音楽ナタリー Power Push - フルカワユタカ
無限大ダンスタイム復活! “ドーパンの方法論”で作る新曲のすごさ
後ろ向きな気持ちはまったくない
──実際にドーパンの曲をライブでやってみて、反応はどうでしたか?
お客さんの盛り上がりにバンドメンバーがびっくりしてましたね。「この人、こんなに人気あるんだ?」って感じで(笑)。フロアがもう1曲目からすごいし、ずっとすごいんですよ。
──解散したバンドの曲をやることに対してネガティブな意見はありませんでしたか?
なんか言う人はいましたけど。自分の中には後ろ向きな気持ちはまったくないです。僕の曲ですからね。
──なるほど。
僕のって言ったら語弊がありますけど、ドーパンの曲は僕の曲でもあるんで。
──新しく書いたソロ曲でも同じくらい盛り上がってほしいという気持ちは?
それもあんまりないんですよねえ。スタッフには「今やってるソロ曲をここに混ぜて、全部同じぐらい盛り上がるといいですよね」とか言われるんですけど、なんかそういうのも別にいいじゃんって(笑)。
──あははは(笑)。
まあコアなファンの人たちは違うメンバーとドーパンの曲をやってるのがイヤだったりするのかもしれない。曲それぞれに思い出があるだろうし、自分も好きな音楽に対してはそうだから気持ちはわかるんです。でも僕がやりたいんだから、それはしょうがないですよね。
──ファンの心情は理解しつつ、ということですね。
だからこそドーパンの曲をやるときには、素晴らしい感動が起こるようにしなきゃっていうのは思ってますよ。にぎやかしのためだけにやって、ガッカリさせるような演奏じゃ絶対ダメだし、そこは自分ではすごく意識してますね。
この曲はほかの人たちには作れない
──そうした経緯を経て、今回ミニアルバム「I don't wanna dance」が完成したわけですが、ドーパン曲を解禁したことが新作に与えた影響は?
もちろんあります。特に1曲目はそういうものにしようと思って作ってますからね。
──まさにドーパン色全開のナンバーで、正直ここまでとは思いませんでした。
この1曲目を聴いてほしくてアルバム出したようなもんなんで(笑)。英語で四つ打ちで、ハードなリズムとギターが鳴ってて。作曲のスタイルとか楽曲の方法論とかは「MIRACLE」や「Hi-Fi」の頃と同じです。今あの方法論で作ったらどうなるかなっていう。
──でもフルカワさん自身、ドーパン後期は「MIRACLE」みたいなわかりやすく盛り上がる楽曲に抵抗があって、それとは違うスタイルを目指していたわけですよね。
そうですそうです。
──じゃあ今になって、改めてこうした曲を作れるのはなぜなんでしょう?
うーん……作ってみて思いましたけど、僕の作るこういう曲はやっぱりすごいんですよ。圧倒的にエモーショナルだし、ほかの人たちにはたぶん作れないです。四つ打ちのダンスロックみたいなものはいまだにすごく流行ってて、なんなら超スタンダードになってるんですよね? フェスとかでも四つ打ちのリズムがドンドン鳴ってる。でも僕たちみたいなのは1バンドもいないなって思うんですよね。
──そういう周りの状況みたいなものも意識しますか?
いや、意識するもしないも、やってることが全然違いますからね。偉そうに言ってるわけじゃなくて、たぶん彼らもそう思ってるだろうし。例えばサカナクションとかも四つ打ちのロックだけど、彼らはすごく文学的じゃないですか。でも僕らはもっと幾何学的に音楽をやってたから。
──なるほど。
だから今の若いバンドなんて僕からするともう異次元ですよ。たまたまバスドラムが1小節に4回鳴ってるってとこが一緒なだけで、全然違うものだと思ってます。
強くて異様な音楽をやりたい
──今はドーパンの楽曲を解禁して、ドーパン的な路線の新曲を発表して、いわば一番得意なことをやってる状況ですよね。「これで売れなきゃまずい」みたいなプレッシャーはありませんか?
うーん、でもドーパンじゃないですからね。これで背水の陣みたいな気持ちはまったくないです。
──じゃあ売れなくてもいい?
いやいや、そりゃあ売れたいですよ(笑)。今も武道館でやりたいし、東京ドームだって本気でやりたいと思ってます。でもそれはずっと思ってることだし、この曲だからっていうのは関係ないかな。
──今後はこの「I don’t wanna dance」みたいな路線でいくんでしょうか?
もしかしたらそうかもしれないです。少なくとも英語で歌おうとは思ってるし、歌詞じゃなくて音にメッセージや哲学を乗せていくやり方にまた戻ろうとしてるので。で、それと同時に「YELLOW FUNK」からずっとやってる研究も続けていきますよ。ナチュラルに強い音が鳴らせるように。
──自分が作りたい音は見えてるんですね。
はい、でも今それを説明しようとしても、僕自身そこに届いてないうちは言い訳と嘘になっちゃうから。僕が納得する音が作れるまで説明は不可能なんです。だからいつかものすごい人たちの前でスポットライト浴びて僕が咆哮してるときに、「あ、これだったんだ、彼が言いたかったのは」ってわかってもらえる日が来ればいいなと思ってがんばってますけど。
──じゃあ今はそこに至る途中の段階ということ?
ずっと途中です。まだ全然未熟だし、全部未完成なんですよ。だけど最後にとんでもない曲が1つできたらいいと思っていつもやってるんです。なんていうんですかね、とにかく強い音楽をやりたくて。しかも異様じゃないといけない。音楽やってる人は山ほどいて、才能ある人もいっぱいいるんだから。普通のものなんて必要ないんです。
- ニューアルバム「I don't wanna dance」 / 2015年11月4日発売 / 2160円 / Niw! Records / NIW-113
- ニューアルバム「I don't wanna dance」
収録曲
- I don't wanna dance
- deep sleeper
- slow motion
- 君は神様だったから
- in my dreams
- LIVE at 渋谷WWW 0517(bonus track)
ライブ情報
- 無限大ダンスタイム WEST
- 2015年12月2日(水)大阪府 梅田Shangri-La
- 無限大ダンスタイム EAST
- 2015年12月4日(金)東京都 LIQUIDROOM
サポートメンバー
村田シゲ(B / □□□, CUBISMO GRAFICO FIVE, Circle Darko)
新井弘毅(G / ex. serial TV drama, alice in underground)
カディオ(Dr / QUATTRO)
オフィシャルサイト最終先行抽選予約
2015年11月15日(日)18:00締切
一般発売日:2015年11月21日(土)
フルカワユタカ
1997年にDOPING PANDAを結成。2000年に初の音源となるシングル「Dream is not over」をリリースし、2005年にアルバム「High Fidelity」でメジャーデビューを果たす。個性的なダンスロックサウンドで多くの音楽ファンの注目を集め、4枚のアルバムをリリースして全国各地の夏フェスを席巻した。2012年4月に開催したワンマンライブを最後に解散し、以後はソロ活動を本格始動。2013年11月に初のソロアルバム「emotion」をリリースした。2015年10月に約2年ぶりの音源となるミニアルバム「I don't wanna dance」を発表し、12月には大阪と東京でワンマンライブ「無限大ダンスタイム」を開催する。