
そんな彼らが、セイジのオーバーホール終了を受けてこの夏いよいよ完全復活。さまざまなイベントへの出演や2005年以来となるアメリカツアーで健在ぶりをアピールし、そしてついに入魂のフルアルバム「宇宙戦艦ラブ」をリリースした。ナタリーでは今回、セイジとトオル(Dr)にインタビューを行い、これまで以上にバラエティに富んだ新作の話を中心に、現在の心境を語ってもらった。
取材・文/橋本尚平
車椅子になっても激しいライブを続けるだろうね
──股関節の完治おめでとうございます。治療で長期間バンドを休まなければならなくなったとき、どんな気持ちでしたか?
セイジ(Vo, G) ま、しょうがないなと。「看護婦さんをいっぱい見れてうれしいな」くらいに思ってた(笑)。ちっちゃい頃に盲腸で入院したくらいで、あんまそういう経験ないからさ。あ、バイクで足折ったときも入院したわ。うん、なかなか楽しかったよ。
──入院生活を満喫できていたんですね。曲を作りたいとか、ライブをやりたいとか、そういう焦りや苛立ちはそれほどなかったんですか?
セイジ むしろ曲作んなくてよくてラッキーと思ってた。それまで休みなくずーっと曲作ってたんで、初めてそういう時間が来てビックリしたのよ。まあ、自分のサイボーグ改造手術が大変でそれどころじゃなかったしさ。逆に復活してから、曲作りモードに戻るのが大変だったな。
──トオルさんはどうでした? バンド活動が止まってる間は。
トオル(Dr) 自分はやりたくてしょうがなかったですよ。
──その間はどうしていたんですか? 個人練習したり?
トオル この程度の演奏レベルで、そんなことしてるわけないじゃないですか(笑)。
──いやいや(笑)。
セイジ 俺には何も不安はなかったよ。だってしょうがないじゃん。骨折ったら、くっつくまで待たなきゃいけない。もちろん、しっかり治すために牛乳ばっかり飲んでたよ。「うなぎボーン」とかバリバリバリバリ過剰なほど食って。
トオル わはははは(笑)。極端だなあ。
──時間をかけてオーバーホールが完了したわけですが、激しいステージアクションはこれからも続けていくつもりですか?
セイジ そりゃもちろん。車椅子になっても激しいライブを続けるだろうね。
まさか実写化されるとは思わなかった
──今回の「宇宙戦艦ラブ」は通算10枚目のアルバムということで……。
セイジ それまったく考えてなかったね。10枚目だって、人に言われて初めて知ったんだよ。
──じゃあ、例えば節目の作品といったようなことは特に意識していなかったんですね。
セイジ 節目とは考えなかったけど、「宇宙戦艦ラブ」という曲には俺の「いよいよ復活したぜ!」っていう感じが出てるかもしんない。
──確かに、いかにも復帰作らしい曲ですよね。「俺は帰ってきた」「俺は死なない」という歌詞だったり。
セイジ 意識してたのかもね。「宇宙戦艦ラブ」にはそういう現在の自分の気持ちが確実に表れてると思うよ。
──ということは、この曲が作られたのは最近なんですか?
セイジ いや、前の「DEAD ROCK」を作ってた頃にタイトルだけできてたから、完成まで4年間ぐらいかかってる。
──「宇宙戦艦ラブ」というフレーズは昨年の日比谷野音ワンマンのタイトルにもなってましたね。
セイジ あれは「早くこの曲作んなきゃ」って自分を追い込むために(笑)。でもダメだった。
──それがここに来て、満を持して完成したという。
セイジ そうだね。まあ、あのときはできるべきじゃなかったんだろうね。この曲ができたら「よし! アルバム出せるぞ!」って気になれてさ。
──曲調も今までのギターウルフにない、ちょっと異色な感じですよね。5分半くらいある長い曲で、構成もちょっと複雑で。
セイジ そう、俺も本当にビックリしたんだよ。俺こんな曲が作れるんだ……と思って。
──わはは(笑)。セイジさんはどういう流れで曲作りをするんですか?
