「バラ色だ！」と言い切る勇気と強さ

──今おっしゃっていたようにGRANRODEOではなくKISHOWさんをイメージして書いたからなんでしょうけど、既発曲とはちょっと毛色が違いますよね。

e-ZUKA　だから何曲目に置くか、けっこう悩んで。最初は「バラライ」も「今より先を」もボーナストラック的に一番最後に回すかとも思ったんですけど、結局僕の提案で1曲目に置くことにしたんです。「バラライ」を録ってる途中で「イントロに『Ladies and gentlemen』から始まるナレーションを入れよう」って話になったので「あっ、これはもう1曲目しかないな」っていうことで。GRANRODEOらしくないっちゃあない曲なのかもしれないけど、でも僕らのベスト盤の1曲目らしいっていう落としどころは見付けられたかな、っていう気はしますね。

──「バラライ」がe-ZUKAさん言うところの「僕らのベストの1曲目」にふさわしい理由にはKISHOWさんの詞の影響もありますよね。ヌケのいいブラスロックだし、詞も最終的には明るい未来を予感させるんだけど、さっきおっしゃっていた通り、やっぱりヒネってる。「皆もう気付いてる それほど残されてない」と年齢感をにじませてみたりとか。

KISHOW　ついそういうことを言いたくなっちゃうんですよねえ（笑）。パーティチューンなんだから「今までの10年ありがとう！」「これからの10年もシクヨロ！」みたいな軽いノリでもいいのに「いや、それほど時間は残されてねえよ」って入れたくなっちゃう。その直後に「まだまだあるぞ時間も 死ぬまであるぞ生きればいいだろう」って言い訳がましく言ってるあたりも、いかにも自分らしいですし（笑）。

──あと「バラライ」って“ララバイ”＝子守唄のアナグラムなのかな、って考えたら、それも皮肉が効いている気がして。このパーティチューンを聴いて寝ろって言うの？って。

KISHOW　（両手でガッツポーズを作って）やったーっ！

e-ZUKA　引っかかってくれたの初めてじゃない？

──へっ!?

KISHOW　これは「豚バラライス」の略なんです。

──ホントに？

KISHOW　ウソです！（即答） 「バラ色ライフ」の略。「リゾートラバーズ」で「リゾラバ」みたいなタイトルがほしかったんです（笑）。あと「それほど残されてない」人生であってもバラ色だって思い込んじゃったほうが幸せだと思うから。人生にいろいろあることは大前提で、それでも「バラ色だぜ」って言い切る強がり……じゃないですけど、そう言い切る勇気や強さは見せたいなって。

ファンに対する感謝はちゃんとできたかな

──で、もう1つの新曲「今より先を」は「バラライ」同様「先」、未来を見据えている曲ではあるんだけど、トーンはまるで異なります。

e-ZUKA　もともと新曲を2曲入れる話になっていて、まず「バラライ」が完成したら“お上”が「もう1曲はGRANRODEOらしい曲でいいんじゃないですか？」って言い出したんですけど、こっちとしては「で、GRANRODEOらしさって何？」と。

──あはははは（笑）。今回のインタビューの通りいろんな要素が複雑に絡んでできあがってますもんね、「GRANRODEOらしさ」って。

e-ZUKA　そうなんですよ。で、最初は「ROSE HIP-BULLET」みたいなストレートなロックを作ればいいのかな？とも思ったんですけど「ROSE HIP」はすでにベスト盤に入ってるから「同じ曲はいらねえだろう」っていう話になり。ベスト盤に新曲として収録する意味のある曲はバラードかな、と。これも1日でできたんですよね。一筆書きに近かった。イントロからアウトロまで素直に順序よく書けた曲ですね。

──一方KISHOWさんの詞は？ 「バラライ」と同じテーマを短期間のうちにまた別のレトリック、しかもシリアスな言葉で描くのって素人目にはすごく大変そうなんですけど。

KISHOW　よかったあ、この曲の意図だけじゃなくてオレの苦労も伝わってて（笑）。

──あっ、やっぱり大変でした？

KISHOW　「バラライ」と別アプローチで同じテーマを歌わなきゃいけない、しかもバラードである以上、ここまでの10年っていうものを真摯に受け止めた上で、この先の未来を真摯に描かなきゃいけないとも思って。そのことにはすごく責任を感じたし、だからこそ正直、すごく難産でしたよ。簡単に要約してしまえば、聴いてくれている人に対する感謝。「みんなのおかげでここまでたどり着くことができたよ」「みんなのおかげで『今より先を』目指せるよ」ってことしか歌ってないんだけど、それを真摯に歌う覚悟を決めることにもそうだし、その真摯さに似合う言葉を考えに考えて見つけてきて、それを紡ぐっていう作業にも時間がかかりました。

──でもそれだけに本当にシリアスなバラードができあがりましたね。

KISHOW　これでなんとか応援してくれている皆さんに対する感謝がちゃんとできたかな、とは思ってます。ロデオボーイ歴、ロデオガール歴の長い方は、これを聴いてぜひ泣いていただきたいな、と（笑）。