Galileo Galilei「MANSTER」「MANTRAL」インタビュー|計28曲の大作を生み出した4人の蜜月 (3/3)

音楽は変化、野球は最適化

──続いてアルバム「MANTRAL」の楽曲について聞かせてください。先行配信された「リトライ」はライブ感あふれるバンドサウンドが印象的な楽曲です。この曲は岩井さんがバックトラックやメロディを構築したそうですね。

岩井 はい。「Bee and The Whales」のツアー後、「一生に1本のギターが欲しい」と思って何カ月も探し、ようやく今メインで使っているレスポールと出会ったんです。それで初めてギターを買ったような気持ちになって、「このギターで1曲作ろう」と思って書いたのが「リトライ」の原型です。自分でアレンジしてたんですけど、途中で「これ以上はどうしようもないな」と思ってメンバーに投げたら、見事に打ち返してくれた。原曲をほぼ構築してからみんなに提案したのは初めてですね。

雄貴 すごくラクでした(笑)。メロのラインもかなりできていたし、そのおかげでこの曲で伝えたいことがわかったというか。「たぶん岩井くんはこういうことがやりたかったと思うから、こっちのメロディのほうがいいんじゃない?」みたいなプロデューサー気取りの提案もできたし、いい意味で遊べた感じもありましたね。

──「リトライ」「若者たち」ではサックスがフィーチャーされていますね。

雄貴 ライブにも参加してもらっている大久保淳也さんが吹いてくれました。大久保さんはルーツが洋楽側で、ロックギターみたいなフレーズをサックスに落とし込んでくれるし、曲によっては壊れる寸前みたいな迫力がある音を出してくれて。「リトライ」は札幌にある芸森スタジオで録ったんですけど、めちゃくちゃ盛り上がりました。あと、僕らはブルース・スプリングスティーンも好きで。

──ブルース・スプリングスティーンといえば、クラレンス・クレモンズのサックスですからね。

雄貴 そうそう。元気がないときとか、ちょっとやる気が出ないときは、みんなでブルースのライブ映像を観ています。

──では、「MANTRAL」のほうでそれぞれ思い出に残ってる曲は?

和樹 いろいろありますけど、個人的には「5」ですね。完全に打ち込みの曲なんですけど、いろんな音楽を聴きまくった高校生の頃の気持ちを呼び起こしてくれるような1曲だなと思います。

尾崎和樹(Dr)

尾崎和樹(Dr)

岩井 僕も「5」はひたすらハウスミュージックを聴いてた頃を思い出しました。「5」の原型は僕以外の3人が作って、そのデータがポンと共有スペースに上げられていて。「岩井くん、アレンジして」ということだったので、メロディを加えたりしました。実は自分もかなり歌ってるんだけど、雄貴の声との相性がすごくいいと思ってます。

岡崎 僕は「UFO」が印象深いです。この曲は雄貴さんが1人でバーッと作った曲で。すさまじいスピードで名曲ができ上がっていく過程を間近で見て「すごいな」と。この曲によって「MANTRAL」というアルバムが締まった感覚もありました。

雄貴 今の岡崎くんの言葉で「そうか、1人で進めたのか」と思い出しました(笑)。この曲は明確なインスピレーションのもとがあって。子供のときに観ていた「ひらけ!ポンキッキ」で流れてきた「むぎばたけのうちゅうじん」という曲です。この曲とアニメーションがずっと心の中に残っていて、「UFO」を作っているときに、なぜか「むぎばたけ~」とつながったんです。特に理由はなくて、連想ゲームみたいなものなんだけど、子供のときに「むぎばたけ~」から感じていたちょっとした怖さや哀愁を表現できたんじゃないかなと。

──なるほど。「MANTRAL」には「ブルペン」という曲が収録されていて、ここにも野球からの影響を感じます。歪んだベースがカッコいいですね。

岡崎 これはもう、キャッチャーミットにひたすらストライクを投げ込むようなイメージの楽曲ですね(笑)。

雄貴 キャッチボールをしていると、「プロになる人は、この動きを何度も繰り返してきたんだな」と実感するんですよ。音楽は変化させていくことが大事ですけど、野球選手は同じ行為を繰り返しながら最適化していく。そのことに対するリスペクトを込めて作ったのが「ブルペン」です。この曲の話をしながらキャッチボールをしていた夕暮れを思い出しますね、「ブルペン」を聴くと。

一歩一歩踏みしめるように

──アルバムリリース後には全国ツアー「Galileo Galilei Tour 2024 "Tour M"」が開催されます。当然アルバム「MANSTER」「MANTRAL」が軸になると思いますが、どんなツアーになりそうですか?