セイジ 一番初めにタイトルを考える。あとはそのイメージを膨らませながら歌詞と曲を作ってくんだけど、この曲に関しては全然できなかったね。ずーっと3人でスタジオに入って考えてたのに。で、交差点で立ち止まってたときに、4年間考えつかなかった前奏が突然パッとひらめいて。それからちょっと勝機が見えてきたね。
──「宇宙戦艦ラブ」に限らず、このアルバムは全体的にバラエティ豊かですよね。1曲目はマディ・ウォーターズをモチーフにしたブルースだし、「ブラックホールママ」ではロカビリーに挑戦してるし、「ナミダバイオレンス」はBLUE CHEERみたいな爆音ヘヴィサイケだし。今回はいつもより幅広くいろんなことをやろうとか、そういうことを考えながら作ったのかなと思ったんですが。
セイジ いや、ないね。バラエティに富んで聴こえるかもしれないけど、俺の体の中にあるものをそのまま出しただけだよ。
──トオルさんは最初に曲を聴いたときどう思いました?
トオル そうね、いろんなタイプの曲はあるけれども、だけどどれもすごくハードコアだなと。今までやってきたことがまとまっていて、ギターウルフのハードコアさがすごく強く出てるなと思いましたね。
──アレンジに関してはセイジさんから細かく指示があるんですか?
トオル いや、セイジさんが「この曲はこんな感じのイメージだから」って言うのを聞いて、それに近づけるような感じですかね。
セイジ 俺は別にドラマーじゃないから叩き方のことはわからないし、あくまでイメージを説明するだけだよ。逆に、同じ叩き方してても、俺の考えてるイメージが伝わってないとそれじゃダメだと思うし。
──そのイメージというのは例えば? 「ここはRAMONESの1stアルバムみたいに演奏して!」とか?
セイジ いや、そういうんじゃない。例えば「宇宙戦艦ラブ」だったら、「まず最初に巨大な宇宙戦艦が闇の中からグワーって近づいてきてさぁ……」って伝えて。
──ええ!? 音楽的な注文じゃなくて ビジュアル面の話だったんですか!
セイジ ビジュアルというより気持ちの面だよ。俺の頭の中にあったビジュアルは「宇宙戦艦ヤマト」だけど、みんなそれぞれ宇宙戦艦って言葉について持つイメージがあるだろうからさ。それにしても4年前に「宇宙戦艦ラブ」って曲名を考えたとき、まさかリリースのタイミングで「宇宙戦艦ヤマト」が実写化されるとは思ってなかったね……。
──ホントですよね(笑)。セイジさんは「宇宙戦艦ヤマト」に思い入れが強いんですか?
セイジ アレは俺が小学校6年生から中学校2年生くらいの時期のアニメだから、俺は最も熱狂した世代だもん。放送が始まったばかりの頃の、人気に火が点く前から俺はずっと観てたんだよ。「ルパン三世」も「宇宙戦艦ヤマト」も「ガンダム」も最初は全っ然人気なかったのに、その頃から俺は「うわっ! これすげえ!」と思ってた。あのアニメは俺が最初に発見したの。
CD収録曲
- フーチークーチースペースマン
- ドーベルマンナイト
- 宇宙戦艦ラブ
- ファイヤーエイティーン
- ボルテージセパハン
- ナミダバイオレンス
- コンクリートパンク
- ブラックホールママ
- ドラキュラ メリカ
- ハカタ大作戦
初回盤DVD収録内容
- 狼惑星
- ジェット サティスファクション
- ミサイルミー
- エジプトロック
- デビルクチビル
- UFOロマンティクス
- 惑星ハート
ギターウルフ
1987年結成の3ピースロックバンド。革ジャン、革パン、サングラスがトレードマークで、3コードを基本としたシンプルなロックンロールを鳴らす。ヨーロッパやアメリカでの評価が非常に高く、早くから海外でのライブ活動を行っていた。2005年にベースのビリーが心不全により急逝。同年9月に楽器未経験者のU.Gがメンバーとして加入した。