音楽ナタリー Power Push - Goodbye holiday×寺岡呼人

メジャーデビュー飾る“アンセム”制作の裏側

これから詞先の時代?

寺岡 ちょうど昨日、ゴダイゴのタケカワユキヒデさんと対談したんだけど、ゴダイゴの曲って全部詞先なんだって。奈良橋陽子さん(ゴダイゴの歌詞を数多く手がけた作詞家、劇作家)から英語の歌詞が送られてきて、それにメロディを付けてたらしくて。タケカワさんは「英語の曲はほとんど詞先のはずだ」って言うんだよね。たとえばThe Beatlesの「Can’t Buy Me Love」にしても、歌詞が先じゃないと、あのメロディは出てこないはずだって。その歌詞の中にメロディやリズムがあるってことだよね。

福山 確かに言葉のリズムって大事ですよね。

寺岡 そうそう。キャロル・キングの自伝を読んでも、ほとんど歌詞が先だったみたいだし。日本のアーティストはたぶん、8~9割くらい曲先だと思うんだよね。

児玉 僕らもほぼメロディが先ですね。これからは詞先でがんばります。

左から山崎晃平(Dr)、寺岡呼人。

寺岡 早いな(笑)。でも、これから詞先の時代じゃないかなって思ってるんだよね。「上を向いて歩こう」とかもそうだけど、歌詞を読むだけで「名曲だ!」ってなるじゃない? そういうのが大事だなって。

山崎 歌詞が付いていると、アレンジも浮かびやすいんですよね。この前もスタジオで曲を作っていて、なかなかシックリこないことがあって。そのあと児玉が歌詞を付けてくれたんですけど、そうするとすぐにイメージが広がったんですよ。それはドラムだけではなくて、ギターのフレーズや音色もそうだろうし。

寺岡 “フラれたー”と“フッた!”では違うからね(笑)。

大森 そうですね(笑)。

メジャーデビュー=これで自分たちがやりたいことができる

──寺岡さんは「革命アカツキ」の資料の中で、若いバンドに必要なものとして“勢い”と“ルックス”と“雰囲気”を挙げていて。ここで言うルックスって、単にカッコいいということではないですよね?

寺岡 そうですね。The Beatlesやストーンズ(The Rolling Stones)もそうで、ルックスがいいメンバーがそろっているわけではないんだけど、雰囲気がいいじゃないですか。あとルックスと音って比例すると思うんですよね。

──確かに見た目の雰囲気と音のイメージがしっかり合ってると“いいバンドだな”と思いますからね。

寺岡 うん。“勢い”には、“もっと爆発してほしい”という気持ちも込めてるんです。自分もそうですけど、若いときって勉強とかから逃げたくて音楽をやり始めたところもあると思うんですよ。聴いてる人もそういうところがあるはずだし、キレイにまとまったものが聴きたいんじゃなくて、それを壊すような曲に共感してると思うんですよね。Goodbye holidayはこれからメジャーデビューですけど、そういうことができる環境に来たと思ったほうがいい。

──メジャーという場所を“思いきり個性を爆発させられる環境を得た”と捉えるほうがいい。

寺岡 そうそう。守りに入って小さくなるんじゃなくて、「これで自分たちがやりたいことができる」って。誰も責任を取ってくれない世界ですからね。今はいろいろ言う人がいるだろうけど、10年後にも同じように言ってくれるかどうかはわからない。ということは、自分たちのやりたいことを通すところは通すという感じでやってかないと。

児玉 今、まさにそういう時期なんですよね。

山崎晃平(Dr)

山崎 これからアルバムを作り始めるし、年末のワンマンライブのことを含めて、いろいろと話し合ってるので。もともと僕らはマジメなタイプというか、キレイなもの、正しいものじゃないと納得できないところがあるんですよ。それとは反対のアドバイスをくれる人が付いてくれたほうがいいし、今回のシングルのプロデューサーが呼人さんでよかったなって。

寺岡 “内なるもの”でいいんだよね。見た目でワーッとやるんじゃなくて、内に秘めた凶暴さというか、それぞれの個性をしっかり持っていれば。今のファン以外の人を惹きつけるのは、そういうものだと思うんだよね。あと、変わる勇気を持つことも大事。1枚アルバムを作ったら、それを全部捨てて、背水の陣で次のアルバムを作るとか。それを続けていくのは大変だけど、10年くらい経ったときに「一貫しているものがある」ということになればいいわけだし。要はやりたいことを貪欲にやるってことだよね。

