FUTURE FOUNDATIONインタビュー|新作に込められたCrystal Lake、SHADOWS、NOISEMAKERの初期衝動とオリジナリティ

俺らが失っていたのは遊び場所だった

──3バンドのプロジェクトというよりも1つのバンドとしてやれたと先ほどおっしゃいましたよね。それと同時に、奪われたロックバンドの居場所を作るために3バンドでユナイトしようという感覚があったんじゃないかと。「DAWN」の頃のライブハウスという居場所を守りたいという思いから、今作では自分たち自身が居場所になればいいという感覚に変化しているように感じて。

Kazuki ああ、その感覚はけっこう近いかもね。ホントに遊んでるみたいだったし、何よりも俺らが失っていたのは遊び場所だったんだよなって。それは個々のバンドでやるというより、バンドが集まるからこそ作れるシーンだったりしてさ。

YD 遊び場所って話で言うと、俺は自分のギター持ってくるのすらやめようと思ったもんね(笑)。誰かの借りて弾けばいいやって。

SHADOWS

Kazuki いざ借りてみたら、個々でチューニングはバラバラ。でも「このチューニング面白え!」と言いながら作るのも楽しかった。

──なるほど、楽器の話は目からウロコでした。各々のテクニックと異種の音楽スタイルが混ざって、面白い音楽になっていったというか。

Kazuki どっかのチューニングに合わせてやってるわけじゃなくて、みんながみんな自分らのチューニングでやって、しかも人の楽器をイジってるのが面白かったからね(笑)。それもあって、ルールブックのない音楽になったんだと思う。もちろんパートや役割はあるけど、みんなが遊びに来られる場所を自分たちで作った感覚に近かったんだろうな。そこで遊ぶのが音楽っていうかさ。だから言ってもらったように、遊び場所は自分らで作っていこうという意味合いがデカくなってきてる気がするね。やっぱりライブがなかなかできない状況になると、ロックバンドの存在感がどんどん失われていくじゃん。実際、今の状況は絶望的と言ってもいいくらいのところまで来ちゃってるわけで。この時代に俺がガキだったら、きっとロックバンドをやろうとは思わない。なんでライブハウスに行って歌っちゃダメなの? なんでライブハウスで暴れちゃいけないの? 抑えられる程度の衝動だったらこんなところ来ないよ? そんなふうに思っちゃうよね、きっと。でも、クソな状況だと言っているだけじゃ何も変わらないし、誰かを攻撃したって何も変わらないのもわかってる。じゃあ答えは1つで、クソじゃない場所を自分たちで作るしかないんだよね。

──それはまさに「GETAWAY」で歌われていることですよね。クソな世の中だからクソだと吐けばいいと思いがちな世の中にあって、クソなものを叩き壊したり攻撃したりしても同じことを繰り返すだけだと。じゃあここを脱出して、自分たちで新しい場所を作っちゃうことが何よりの反抗なんじゃないか?という感覚が歌になっている気がしました。

Ryo 「GETAWAY」のサビで「get away from nothing From this living hell(生き地獄から抜け出そう)」と歌っているのは、まさにそういうことで。この生き地獄みたいな世の中を抜け出して自分たちの場所を作ろうというのがドンズバのテーマなんですよね。で、それは全曲に共通したテーマでもあるんですよ。クソみたいな世の中でも、クソだと思っていても、なるべく汚い言葉を使わずにアティテュードを示したいと思っていたので。

──それはどうしてですか。

Ryo これはCrystal Lakeでもそうなんですけど、最後の最後まで信じ切って、それでも何を言っても通じない人たちに対しての最終通告が「Fuck You」なんですよ。だから、まだわかり合えると信じたい人たちに対しては絶対に中指を立てたくない。攻撃よりも、唾を吐きかけるよりも、自分はこう思っていて、あなたがどう思ってるのかを僕は知りたいんだと丁寧に伝えることが必要だと思うんです。それこそ言ってもらったように、クソなものを見て叩き潰したところで、今度は叩き潰したほうの人間が力を持って、また排他や分断が始まると思うんです。そのループを抜け出さないと何も始まらないよという気持ちが強いんですよね。

AG コロナによって人と人の距離感が一気に変わったわけですけど、そこで露見した分断……右と左、人種の問題もそう。ずっと存在してきたはずの問題に右往左往して、いまだに人は傷付け合ってるわけですよね。だとすれば、この状況と闘おうと人を扇動するよりも、「お前はどうする?」という提示こそが必要だと思ったんです。闘ったところで、人を扇動して集団を作ったところで、また同じ傷付け合いが起こるとわかっちゃったわけだから。

Hiro 個人的には、ウイルス以上に人間が怖いとわかってしまった1年だったから。クソな傷付け合いを引き起こしてる人間自身がさらに攻撃的な言葉を使い続けたら、そりゃ戦争になるよね。1人ひとりの考え方があるわけだから、ひとまとめにクソだと吐き捨てることこそが一番ヤバいことなんだよね。手を取り合うなんてのは難しいし絵空事かもしれないけど、できる限りサポートの心で進めたらいいよね。

──だからメッセージソングというよりも、アティテュードと居場所だけを示す歌ですよね。そこが気持ちいいし、潔いと思います。

Kazuki もちろんいろんなことを考えたり、言いたいことがあったりするよ。だけどそれがあったうえで、外からの見え方が「あの人たちカッコいいね」だけで終わるのが理想なの(笑)。音楽カッコいい、ロックバンドはカッコいいと思ってくれれば、そこから始まるものがたくさんあるんだよ。俺はガキの頃からいろんなことが気に食わなかったんだけど……それでも、音楽だけが最高だと思って続けていたら、こうやって友達と仲間が増えたんだよ。それがまた強みになって、喧嘩売ってるだけじゃ何も変わらねえんだなということを本質的に理解できるようになったんだよね。だから、なんかカッコいいという理由だけでこの音楽に触れてくれる人が増えたらいいよね。ま、こんな話するなんて大人になりすぎちゃったかな?

──ふふふ。いい大人がキャッキャしてるから最高なんですよ。

Kazuki はははは(笑)。レベルが高いまま子供の遊びをするのが一番最強だからね。そこでまた笑えたり、新しい感覚が生まれたり。まだまだやれるよなって思わせてくれるのは、やっぱり一緒に遊んでくれる仲間なんだよ。それが俺らにとっての希望だよね。

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