雄貴 攻めたライブをやりたいですね。こう言うと僕らのファンは嫌な予感がするかもしれないけど(笑)、「今の僕らはこういう感じ」というところを見せたい。「Tour M」と銘打ってるし、セットリストはほぼ新しいアルバムの曲でいきたいと思ってます。

Galileo Galilei

Galileo Galilei

──2作合わせて28曲あるので、全部は演奏できないですよね?

雄貴 できないですね(笑)。でも、かなり長いライブになると思います。今セットリストを作ってるんですけど、おそらくGalileo Galilei史上、最長時間のライブになるんじゃないかな。これが“やり納め”というか、「MANSTER」「MANTRAL」の曲をガッツリやるライブはこの先もう観れないと思うので、ぜひ来てほしいですね。集大成的なものにするつもりはなく、「2枚同時にリリースして、これだけの曲数をこんな形でライブで見せられるんだ?」と衝撃を受けてほしいです。それと今回のライブは特別な演出を予定しているので、ぜひ会場に来てそれを体感してもらえたらうれしいです。実は「ファンタジスト」のMVと関係のある演出になっているので、MVを観てきてもらえたらより楽しめると思います!

──めちゃくちゃ期待してます! この4人のGalileo Galileiが始動して2年近く経って、こんなにも素晴らしいアルバムができて。この先のビジョンをどう描いていますか?

雄貴 考えていることはいくつかあります。「MANSTER」「MANTRAL」は自分たちが捉え切れないほどのものを詰め込めたアルバムだし、すごくいい作品になったと感じてるんですけど、この先の活動に関しては、シャカシャカ走るのをやめたいなと思っていて。一歩一歩踏みしめるように、自分たちの状況を感じられるような動きをしていきたいです。もう1つは、海外での活動。MVにコメントをくれる方の半分以上が、海外の人なんですよ。タイや中国でライブをしてみたいし……そういえば今年の7月に、和樹が日向文さんのライブのサポートで上海に行ったんですよ。それで向こうの熱量の高さをいろいろ教えてくれて。

和樹 すごかったです。

雄貴 僕らの「4匹のくじら」をカバーして、動画を作ってくれている海外のファンもいるし、中国のどこにGalileo Galileのファンがいるかマップを作ってくれている人もいて。ずっと好きでいてくれる海外のファンには何もしてあげられてないので、これから真心を込めて、いろいろ返していきたいと思ってます。

公演情報

Galileo Galilei Tour 2024 "Tour M"

  • 2024年9月27日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2024年10月12日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2024年10月13日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2024年10月19日(土)宮城県 仙台PIT
  • 2024年10月22日(火)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年10月23日(水)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2024年10月25日(金)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)

プロフィール

Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)

尾崎雄貴(Vo, G)、尾崎和樹(Dr)らを中心に2007年に北海道・稚内にて結成されたロックバンド。2008年の「閃光ライオット」でグランプリを獲得し、2010年にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビューを果たす。その後「青い栞」「サークルゲーム」などでヒットを記録。2016年に東京・日本武道館でのライブをもって活動に終止符を打つが、2022年10月に尾崎雄貴、尾崎和樹、岡崎真輝(B)、初期メンバーであった岩井郁人(G)の4人による新体制での活動再開を発表した。2023年5月に7年ぶりのニューアルバム「Bee and The Whales」を発表し、全国ツアーを実施。2024年9月にアルバム「MANSTER」「MANTRAL」を2枚同時リリースした。同月より7都市を巡るツアー「Tour M」を行う。