FUTURE FOUNDATION|Crystal Lake、SHADOWS、NOISEMAKERが未来へ向けて放つ光

Crystal Lake、SHADOWS、NOISEMAKERが“FUTURE FOUNDATION”と銘打ったプロジェクトを発足。本日8月6日23:00に新曲「DAWN」のミュージックビデオがYouTubeでプレミア公開され、明日7日にこのMV映像がiTunes Store限定でダウンロード販売される。

FUTURE FOUNDATIONは、JMSの鈴木健太郎氏が発起人となって始動したプロジェクト。鈴木氏の呼びかけにより、2000年代初頭から日本のラウドミュージックを牽引してきた3バンドが集い、「DAWN」の音源を6月12日にiTunes Store限定でダウンロード販売した。この曲の音源とMV映像の売り上げの一部は、彼らの活動の場である全国のライブハウス9店舗に寄付される。

音楽ナタリーではFUTURE FOUNDATIONの発足と「DAWN」の発売を記念して、Crystal Lake、SHADOWS、NOISEMAKERの座談会を実施。「DAWN」に込めた思いや、新型コロナウイルス感染拡大の影響によってライブハウスでの公演が軒並み延期・中止になった今の心境を語り合ってもらった。

取材・文 / 矢島大地 撮影 / 斎藤大嗣 撮影場所 / TSUTAYA O-EAST

音を出す楽しさを思い出せた

──この“FUTURE FOUNDATION”というプロジェクト名は、MARVELのコミック作品中に登場する団体から来ているんですか?

Kazuki(SHADOWS) いや……?

AG(NOISEMAKER) どうなんだろ?

YD(Crystal Lake) 誰も知らない(笑)。

──あれ。

Kazuki もともとはJMSの(鈴木)健太郎がこのプロジェクトをやろうと言ってくれて、名前を付けてくれたのね。で、俺たち自身は実際にやってみたあとに「そうだ、俺たちはこういうことをやりたかったんだな」って気付けた感じだったんだよ。最初はわりとふわっと始まったというか、俺らもふわっとした状態から進んでいったから。

──でも「DAWN」を聴くと、ふわっと感は一切ないんですけど。今おっしゃったのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響でライブに制限が生まれている現状やライブハウスに人が集まれない状況を受けて、バンド自身もどう動いたらいいかわからなかったという感覚の話でしょうか。

Kazuki そうだねえ……個人的には「ライブしてえな」っていう気持ちはあったものの、何かをしなきゃとか、何かの役に立つことをしなきゃとか、そういう気持ちは別になかったのね。家族と過ごして、釣りに行って、淡々と過ぎていく感じでさ。そんなときに連絡をもらって、3バンドでやろうって提案してもらって。人ともなかなか会いにくい状況が続いていたから、まず単純にみんなでやれることがうれしかったんだよね。

──プロジェクトの意味や役割より前に、まずは仲間との再会に高揚したと。

FUTURE FOUNDATION

Kazuki そうそう。正直それまでは、ライブもできねえし仕事はどうしようとか考えてたんだけど。でもCrystal LakeとNOISEMAKERと集まったときに、やっと気付いたんだよ。

YD 何かをやりたいとは思ってたし、それはSHADOWSもNOISEMAKERも一緒だったと思うんですよ。とはいえ、ライブハウスも自粛、バンドもライブを自粛っていう状況で失っていくものが多かったし、全員が同じく次を模索しているのもわかってたから。そこで鈴木さんが「一緒にやろうよ」っていうアクションを起こしてくれたのは大きいきっかけで。そりゃもう、二つ返事でOKしましたよね。

AG NOISEMAKERはちょうどレコーディングをしていて、だけどその作品のツアーも「KITAKAZE ROCK FES. 2020」(5月に北海道・札幌芸術の森 野外ステージで行われる予定だったNOISEMAKER主催のロックフェス)も中止になってしまった時期だったんですよ。知り合いのライブハウスも潰れていっていて……身近なところも含めてマズい状況になっていくのを見て、配信をやったり、チャリティTシャツを売ったりする動きをしてたんですね。そのタイミングで鈴木さんが声をかけてくれて、この3バンドでやれるなら最高だと思ったし、もはや誰かのためにやるとか何かを救いたいとか以上に、楽しそうだからやりたいっていう気持ちになれたんですよね。

YD ……でもさ、最初は「楽しい」って言っていいのかもわからなかったよね?

