音楽ナタリー Power Push - GRANRODEO

11年目の幕開け飾るやさぐれロックチューン

アニメで流れない部分の歌詞は自由に

── KISHOWさんは「TRASH CANDY」の作詞をするにあたり、e-ZUKAさんがおっしゃったようなやさぐれ感を意識しましたか?

KISHOW やさぐれ感。うーん、特に意識はしなかったんですけど、改めて詞を見るとやさぐれ感あるかもしれないですね。

──歌詞の主人公はかなり複雑な感情を抱えているというか、自分にも世界にも満足していなくて、一方でどこか達観したところもあり、でも最終的には前向きで。

KISHOW(Vo)

KISHOW そう。前向きがいいですよね。アニソンはどんなテーマでも、最終的に前向きなところに着地したほうがいいなと、このたび気付きましたよ。アニソンとはなんぞやというのを「黒子のバスケ」で鍛えられました、ホントに(笑)。

──確かに、同じアニメの楽曲を6曲も作るというのはなかなか……。

KISHOW 僕は、歌詞はわりと抽象的に書きたいタイプなので、この曲も言葉の意味がどうこうというよりは、音として、ボーカルが存在感を放てればいいなと。だからとても乱暴に言うと、あまりメッセージはなくても、言葉の羅列だけでいいかなとも思っていたくらいなんです。とは言え、アニメのオープニングで使われる90秒の中で、タイアップとしてのメッセージは込めたつもりです。90秒勝負ですから、それ以降はもう、自由に書かせてもらいました(笑)。最初は「文豪ストレイドッグス」なので、つまり文豪がいっぱい出てくるから、彼らの小説の一節でも拝借して「おお、文学青年っぽい」って尊敬されようかとも思ったんですけど。

──主人公である中島敦の「山月記」とか。

KISHOW 太宰治だったり芥川龍之介だったり、それこそ中原中也でもいいし(KISHOWは声優として「文豪ストレイドッグス」で中原中也を演じている)、谷崎潤一郎がどうとか、全部90秒の中にちりばめてね。でも、ちょっとあざとすぎるかな、タイアップ作品に寄りすぎだなとか、逆にらしくないなと思ったので、そのアイデアは泣く泣く捨てまして、こういう感じに収まった次第です。

──「言葉」よりは「音」に重きを置かれたという点で、例えば2番のAメロの「僕らはいつの間に It' no money 乞う」は、歌詞を見ずに聴くと「なんで『いつの間に』を2回言った?」みたいな。

KISHOW そうそう。そこはわりと狙ったところでもあって、一聴すると「あそこなんて歌ってるんだろう?」ってなるんだけど、ちゃんと歌詞カードを見て聴くと「あ、そうだったのね」って。誤解を恐れずに言えば、わざと聴き取りづらく歌っているというか。

──外国語のように歌ってらっしゃいますね。

KISHOW うん。そうやって歌うことによって「歌詞カードを読みたいな」と何人かでも感じてくれたら、そしてCDを買ってくれたら非常にありがたいなと(笑)。

「中二病」のない人生はつまらない

──「TRASH CANDY」という曲名は、「ゴミ」と「キャンディ」という、意味的に相反するような言葉の組み合わせですね。あるいは「TRASH CAN」(ゴミ箱)とかけたのかな、とも思ったり。

KISHOW 「文豪ストレイドッグス」も、「文豪」という威厳のありそうなものに対して「ストレイドッグス」って、ちょっと皮肉っぽいというか、自虐めいた響きがありますよね。「自分ら文豪ッスけど、野良犬ってことでやってるんでヨロシク」みたいな。その野良犬たちに何かエサを、ご褒美をあげようと、まず「キャンディ」を思い付いたんですね。ここはポップな言葉がいいなと。で、おっしゃる通り真逆と言える言葉を探して。

──なるほど。そして、その野良犬たちへのご褒美も、この曲では「くだらないご褒美」と歌っていますね。

KISHOW わりとそういうのが好きみたいですね、僕は。素直じゃない(笑)。

──この曲は、抽象度が高めでシリアスな歌詞だと思うのですが、それだけに、2番にある「中二病」という言葉が否が応でも浮き上がってくるというか……。

KISHOW これはもう、はい、入れちゃいましたよ。やってやりましたよ。やっぱりどこかしら“タイアップ90秒サイズ”で責任を負ってるから、そこができあがると以降はけっこう開放的になって、こういう言葉が出がちなんですよ。とは言え何も考えてないわけではなくて、こういうアニメを作るにしても、声優をやるにしても、音楽をやるにしても、したり顔でアー写に写ったりするのもそうだけど、どこかしら中二病的なところがないとね。それなしに生きる人生はつまんないなあって、かねてから思っていたので。

──ご自分で「俺、中二病っぽいな」みたいに思うところは?

