Crystal Lake、SHADOWS、NOISEMAKERによるプロジェクト・FUTURE FOUNDATIONの新作音源「TRINITY」が6月2日にリリースされる。
FUTURE FOUNDATIONは、ジャパンミュージックシステムの鈴木健太郎氏が発起人となって始動したプロジェクト。昨年6月に初の音源「DAWN」とこの曲のMVをiTunes Store限定でダウンロード販売し、その売り上げの一部を彼らの活動の場である全国のライブハウス9店舗に寄付した。約1年ぶりのリリースとなる「TRINITY」には、「DAWN」やミュージックビデオが公開されている「GETAWAY」などの計5曲が収録されている。
音楽ナタリーでは本作の発売を記念してFUTURE FOUNDATIONのメンバー全員にインタビュー。「TRINITY」の制作エピソードや収録曲の魅力を聞いた。
取材・文 / 矢島大地 撮影 / NORBERTO RUBEN
ハッピーで原始的な「TRINITY」
──昨年6月の初音源「DAWN」リリースの際、FUTURE FOUNDATIONの成り立ちから話を伺ったときは、このプロジェクトの意義や意志がふわっとしたまま始まったとおっしゃっていました。3バンドで音を鳴らしていくうちに、コロナ禍でこわばっていた気持ちがほぐれて、原始的な音楽の楽しさを再発見できたとも話していただいて(参照:FUTURE FOUNDATION「DAWN」インタビュー)。
Ryo(Crystal Lake / Vo) そうでしたね。
──そのキックオフを経て、今回は5曲がまとまった作品「TRINITY」をリリースされるわけですが、「DAWN」を作ってからFUTURE FOUNDATIONとしての可能性が見えてきたのか、プロジェクトとしてではなくバンドとして数多くの楽曲を作る展望が最初からあったのか。そのあたりの流れを教えてください。
Hiro(SHADOWS / Vo) 最初に「DAWN」を作ったときから、まずは4曲くらいまでいきたいねとプロデューサーの鈴木健太郎(ジャパンミュージックシステム)が言ってまして。なので、いっちょやるかと(笑)。そういう経緯ですね。
Kazuki(SHADOWS / G, Vo) 可能性を感じたのか?と聞いてくれましたけど、3バンド集まった形ではありつつ、ベースとドラムがYU-KIとUTA(ともにNOISEMAKER)の1人ずつしかいないので、意外と普通のバンドとして捉えられるんですよ。まあギターは4人もいるんだけど(笑)。でも、ギターはレコーディングで音を重ねるのが当たり前の楽器だから。3バンドを集めたという考え方でいくと大変だけど、もともとパート分けがハッキリしている編成だったので。そのあたりはラッキーなのかなんなのか、あくまでスタンダードなバンドとしての発想で最初からやれましたね。
──ただ、SHADOWSをやるときとは当然メンタリティが変わってくるわけですよね?
Kazuki 自分らのバンド単体だと、当然だけど責任が自分らだけにあるでしょ。でも3バンドで集まると受け皿が広がるからさ。責任感とか緊張感が少し軽くなるんだよね。それは各バンド間の信頼とも言えるんだろうけど、これだけ曲作れる人がたくさんいるからさ。自分で作って自分が責任を取るのとは違って、曲のジャッジを人に任せられるようになっていく。そうなると、ジャッジラインがみんなの「なんかいいね」という部分になっていくんだよね。で、その「なんかいいね」という楽しい空気がすげえ大事で。自分らのバンドではもっと厳しくなっちゃうし、あれはナシ、これはナシっていうのが自然と増えていっちゃうけど、FUTURE FOUNDATIONでなら、他人の意見によって、自分のバンドのときは切り捨てていた部分も拾い合える。それが一番の違いだったかな。
──実際、音楽的にも奔放になれた自分を感じられましたか。
Kazuki そうだね。各々が自由に鳴らした部分から拾って、最初は適当だったものが形を持って仕上がっていくのが面白かったね。完成なんか見えてないところから始まるというか。
