音楽ナタリー Power Push - GRAND KIRIN with くるり

ビールが好きになる瞬間

くるりが作ったオードブル。

岸田繁(Vo, G) 僕、24歳ぐらいのときに旅行で行ったイギリスでペールエールを飲んだんです。本場って常温で飲む文化があるんですけど、そのときに初めてビールがうまいと感じたんですよね。

佐藤征史(B) それまでもビールは飲んでたよね?

岸田 うん。それまでは苦くてシュワシュワしたものをカッコつけて飲むっていう感じで。僕、ドイツのスモークビールとかもそうなんですけど、くっさいのが大好きなんです(笑)。ビールって、常温で飲むとすごく香りが強く出るんですよね。そのイギリスでビールを飲んだ瞬間に、自分でちゃんと自覚して「ビールうまいな」って思ったというか。

佐藤 僕はもともとビールを飲んでいたわけではなくて。大学生のときはあまりお酒のことがよくわからないのに、外でモスコミュールやハーパー(I.W.ハーパー)を頼んでいて(笑)。それで、その頃発泡酒が注目を集めてたんですけど……。

岸田 ああ、そうやったね。

佐藤 深夜バイトが終わったあとに家で発泡酒を飲んでたんですよ。それで外に行ってほんまもんのビールを飲んだときに「なんてうまいんだ」って衝撃を受けて、ビールが大好きになりました。そういう意味では発泡酒のおかげかもしれないですね。

左から岸田繁(Vo, G)、佐藤征史(B, Vo)。
くるりが作ったオードブル。

ちびちび飲むほうが好き

佐藤 20代半ばまでは朝までビールばっかり飲んでましたね。家でもずっとビールやったんで。ホントに、「何本飲むねん」っていうぐらい。実は、28歳ぐらいから下っ腹とかいろんなことを考えて家でビールを飲むのをやめてた時期があったんですよ。そのまま30歳を迎えて「あ、外でももうあんま飲まへんなあ」って感じてたんですけど、ここ1、2年で夏にビールが止まらなくなって(笑)。「やっぱりビールやな」ってことで飲んでますね。

岸田 夏のビールは特にうまいな。フェスとかでも水分補給として飲みますね。でもそのときはついついあまり味わわずに飲んでいるというか、のどごしで飲む場合が多くて。ほんまは僕、ビールを家とかでちゃんと飲むときはちびちび飲むほうが好きで。つまみもメザシをほんのちょっとだけとか、あと一番好きなのは京都の大徳寺納豆っていうやつ。

佐藤 塩っ辛い小粒の甘納豆。お味噌みたいな。

岸田 それをちょびちょびって食べながら、飲みますね。「鍋のときに一番搾り!」とかっていう楽しみ方も好きなんですけど、「お酒を飲もう」「そのビールの味を楽しもう」っていうときは、味の強いもんが少量あればいいですね。

佐藤 日本酒を飲む感じやな。升酒の塩だけで、みたいな。

左から岸田繁(Vo, G)、佐藤征史(B, Vo)。

ちゃんと味わいたい1本

岸田繁(Vo, G)

岸田 「じっくりビールを飲もう」っていうときはエールタイプを好んで飲むことが多いんですけど、この「グランドキリン」はラガータイプなんですよね。でもこれは好きだなあ。うまいっす。苦味が効いてる。

佐藤 香りもええよね。一番ちっさいときのビールの匂いの初体験ってあるじゃないですか。お父ちゃんとか周りの人が飲んでたのって、たぶんラガーだと思うんですよね。自分たちの世代って。

岸田 そうねえ、ラガーやね。

佐藤 そのときって、すごく苦そうな匂いがした記憶があって。でも「グランドキリン」はなんか自分が思ってるビールの匂いっていうのとは全然違うねんな。ええ香り。

岸田 さっき聞いたけど、ディップホップっていう製法をしてるんですよね。発酵工程でホップを漬け込むっていう、お漬物みたいな感じかな? だから香りが強くて、味わい深い。