福山 今までは「ここまでやってしまったらお客さんが引いちゃうんじゃないか。応援してくれなくなるんじゃないか」って、バランスを取ることも多かったんです。メジャーデビューのタイミングで、僕らがやりたいことを応援してくれる方、支えてくれる方が周りにいてくれることで、そういうバリアみたいなものが外れてきた感じはありますね。

そのバンドじゃないと出せない音って大事

──寺岡さん自身も、Goodbye holidayと出会ったことで気付いたこともありそうですね。

寺岡 そうですね。今、自分の曲を作ってるんですけど、山崎くんにドラムを叩いてもらったんですよ。「革命アカツキ」のレコーディングで「スタジオミュージシャンでは絶対出せないビートがあるな」って思って。

山崎 貴重な体験でした。ドラムを叩かせてもらったあと、「シンセを入れたんだけど、どうかな?」って音源を送ってきてくれたんですよ。「俺に意見を聞いてくれるんだ」ってうれしかったですね。

寺岡 (笑)。やっぱり、そのバンドじゃないと出せない音って大事なんですよね。ぜひそれを追求してほしいな、と。

──演奏技術とは別の話ですよね、それは。

寺岡 今は機材も発達してるし、レコーディングも簡単にできるじゃないですか。ある程度のレベルにはすぐにいけるし、“全国総セミプロ”みたいな状態だと思うんですよ。その先、聴いてる人の心をわしづかみにするような個性をどうやって持てばいいかと言えば、そのバンドにしか出せない音、歌詞を追求するしかないし、そこはわがままにやってほしいなって。その中で詞先というのは大事になると思ってますけどね、僕は。

児玉 そうですね。

寺岡 「革命アカツキ」のライブでの評判はどうなの?

福山 めちゃくちゃいいです。初めてライブでやったときも、泣いてくれてる人がいたんですよ。曲調のわりにメロディや歌詞は切なかったりするので、そこが伝わってるんじゃないかなって。YouTubeにMVをアップしてからは、ライブの反応もさらによくなってますね。Twitterでもかなり拡散されてるし、友達や親からも評判もいいです。YouTubeの再生数の伸びも今までで一番早いですからね。

──素晴らしい。ちなみに寺岡さんとメンバーで好きな音楽の話とかもしてるんですか?

山崎 あんまりしてないですね。寺岡さんがライブに来てくれたあと、すぐにシングルの制作だったんで。

寺岡 じゃあ、飲みに行きますか。年末のワンマンの打ち合わせも兼ねて……俺は関係ないけど(笑)。

一同 ぜひ行きましょう!

Goodbye holiday、寺岡呼人。
Goodbye holidayワンマンツアー
2015年10月29日(木)北海道 COLONY
2015年11月1日(日)宮城県 enn 2nd
2015年11月5日(木)愛知県 ell.FITS ALL
2015年11月6日(金)大阪府 LIVE SQUARE 2nd LINE
2015年11月8日(日)東京都 TSUTAYA O-WEST
2015年11月12日(木)福岡県 graf
2015年11月13日(金)広島県 ナミキジャンクション
(※10月1日よりSECOND CRUTCHに名称変更)
Goodbye holiday(グッバイホリデイ)

Goodbye holiday

児玉一真(Vo, G)、大森皓(G)、福山匠(B)、山崎晃平(Dr)からなる4人組バンド。2008年に広島で結成。2011年に東京に拠点を移し現在のメンバーとなる。ポップで耳触りのいいメロディ、独特な視点を持った歌詞、存在感のある歌声で着実にファンを増やし、2013年1月に初の全国流通盤「ソラリス」、同年10月に「はじまりの唄」をリリース。2014年8月には島田昌典がプロデュースした「スパイダー」を含む3rdミニアルバム「FLAG」を発表した。2015年7月、歌詞サイトで注目度ランキング1位を獲得したシングル「革命アカツキ」でエイベックスからメジャーデビュー。表題曲のプロデュースは寺岡呼人が務め、TBS系「CDTV」6月度エンディングテーマに使用された。

寺岡呼人(テラオカヨヒト)

寺岡呼人

1968年生まれ、広島県出身。1988~93年にJUN SKY WAKER(S)のベーシスト兼コンポーザーとして活躍。バンド脱退後はソロでの活動を展開するとともに、他アーティストのプロデュースも行い、これまでゆず、矢野真紀、ミドリカワ書房、植村花菜、グッドモーニングアメリカらのプロデュースを手がけている。2001年より、自身が尊敬するアーティストや親交あるアーティストをゲストに迎えコラボレーションを行うイベント「Golden Circle」を不定期に開催。2014年9月には通算14枚目となるオリジナルアルバム「Baton」をリリースした。