6時限目
バンドをやる理由
HISASHI 僕がこのご時世にバンドを続けている理由は、ミラクルが起きるからなんだよね。自分で全部作ってると驚きがなくなっちゃうというか、特に自分で歌うとガッカリしかなくて(笑)。だから曲を作るたびに「TERUさん、ミラクルをお願いします!」みたいな感じで期待してる。
川谷 自分だけで作ってると想像の範囲内になっちゃうところ、人と一緒に作ることで想像の範囲外にいけますよね。その楽しみを知っちゃうと、なかなかバンド以外で音楽ができない。
HISASHI 自分が作った曲が、レコーディングの過程でいろんな意見が入ってきて、マスタリングで変わって、ミュージックビデオを通して視覚化されて……さらにライブで演奏することで当初とは全然違う曲になる。自分が作った曲って子供みたいにかわいいじゃない? それがどんどん成長していくのが面白いんだよね。
川谷 ホントに奇跡みたいなことが起きるんですよね。バンドをやる意味はそれに尽きるというか。シンガーソングライターにしても、結局作るときには誰かとの共同作業になるし、“バンド”になると思うんです。ライブとか観てても、弾き語りだけでずっとやり続ける人はそんなにいない。結局はサポートメンバーとバンドとしてパフォーマンスをするし。まあ、もちろん面倒臭いことはいっぱいありますけどね(笑)。
HISASHI 確かにね。
川谷 シンガーソングライターだったら起きない問題とかも起きるじゃないですか。メンバー間の人間関係に気を遣ったりとか。
HISASHI ははは(笑)。そういう部分もあるけど、GLAYの場合、責任感とか4分の1になってちょうどいいなっていうふうに思ってるんだよね。メンバーそれぞれ得意なこともあれば不得意なこともあり、それぞれができることを率先してやってる。
川谷 わかります。バンドはメンバーがその名前を背負うことで、それぞれ責任感が生まれるし。
HISASHI あと一緒に音楽を作るうえで、メンバーを驚かせたいとかっていうのがあるんだよね。
川谷 反応があるとモチベーションになりますよね。メンバーが面白いと思う曲を作って、さらに演奏しているメンバーが楽しそうだったらそれでうれしいし。
HISASHI まあクリエイティブな立場でいうと、バンドという形態は非常にポジティブな結果しか生まれない。
川谷 人と会うのがイヤな人は向いてないかもしれないですけどね(笑)。
HISASHI それを言ったら僕は人と会うの嫌いだったな。
川谷 あははは(笑)。
HISASHI でもさすがに慣れたし、最初はイヤな人だと思った人が長い付き合いにもなったり。人間の奥深さとかそういうのにも興味が出たりして。
川谷 そういう部分はバンドで培われますよね。
HISASHI あと同じメンバーで長く続けると何があるかわからない。ホントは僕ら、いろんなものに嫌気がさして、99年の年末で解散しようと思ってたんだけど、結局は「バンド名変えて、またこの4人でやろう」という話になって(笑)。1回そういうことがあったから、2000年以降は自分たちのペースで音楽を作れるようになったんだよね。
川谷 ちなみにメンバーで大ゲンカをしたりとか……。
HISASHI ないない。
川谷 素朴な疑問なんですが、ライブのときってメンバーそれぞれ楽屋は別なんですか?
HISASHI TERUだけ喉のケアがあるから別な場合もあるけど、ほかはみんな一緒だね。あと、僕らはアホかっていうぐらいリハをやるんです。全員が曲を体に染み込ませて、コンディションを整えてライブに臨みたいのかも。
川谷 それってキャリアのあるバンドにしては珍しい気がします。
HISASHI そうかも。友達のバンドがドームをやるのにリハを3日しかやらない言ってて腰抜かしたもん。
川谷 今でも一緒に食事とか行かれるんですか?
HISASHI 行く。メンバー同士で仲はいいと思う。スタジオ入ったらリハ時間よりも、話している時間のほうが長いし(笑)。
川谷 最近ゲスの極み乙女。でレコーディングしたあとに、「ひさびさに4人でメシに行こう」って誘ったら女子2人に断られましたよ。
HISASHI えー!
川谷 そのときはベースとふたりで行ったんですけど……8年目で俺らそうなっちゃってるんで、どうなるんだろう……。
ホームルーム
質疑応答
HISASHI 音楽とは関係ないんだけど、絵音くんの趣味はなんなの?
川谷 僕、お笑いが好きで、ライブにもよく行ってますね。
HISASHI そうなんだ! 僕、お笑いのライブって行ったことがなくて。
川谷 すごくいいですよ。一番刺激を受ける場所かもしれない。もともとがお笑い芸人になるのが夢だったのもあるし。
HISASHI どういうきっかけでそんなにお笑いが好きになったの?
川谷 笑い飯さんが「M-1」に出てたのを観たのがきっかけですね。彼らのダブルボケのスタイルが新鮮すぎて、そこからお笑いばっかり。一時期音楽がどうでもよくなってお笑いのネタを作ってました。
HISASHI そういうのはライブに反映されているの?
川谷 してますね。ライブにお笑い芸人さん呼んだりとか。メンバーを巻き込んでコントをやったり。「独特な人」っていうプロジェクトで、劇を上演したり、コントをやったりもしていて。音楽も劇のために作って。
HISASHI それ、すごく観たいな。舞台って音楽が大事だと思うんだよね。バカリズムさんやナイロン100℃の舞台とかでは劇伴がすごい重要な役割を担ってて。
川谷 わかります。単なる舞台のための音楽ではなく、これから音楽と舞台がいい意味で結び付いた作品を作りたいなと思ってるんですけど、その構想を練っていたときにコロナが広がってしまったので……今すぐはできないんですけど。
HISASHI まだまだこれからアウトプットするものがたくさんあるということだね。
川谷 はい。やりたいことを全部やっとこうっていう性格なんで、死ぬまでにいろいろやっておこうと(笑)。俺からは質問というか、お願いがあって。HISASHIさんアルミボディのTalboギターをたくさん持ってますよね。
HISASHI そうだね。90年代にバカみたいに作って(笑)。
川谷 一度HISASHIさんのギターコレクションを見てみたいんです。
HISASHI 倉庫にしまってあるけど、ぜひぜひ。
川谷 ホントですか!?
HISASHI 見ればGLAYの歴史がわかると思う。
川谷 俺、ギターとか機材を見るのがめちゃくちゃ好きで。たくさんギターをお持ちだと思うんですが、今もギターを買ってるんですか?
HISASHI 買ってる買ってる。コロナ禍でのストレスなのかわからないけど、すごい買い物するようになっちゃって。今までそんなに興味なかったオールドのギターとか買ったり(笑)。Fenderのジャズマスターとか今まで敬遠してたんだけど、定評があっていいものだと言われるギターって持ってみるとよさがわかったりする。それがきっかけで自分の作る音楽にも変化があったの。今まで「自分のギターはここまでだ」と限界を決めていたけど、新しい発見があったりするんだよ。
川谷 HISASHIさんってものすごい吸収力が高そうですよね。お笑いライブを観に行ったらめっちゃハマるんじゃないかなって思います。
HISASHI まだ踏み込んでない分野だから、興味深いところではありますね。
川谷 GLAYのライブ中にお笑いが始まったりして……。
HISASHI はははは(笑)。今度ギターをぜひ見に来てよ。DMするね。
川谷 ありがとうございます!