佐藤 「うららかをる」はエールタイプなんですよね。こっちは甘い感じがする。きっとこの瓶も、コーヒーとかじゃないですけど、香りを味わってほしいっていうことで広口タイプになってるんですよね。

岸田 いいサイズ感やし、このまま飲めるっていうことで、花見の時期とかにも最高ですね。飲み終わったら、楽器代わりに「ほー」(瓶の口を吹いて鳴らす)とかもできるし。ビールって普段はあんまりありがたみを感じずについつい飲んじゃうでしょ。でもこのビールは特に醸造家さんががんばって作ってくれはってる感じが伝わるから、飲む側もちゃんと味わいながら飲みたいですね。

左から「グランドキリン」、「うららかをる」。
左から佐藤征史(B, Vo)、岸田繁(Vo, G)。

出たとこ勝負感が強い「アンテナ」

岸田 9月でくるりは結成20周年を迎えるんですけど、アニバーサリー企画の一環として5月から「アンテナ」(2004年3月リリースの5thアルバム)の再現ライブツアーをやるんです。醸造家の方たちがビールを作ってくれはるように、毎回僕らも音楽に対するこだわりってあるんですけど、「アンテナ」のこだわりはデジタルに頼らずに全部人力でやったっていうところですね。アナログテープに録音して、アナログ卓でミックスしてっていう。その結果わりと、ファットなんですけど、古い音になりましたね。

佐藤 「アンテナ」のタイミングって、クリストファー(・マグワイア / Dr)がバンドに加入したときなんですよね。オリジナルメンバー以外の人が正式メンバーになったのが初めてだったので、あえてクリックはあまり使わず、一発録りでその場の空気を閉じ込めたんです。いい雰囲気のアルバムになってると思います。

左から岸田繁(Vo, G)、佐藤征史(B, Vo)。

岸田 あと「アンテナ」の収録曲は、もしかしたらほかのアルバムより演奏するのが簡単かもしれない。使う楽器にこだわっているのもあるんですけど、シンプルなライブっぽい感じなんですよね。今のくるりのサポートメンバーは演奏が上手な人たちだから、パッと演奏したら、案外パッとできてまうと思う。出たとこ勝負感が強いアルバムやから、ツアーではあまり作り込まずにライブをやったほうが面白いことが起こるやろなあと思ってます。そのあとは新曲を出そうと思っていて。どういう曲か詳しいことはまだ言えませんけど、それがたぶん「アンテナ」よりすごいと思うので楽しみにしていてください。

配信シングル「かんがえがあるカンガルー」/ 2016年2月3日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
「かんがえがあるカンガルー」
レコチョク
mora
収録曲
  1. かんがえがあるカンガルー
くるり
くるり

1996年に立命館大学の音楽サークル「ロック・コミューン」内で岸田繁(Vo, G)、佐藤征史(B, Vo)、森信行(Dr)により結成。その後メンバーチェンジを経て、2011年からは岸田、佐藤、ファンファン(Tp, Key, Vo)の3人編成で活動している。1998年10月にシングル「東京」でメジャーデビューを果たして以降、2015年8月にシングル「ふたつの世界」をリリースするまで11枚のアルバムと33枚のシングルを発表した。2007年9月に主催イベント「京都音楽博覧会」をスタートさせたり、「ジョゼと虎と魚たち」「奇跡」といった映画作品の音楽を担当したりと、その活動は多岐にわたる。2016年のバンド結成20周年に向けた取り組みとして、2015年4月に再現ライブシリーズ「NOW AND THEN」をスタートさせた。2016年2月にはNHK「みんなのうた」で放送された楽曲「かんがえがあるカンガルー」を配信リリース。3月には岸田がFM802、FM NORTH WAVE、J-WAVE、ZIP-FM、cross fmの各局とTSUTAYAのコラボキャンペーン「TSUTAYA ACCESS!」にテーマソング「Hello Radio」を提供した。バンドは5月から「NOW AND THEN」の第3弾として2004年3月発表の5thアルバム「アンテナ」の再現ライブを行う。


2016年5月31日更新