YD(Crystal Lake / G) そうそう。やっていて、すげえ原始的だなと思いましたね。誰かがチャラッと鳴らしたのを「いいね!」と言い合う、本質的な音楽の楽しさというか。自分のバンドだけで突き詰めると専門的になって、やっぱり狙いにいっちゃうわけですよ。何がなんでも次のフェーズにいってやる、みたいなのが出てくる。だけどFUTURE FOUNDATIONでは縛りが一切なかったのがハッピーで原始的だなと思って。実際に完成した「TRINITY」を聴いても、各バンドが普段やってるボーカルの組み立てとは全然違うし、ミックスも違う。つまり3バンドを合体させたんじゃなく、あくまで1つのバンドをやれたんだなと思いますね。最初に「DAWN」を作ったときを思い返すと……人と人が集まることすら「どうなの?」と言われる時期に、自分らの生き方とかロックバンドの存在を示すためにやったところもあったわけだよね。ライブハウスへの支援も大事だったしさ。でも今回は使命感云々じゃなく、ただ集まって楽しむだけだった。そうなりゃ、自分らの好きなものを好きなように鳴らすだけだよね。楽器触る前にみんなでビール飲んで、グルーヴを高めて、あとは楽しむ(笑)。その結果、初期衝動的なところに帰れた感があったよね。
UTAが一番すごい
──3バンドのルーツとして根強い音楽、例えばオルタナティブメタルやラップメタル、メロディックハードコアなどが、レイドバックでもノスタルジーでもない形で気持ちよく混ざっている4曲だと感じて。それも今おっしゃった原始的なものの1つなんですか。
YU-KI(NOISEMAKER / B) 新しいことをやろうとしているわけじゃない4曲ですし、そこがピュアなところですよね。だから、まさに今言われたバックボーンが自然な形で出てきたというか。
HIDE(NOISEMAKER / G) 俺も、今回の4曲は懐かしい感じがしていて。今では3バンドとも独自のスタイルを持ってますけど、個々が昔から聴いていた音楽には共通しているところがある。それはまさに今言われた音楽たちだと思うんですね。そこから各々の道に派生して今があるわけですけど、音楽的な楽しさに立ち返れば立ち返るほど原点が自然に出てきた実感があって。今回は2ビートが入った曲も多いし、そのビート感は3バンドの最近の音楽性で言えば新鮮かもしれないんですけど、音楽そのもので考えたら新しいことをやっているわけではないじゃないですか。
──音楽としての発明ではない。
HIDE そうそう。だから、「そのギターの音カッコいいじゃん!」とか「そのシャウトカッコいいじゃん!」とか言い合いながらやっていたものって、自分で発見した気になっていただけで、実際は自分たちの原風景にあったものだと思うんですよ。1周なのか何周なのかわからないけど、Crystal Lakeみたいにチューニングを落とすのが普通のバンドだとしても、お互いに通じている音楽の中で自然と鳴らせたんじゃないかなって。
UTA(NOISEMAKER / Dr) まあ、2ビートは大変でしたけどね(笑)。
──NOISEMAKERの楽曲ではあまり聴けないビート感が多いですね(笑)。
UTA そうそう、普段は叩かないタイプの楽曲ばっかりだったから。「2ビート叩け!」「両足ドコドコしろ!」なんて言われたことないですもん(笑)。でもドラムのディレクションがTakahiro(SHADOWS)さんなので、逐一「これいける? いけない?」みたいな確認をしてもらって。それがだいたい深夜2時3時の話ですよ。それで朝の8時から「録り始めるよ」と言われるんです。いつ練習したらいいのかわかんねえっていうところから毎回始まるという(笑)。
Takahiro(SHADOWS / G, Vo) 最初にギター陣で曲の大枠を組み立てて、その大まかなスケッチをもとに具体的なリズムやビートにしていくんです。俺は大枠の設計を担当したんですけど、近くで見ていてUTAは本当にすごかったですよ。
YD 毎朝6時に絶対起きて練習してたもんね。俺、感動しちゃって。
Kazuki UTAが一番すごいよね。
一同 UTAが一番すごい!
UTA やめて!(笑)
──(笑)。キャリアのあるバンドとして、お互いに努力している場面を目の当たりにするのはどんな刺激になりますか。
YD いや、UTA以外誰も努力してないっす。適当です(笑)。誰もリフとか教えてないのに全部自分から吸収しちゃって、勝手に弾いてるだけだから。
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リスペクトと信頼が形になる