KISHOW そんなの、いっぱいありますよ!

e-ZUKA 中二病だらけですよ。

KISHOW いまだに中学2年生のメンタルを引きずってますよ。ポンコツだなって。

俺の曲は全部、サビ前に「I・G・P・X」って入れられる

──表題曲が一度ボツになってしまったというお話がありましたが、e-ZUKAさんは先ほどご自身でおっしゃったように20年間アニメの楽曲を手がけられて、GRANRODEOも11年目に入り、やはり以前の曲と似てしまう問題は避けられないものですか?

e-ZUKA(G)

e-ZUKA 今までやったことがあるのかないのか、自分でもわからなくなることがあって(笑)。僕が最初に「TRASH CANDY」で新しいと思ったのは歌い出しで、1小節まるまる休符で、3拍歌が先行するところなんですよ。でも、レコーディングのときにベースの瀧田(イサム)さんが「入り口は『Soul Crazy』(5thシングル「HEAVEN」のカップリング曲)みたいだね」って言ってて、「うわ、やってたか!」というのはありましたけどね。

KISHOW 8年くらい前にe-ZUKAさんが自分で言ってたんですけど、「俺の作る曲は全部、サビ前に『I・G・P・X』を入れても成立する」って(※「I・G・P・X」は、アニメ「IGPX」オープニングテーマに採用された1stシングル「Go For It!」のサビ前の掛け声)。

e-ZUKA ははは(笑)。それも人に言われるまでわかんなかったんですよ。あるときそういう曲を若い子が書いて、それに対して「これ、飯塚の影響受けたの?」って聞いてる人がいたんです。で、「俺、そんな曲書いてるかな?」と思って確かめたら、書いてた。全部の曲に「I・G・P・X」って入れられる(笑)。

──ははは(笑)。

e-ZUKA ネタがないと言ってしまえばそれまでなんですけどね。だから、枯れないようにってわけじゃないけど、常にフレッシュでいられるよう、新しい音楽も聴くようにしています。まあ、僕の「新しい」はだいたい世間の流行から2年くらい遅れてるんですけど。

KISHOW ふふふ(笑)。

e-ZUKA 今日も車の中でDirty Loopsを聴いて「めちゃくちゃカッコいいな」とか思いながら来たんですけど、Dirty Loopsのアルバムが出たの2014年でしょ。今日じゃなくて数週間前に聴いてたら、カップリングの「Lovers High」に影響したかもしれないって思うくらい気に入って。そうやって流行りがちょっと遅れてくるんですけど。でも最終的に出てくるものは自分のフィルターを通っちゃうんで、「ああ、飯塚っぽいね」ってなっちゃうんだけどね。

ニューシングル「TRASH CANDY」 / 2016年4月13日発売 / Lantis
「TRASH CANDY」初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / LACM-34465
「TRASH CANDY」通常盤 [CD] 1404円 / LACM-14465
「TRASH CANDY」アニメ盤 [CD] 1404円 / LACM-14466 ©2016 朝霧カフカ・春河35 / KADOKAWA / 文豪ストレイドッグス製作委員会
CD収録曲
  1. TRASH CANDY
  2. Lovers High
  3. 帰結する共犯者
  4. TRASH CANDY(OFF VOCAL)
  5. Lovers High(OFF VOCAL)
  6. 帰結する共犯者(OFF VOCAL)
初回限定盤DVD収録内容
  • TRASH CANDY(Music Clip)
GRANRODEO LIVE TOUR 2016 TREASURE CANDY
  • 2016年7月2日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2016年7月3日(日)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2016年7月9日(土)大阪府 大阪城野外音楽堂
  • 2016年7月16日(土)宮城県 仙台PIT
  • 2016年7月17日(日)宮城県 仙台PIT
  • 2016年7月22日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2016年7月23日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2016年7月30日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2016年7月31日(日)大阪府 なんばHatch
  • 2016年8月13日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
  • 2016年8月20日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2016年8月21日(日)北海道 Zepp Sapporo
  • 2016年9月3日(土)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2016年9月4日(日)愛知県 Zepp Nagoya
GRANRODEO(グランロデオ)
GRANRODEO

ボーカリストのKISHOW(谷山紀章)とギタリストのe-ZUKA(飯塚昌明)からなるユニット。2005年結成。同年11月、アニメ「IGPX」のオープニングテーマ「Go For It!」でデビュー。声優としても活躍するKISHOWの表現力豊かなハイトーンボーカルと、e-ZUKAによるハードロックマナーに則ったヘヴィでメロディアスな楽曲群で人気を博す。以来コンスタントにリリースを重ねる一方で、2010年には東京・日本武道館で結成5周年記念ライブを実施。その後も神奈川・横浜アリーナ、大阪・大阪城ホール、埼玉・さいたまスーパーアリーナなどホール、アリーナクラスでのワンマンライブを敢行し、「Animelo Summer Live」などの大型フェスではヘッドライナークラスのポジションを確立する。2014年9月には6枚目のアルバム「カルマとラビリンス」をリリース。翌2015年1月には22枚目のシングル「Punky Funky Love」を、6月に23作目「メモリーズ」を、9月にはデビュー10周年記念ベストアルバム「DECADE OF GR」を発表した。また10月には千葉・幕張メッセ 国際展示場1-3ホールにてユニット結成10周年を記念した2DAYSライブイベント「GRANRODEO LIVE 2015 G10 ROCK☆SHOW」を開催した。2016年4月にはニューシングル「TRASH CANDY」をリリース。表題曲はテレビアニメ「文豪ストレイドッグス」のオープニングテーマに採用された。