音楽ナタリー Power Push - GRANRODEO
10年分の感謝と祝福すべき未来
サカナクションって知ってる? ああいう曲どうかなあ
──実際“お上”からQueen「Bohemian Rhapsody」みたいにショートバージョンとロングバージョンがある曲を作ろうと提案されて「DAWN GATE」ができたって言っていましたよね?(参照:GRANRODEO「カルマとラビリンス」インタビュー)
e-ZUKA そうそう。エグゼクティブプロデューサーが本当に音楽マニアだから、まあいろんなアドバイスをくれるんですよ。それはデビュー当時から変わってなくて。「こういうライブが観たいから、こんな曲書けない?」って言ってきたりしますし、あとそう長く続くユニットだと思ってなかったから、最初の数年って特に曲のアイデアが似通うことがあって。長期的に活動することを前提に曲やコンセプトを準備してなかったから。そんなときにも「あれっ、これちょっと『Go For It!』っぽくない?」ってツッコミを入れてくれたりしましたし、それから「サカナクションって知ってる?」「ああいう曲どうかなあ」って言い出してみたり(笑)。
KISHOW “お上”は身もフタもないアドバイスもよこす、と(笑)。
e-ZUKA でもドラムを四つ打ちにしたり、シンセベースを使ったりした曲っていうのは、その声を取り入れた結果でもあるんですよ。一本調子じゃいけない。カタログ的にいろんな曲があったほうがファンも楽しんでくれるっていうことでアイデアをくれて。それでリズムパターンについてはいろんな刺激を受けるんだけど、でもメロディはどの曲についても僕の中から出てきたものだし、KISHOWの声もワン&オンリーだから「バラエティに富んでるけど、どの曲もGRANRODEOらしい」って言っていただけるんでしょうね。
安定“した”のか、安定“しちゃった”のか
──今回のベスト盤に収録された「声」についてKISHOWさんが思うところは?
KISHOW 「歌い直したいなあ」「正直拙いなあ」って思う曲もありますよ。ただ聴いている人はそれを“拙さ”とは感じていなくて、その頃の僕ならではの“味”だと感じてくれているかもしれないから、思い切って全録り直しだっていうわけにもいかなかったんですけどね。なんか過去の自分に対してじたばたしてるみたいでカッコ悪いし(笑)。ただ「慟哭ノ雨」は録り直してます。
──なぜ「慟哭ノ雨」はあえて録り直しを?
KISHOW 8年前で今のオレの歌い方とは違うし、ずっと「機会があったら録り直したいなあ」とは思ってたので。ただ当時の歌をどこまで許容するかっていう線引きは感覚としか言いようがないかな。「アウトサイダー」とか「delight song」もずいぶん前の曲だし「今のオレならまた別の歌い方をするなあ」って思う……正直、今のオレの耳からすると当時の声って気に入らなかったりもするんだけど、同じようにずいぶん前の曲の「Once & Forever」のボーカルはなぜかけっこう気に入ってたりもしますし。
──確かに線引きが難しそうですね。
KISHOW 感情論としかいいようがないですね。「慟哭ノ雨」は“なんか”録り直したかったっていう感じですから。結果「慟哭ノ雨」については特に満足してるんですけど、GRANRODEOでのデビュー前から思っていたことっていうのもあって。いろんなバンドとかシンガーの人の初期の曲って、キャリアが浅いこともあってやっぱり不安定じゃないですか。
──はい。
KISHOW で、その人が何年か後に、キャリアを積んだ上でカチッと安定した歌声で改めて初期の曲を歌ってるのを観ると、きまって「あれっ?」ってなるんですよね。
──新人の不安定さや粗さが若書きの魅力に映ることってありますよね。
KISHOW うん。「あっ、オレ、あの粗さが好きだったんだ」って思うことがあって。今回のベストを聴いてるときも、そのリスナー的な思いと、プロのシンガーとしての思いの狭間を行ったり来たりしているような気分にはなりましたね。10年やってきて、さすがにオレも安定してきてるんですよ。タバコをやめてからノドの調子もいいし。だから不安定な頃の曲を録り直したくなったんだけど、「これってオレが安定“している”んじゃなくて、安定“しちゃってる”ってことなんじゃないか?」とも思ったというか。いろいろ思わされるアルバムではありました。
やりたいことをやれたがパーマネント感はなかった
──さっきちょっと気になったんですけど、e-ZUKAさんが「長く続くユニットだとは思ってなかった」っておっしゃっていて……。
e-ZUKA 結成の経緯が、声優として活躍しているKISHOWとプロのギタリストとして活動していた僕がユニットを組んだっていうものでしたから。あんまりパーマネントなユニット感、バンド感はないですよね。