AG ああ、それはあったね。わかる。

YD 世の中のコロナの状況とか、ライブハウスが危機的な状況になっているとか、いろいろなことが難しくなっている中で「楽しい」と言うことすら不謹慎なのかな、みたいな感覚になってたよね。

──もちろん、最前線で戦われている医療従事者の方や、新型コロナウイルスに感染して大変な思いをした方、精神的にも経済的にも追い込まれていく方々もいるわけですからね。

Hiro(SHADOWS) そうだね。それもめっちゃわかる。だけど俺個人は、コロナで世の中が混乱しているときに、コロナ以上に人間が怖いと思ってしまったんだよね。コロナにかかった人に対して、ただの人間が糾弾するような状況が生まれててさ。ライブハウスだって仮想敵にされて。政治に関してもまったく効果的じゃないことばっかりで、社会全体の怒りがどんどん渦巻いていって、さらに人と人が攻撃し合うようになっていったしさ。楽しいって言えなかったのも、結局は社会の目を気にしてたところは大きいよね。

──わかります。コロナによって新しい問題が生まれたというより、人間同士の卑劣さ、政治への不信感、社会構造や資本主義経済の限界など含めて、見て見ぬ振りしてきた人間自身の問題が膿のように表出してきただけですよね。

Ryo(Crystal Lake) そうなんですよね。だからこそ、仲間と音を出すのが楽しいっていう感覚を見失ってたんだと思うし、それを思い出せたことは、3バンド共同じだったと思うんですよ。曲を作っていくのも、各々がものすごい集中力で取り組めていたと思いますし。

信頼できる3バンド

──実際に「DAWN」を聴いてみても、この3バンドが集まってこんなに光しかない曲になるんだ!?という驚きがありました。

Kazuki ははははは! そうだよね(笑)。

──メロディックハードコア感もメタルコア感もオルタナティブメタル感も要素として全部盛りなのに、最初から最後まで光が射していて。ここにいる全員が求めている楽しさや希望、その収益をライブハウスに還元するという意志の明確さ、全部が一直線で表現されていると思ったんですよ。

YD やっぱ楽しいよな!って気付いていった過程もそのまんま曲に出てますよね(笑)。

Kazuki そうだねえ。やっぱりさ、結局は信頼があるかどうかだなって思ったよね。もちろん他人にうつさないように気を付けているし予防し続けているけど、でもどんなに予防していても感染しちゃうときは感染するんだろうし、もしコロナを誰にうつされたとしても「あいつのせいだ」とか言い合うような3バンドじゃないからさ。社会の目がどうであれ、信頼できる人間がいるかどうかってところに戻ってくるんだなと思ったよ。

──逆に言えば、この人に新型コロナウイルスをうつされても憎むはずがない、と言えるだけの人間関係を築いてこられたのか、自分自身の生きてきた過程が問われるタイミングでもありますよね。

左からYD(Crystal Lake)、Kazuki(SHADOWS)、YU-KI(NOISEMAKER)。

Kazuki そういう意味で、この3バンドにおいては疑う余地が一切ないからね。これだけ長い間一緒にやってきて、一緒にツアーも回ってきてさ。何も疑う余地がないっていう部分がきっと楽しさにつながったんだろうし、もっと言えば、バンドを始めたときみたいな気持ちを思い出したんだよね。楽しいことがしたいっていう気持ちで鳴らしたものに、あとから意味がくっついてくる。最初からそれだけだったんだから。もちろん俺たちがお世話になってきたライブハウスへの還元も大きなモチベーションのひとつではあったけど、あくまで自分たちの楽しさのままにやれた喜びがデカかったかな。

YD 確かに。しかも、楽しいなっていう気持ちでやっていたら、今度は新たな発見があったり、新しいやり方を見つけたりもしたね。

──発見?

YD 最初は、この3バンドで曲を作るとは言っても収拾がつかなくなるんじゃないかっていう心配があったんですよ。だけど、さっき言ってもらったように3バンドの音楽的な特徴が出たうえで1つにまとまって。きっと、コロナによって物理的に会えないとか、ライブができない状況にならなかったら、こうしてほかのバンドと音楽を混ぜるという発想も生まれなかったと思うんですよ。新しいチャレンジとか、人と気持ちを合わせるとか……そこに対して踏み込むことができたのは、今だからこそだと思ったし。だって、どう動いたらいいんだろう?って葛藤していたときは、人と会うことや何かを合わせるということが一番できないことだったわけだから。

──でも、音楽なら混ぜられるものがありますからね。もっと言えば、それこそが芸術文化の力そのものでもある。

YD そうそう、そうなんですよね。