ナタリー PowerPush - 後藤まりこ
破壊から創造へ 初シングルと女優業を語る
ほんまに音楽をやりたい
──女優業は充実しているようですが、音楽のほうも好調ですか?
音楽はやっぱりすごく好き。ラブ。ほんまに音楽をやりたい。ずっとやりたい。
──以前は「音楽やめる」って言ってたこともありましたけど。
無理やなー。ほんまに無理やった(笑)。今は音楽できててありがたい。
──女優業はオファーありきの仕事ですけど、音楽は違いますよね。
うん、自分発信やね。
──音楽という土台があるからこそ、いろんなことができるのかなという気がします。
そうかも。音楽がなかったらなんもできひんもん。
──テレビタレントにはなれない?
無理やなあ(笑)。だからタレントさんってすごいなあとも思うし。もし忙しくて音楽できへん時期っていうのがあったとしても、絶対音楽はやめないでずっとやり続けると思う。
媚びた音楽は飽きるから
──今回のシングル「sound of me」はまっすぐできれいな曲ですね。
ありがとう。曲自体は去年の今頃にもうあってん。
──「sound of me」というタイトルはどこから?
わからへんねん。こんな言葉、人生で初めて言った。だからパッと出てきてちょっとびっくりしてる。
──この言葉にどんな思いを乗せたんでしょう?
うーん、あきらめ。幸せってものに対するあきらめかなあ。幸せって断続的な瞬間瞬間やし、でも抱きしめるしかないし。ほんまはもうなんもやりたないけど、生きていく上ではそれは無理やん。だから祝祭感と寂しさがある。
──ドラマのエンディングで流れてるのを観たときはどうでした?
単純にうれしかった。「わあ、自分の曲がテレビで流れてる!」って思って。なんか初めてCD出したときみたいな衝撃が。
──テレビで流れることは意識しました? ヒットを狙っていこうとか。
全然思ってない(笑)。思ってたらもっとバラードとかにするやん。ギターもっと静かなのにする。どう? そんなんやりだしたら。
──そういうのもちょっと聴いてみたいです(笑)。
マジか(笑)。じゃあ検討します(笑)。
──媚びたものじゃなければ、静かな曲をやるのもいいと思いますけど。
うん、媚びた“ごっこ”はできるかもわからんけど、飽きるもんなあ。
──それは音楽を何かの手段に使うということですよね。
うん、ボクは目的。音楽は手段ではない。入れ替わったら……クソやな。
──今回はリミックスバージョンもいいですよね。
Serph(サーフ)さんがやってくれてん。歌のある音楽を普段やってない人なんやけど、ボクもともとSerphが好きやって頼んでみたら、すごくよかった。
どこにも向かってない
──ソロになって以降の後藤さんからは、バンド時代以上に攻めている印象を受けます。
うん、だって守りに入ったらもうやめるしかないやん。伝説残して終わりみたいな、そんなんもしょうもないし。
──破壊ではなくきちんと積み上げながら前に進もうとしているわけで、それは後藤さんにとってはこれまでやったことのない新しいことですよね。
だからもうビクビクやで(笑)。不安しかないよ。それをいいって言ってくれる人もおるけど「どこ向かってんねや、こいつ」って言う人ももちろんおるわけやん。そういう人には、やっぱりゆっくりゆっくり、ちゃんと見ていてほしい。
──後藤さん自身はどこに向かってるつもりなんですか?
どこにも向かってない。音楽に向かってるとか、女優に向かってるとかさ、別にそんなの考えてやってないから。ただ一生懸命日々を生きて、全部を飲み込んで糧にするだけ。
──音楽以外の仕事をすることが音楽活動に影響を与えることもありそうですしね。
あると思う。っていうかある。いい刺激をもらってる。音楽って、お客さんもちゃんと目の前におって、ちゃんとレスポンスが返ってくるやん。でもドラマの現場とかはレスポンスもないし、その空間だけで、しかもあとで編集するまでは時間軸がバラバラで。だからボクだけ自信なくて大変やねん。ボクはそっちの世界の人には完全にはなられへんし、でもそういう異文化交流ができてうれしい。もっとしたい。
──じゃあそういう刺激を受けてまた新しい曲が出てくる?
来るんかな? 来たらいいね(笑)。
- 1stシングル「sound of me」 / 2013年7月24日発売 / DefSTAR Records
- 「sound of me」初回限定盤 [CD+DVD] / 2000円 / DFCL-2028~9
- 「sound of me」通常盤 [CD] / 1000円 / DFCL-2030
CD収録曲
- sound of me(original mix)
- sound of me(Serph oyasumi mix)
- sound of me(Serph swollen mix)
初回限定盤DVD収録内容
- ワンマンライブ「299792458 TOUR」(2012年11月24日@恵比寿LIQUIDROOM)の模様
後藤まりこ(ごとうまりこ)
大阪府生まれ。2003年に結成したロックバンド・ミドリでボーカルとギターを担当する。ジャズとパンクを融合した音楽性と、セーラー服姿での激しいパフォーマンスで話題を集めるも2010年12月30日のライブを最後にバンドは突然解散。しばらくの沈黙の後、2011年12月27日に開催した自主企画イベントでソロとして再始動を果たし、2012年7月にソロ1stアルバム「299792458」をリリースする。同年8月からはロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に森山未來とともに出演し、2013年4月公開の映画「ペタル ダンス」で映画初出演。また同月より放送のTVアニメ「惡の華」のオープニングテーマにゲストボーカリストとして参加する。2013年7月にはソロ1stシングル「sound of me」をリリース。この曲は自身が主演するドラマ「たべるダケ」のエンディングテーマに採用された。