──でもe-ZUKAさんはもともとバリバリのハードロックギタリストでいらっしゃって。で、KISHOWさんについては僕、同世代だから音楽の趣味がすごく理解できるんです。色気づいて洋楽を聴き始める中学時代にいきなりGuns N' Rosesの1stアルバム「Appetite for Destruction」を喰らった……。
KISHOW まさにその世代ですね(笑)。
──なのでGRANRODEOのサウンドって当時の男子中学生はみんな大好きなサウンドだと思っていて。だからお2人にはビジネスライクのようで実はそうではないという印象があった。「だってこの人たち、どう考えてもハードロック好きだもん」って。
e-ZUKA まあビジネスって普通にやりがいのあることだし、僕らはやりたくもないことをイヤイヤやらされていたわけでもないですしね。「売れたら好きなことをやらせてやる」ってダマされて始めたわけでもないですし(笑)。でもパーマネント感はなかった。
KISHOW 「なるべく長くやれたら面白そうだなあ」とは思ってましたけど、さすがに当時は今の自分、10年先の自分を見据えてはいなかったですよね。振り返れば10年経ってた。早いもんだなあ、って感じで。
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- ベストアルバム「DECADE OF GR」 / 2015年9月30日発売 / Lantis / [CD2枚組+DVD] 4860円 / LACA-9414~5
- ベストアルバム「DECADE OF GR」
DISC 1
- バラライ
- Go For It! "style EDGE"
- Infinite Love
- 慟哭ノ雨
- Once & Forever
- delight song
- Snow Pallet
- Darlin'
- アウトサイダー
- tRANCE
- modern strange cowboy
- サマーGT09
- カナリヤ
- 21st CENTURY LOVERS
- シャニムニ
DISC 2
- SEA OF STARS
- ROSE HIP-BULLET
- SUPERNOVA
- 愛のWarrior
- Can Do
- メズマライズ
- RIMFIRE
- CRACK STAR FLASH
- 偏愛の輪舞曲
- Y・W・F
- The Other self
- 変幻自在のマジカルスター
- Punky Funky Love
- メモリーズ
- 今より先を
DVD収録内容
Music Clip
- バラライ
- 僕だけの歌
- wish
GRANRODEO LIVE 2013 Y・W・F /(^o^)\ ヤッホー ワンダホー FUJIYAMA!!
- Y・W・F(feat. KIJI + WONDERHOO DANCERS)
- サマーGT09(feat. FIRE HORNS + WONDERHOO DANCERS)
- 恋のHEAT WAVE(feat. FIRE HORNS + WONDERHOO DANCERS)
- SEA OF STARS(Acoustic ver.)
- Go For It!
- Beautiful world(feat. FIRE HORNS + WONDERHOO DANCERS)
GRANRODEO(グランロデオ)
ボーカリストのKISHOW(谷山紀章)とギタリストのe-ZUKA(飯塚昌明)からなるユニット。2005年結成。同年11月、アニメ「IGPX」のオープニングテーマ「Go For It!」でデビュー。声優としても活躍するKISHOWの表現力豊かなハイトーンボーカルと、e-ZUKAによるハードロックマナーに則ったヘヴィでメロディアスな楽曲群で人気を博す。以来コンスタントにリリースを重ねる一方で、2010年には東京・日本武道館で結成5周年記念ライブを実施。その後も神奈川・横浜アリーナ、大阪・大阪城ホール、埼玉・さいたまスーパーアリーナなどホール、アリーナクラスでのワンマンライブを敢行し、「Animelo Summer Live」などの大型フェスではヘッドライナークラスのポジションを確立する。2014年9月には6枚目のアルバム「カルマとラビリンス」をリリース。翌2015年1月には22枚目のシングル「Punky Funky Love」を、6月に23作目「メモリーズ」を、9月にはデビュー10周年記念ベストアルバム「DECADE OF GR」を発表した。また10月には千葉・幕張メッセ 国際展示場1-3ホールにてユニット結成10周年を記念した2DAYSライブイベント「GRANRODEO LIVE 2015 G10 ROCK☆SHOW」を開催する。