「キュンキュン系、大好きなんですよ」

──そして満を持してメジャーデビューしたわけですけど、1stシングル「BELOVED×SURVIVAL」って絶対にGeroさんが好きだろう、ヌケのいいスカパンク、メロコア系のアレンジだし、実際すごく気持ちよさそうに歌ってるんだけど、SEX MACHINEGUNSとも影山ヒロノブとは違う……。

キュンキュン系ですよね（笑）。

──ええ。女性向けアニメ「BROTHERS CONFLICT」のオープニングテーマだし、歌詞のド頭は「世界でひとつだけのたいせつな笑顔 キミを誰にも渡したくない！」ですから（笑）。

でもね、大好きなんですよ、こっちはこっちで（笑）。この曲ってGomのいるHoneyWorksが作曲と編曲をしてるんですけど、実はこれはたまたまで。レーベルの人がHoneyWorksを気に入って曲を発注しただけらしいんですけど、お互い乙女の恋愛ストーリーの世界観が大好きなんですよ。しかもHoneyWorksとは飲むたびに「アニメの主題歌を歌えたら夢が叶う」「アニメ主題歌の作曲ができたらうれしい」って話してて。スカの入ったメロコアっていう好きなアレンジの上に、やっぱり好きな乙女的キュンキュン系の歌詞が乗ったHoneyWorksの曲を歌うっていうすごく幸せなデビューをさせてもらえてるんですよね。……ただ、ムズいんですよ、この曲。

──あはははは（笑）。

アップテンポでキーも高いし……。まあそれも自分への挑戦だと思えばそれはそれで幸せなんですけどね。

──アニソンという性格上、Geroさんのキャラクターを打ち出しつつ、「BROTHERS CONFLICT」という作品や登場人物の横顔を紹介しなければならないのも難しそうだな、っていう気がします。

そこについてはある意味、考えないようにしました（笑）。突然13人の男兄弟ができることになった女子高生の感情で歌ってください、って言われたら逆に困ったはずですから。だから原作をしっかり読み込んで、気持ちを込めて歌っただけ。六ツ見純代さんの詞がすごくストレートに「BROTHERS CONFLICT」の世界観を表現した素晴らしいものだったので、そこに今のGeroを乗せられればクオリティの高いものができるな、と思ったので。変にかわいらしい声を作ってみたり、反対にちょっと低めに艶っぽく歌ったりとか、そんなん関係なく「BROTHERS CONFLICT」にキュンキュンした（笑）、そういう素のGeroをぶつければいいものができるだろうって。カップリングの「名もなき星（～Silent Stars～）」のアレンジャーで、このシングルやアルバム「one」のサウンドプロデューサーでもある黒須（克彦）さんも「それで大丈夫」って感じだったので、気持ち的にはすごくラクでしたね。

──それは「名もなき星～Silent Stars～」についても同じ？

そうですね。アニメの挿入歌で王道バラードになるっていう話は聞いていたので、気取らず、飾らず、そのままの気持ちをスッと乗せるイメージで歌ってますね。絶対にアニメの世界観は壊しちゃいけないんですけど、僕のメジャーデビューシングルでもある以上、Geroっぽさも絶対に必要なので、そういう意味では何も考えないのが一番かな、って。

プロデューサーとの出会いもメジャーの力

──そして7月24日には1stアルバム「one」もリリースされますけど、制作は「BELOVED×SURVIVAL」とほぼ同時ですよね。

そうですね。アルバム本編とシングルのリード曲とカップリング曲、それからアルバムの特典CDの曲を含めて1カ月で19曲録ってました（笑）。

──スゴいな（笑）。

でもアルバム制作もすっげえ楽しくて、ホントにありがたかったし、幸せでしたね。

──それはなぜ？

サウンドプロデュースを黒須さんにお願いしたからだと思います。今回参加してくださった作家さんの中でもヒャダインさん、エレガ（Elements Garden）の菊田大介さん、Tom-H@ckさん、大凶作以外の曲は全部黒須さんに共同アレンジャーとして入っていただいて、レコーディングにも全部立ち会っていただいたんで、歌うことに専念できたんですよ。今までの「Gourmet」や「Cross」はセルフプロデュース色が強かったんで、悩んで悩んで「もうどうしたらいいのかな」みたいな瞬間が多々あったんですけど、例えば「one」の1曲目の「NO WAY OUT」を録ってるとき「今、Aメロの歌い方を3パターン考えていて、どれがいいのか悩んでるんですけど」って話したら即座に「それは絶対2がいいから2のパターンで歌って」って。しかもそれが的確なんですよね。「BELOVED×SURVIVAL」で最初にお仕事をさせてもらったときから安心できる方、信頼できる方だなと思ってはいたんですけど、ホントに「僕はこのアルバムをこういう作品にしたい」っていうイメージを100％理解してくれた上で「こういう歌い方、感情の込め方をしたらいいよ」って道しるべを示してくれて。それがすごくやりやすかったし、楽しくて。すごい感謝してます。

──それもメジャーに進出した意味の1つですよね。Geroさん自身が「黒須さんと仕事をしたい」って言ったわけではないんだろうけど、レーベルが「Geroさんには黒須さんが似合うだろう」って判断してちゃんとアテンドしてくれる。

それもメジャーの力なんですよね。インディーズ時代の僕には黒須さんとお仕事をさせていただく機会どころか、知り合う機会すらなかったわけですから。

「ヒャダインさんたちも参加するアルバムの1曲目だから」

──一方、作家さんは誰のセレクトだったんですか。

全員僕が選ばせていただきました。リリースが決まったときから「こういうアルバムにしたい」という構想があったし、ヒャダインさん、菊田さん、Tom-H@ckさんも、HoneyWorksやほかのボカロPも「この人の曲を歌いたい」ってずっと思ってた人だったので。

──で、揃えちゃった、と。

まんまと（笑）。ホントにありがたいことに皆さん快く引き受けてくださって。いや、ホントにうれしいし、改めて見てみると、ホントにスゴいメンツですね、これ（笑）。

──あらかじめアルバムの構想があったということは、詞や曲の方向性についても作家1人1人と打ち合わせはした？

全員にイメージは伝えさせていただきました。1曲目は黒須さんのインストだからアレだけど、HoneyWorksには「アルバム1発目の歌モノだから」「ヒャダインさんたちも参加するアルバムの1曲目だから」みたいな。

──ハードル上げましたねえ（笑）。

相当プレッシャーだったって言ってました（笑）。ただ1曲目だから疾走感や爆発力のあるものをって頼んだら、しっかりその声に応えてくれました。2曲目のnekoちゃん（中西航介）はニコニコに「musique」っていうドロップチューンしたカッコいい曲を上げていたので、今回も「重くて悪くてノリのいい曲を作ってくれ」って頼んだら、ホントに悪い曲を作ってきやがって（笑）。で「アンチェインゲイザー」のLast Note.さんには「ラスノ節を全開にしてください」ってお願いしたら、王道ロックな感じなんだけど、かわいらしさがあったり「あっ、ここでこういう展開になるんだ」っていう面白さやクセのある“らしい曲”を作ってくださって。