音楽ナタリー Power Push - フルカワユタカ

無限大ダンスタイム復活! “ドーパンの方法論”で作る新曲のすごさ

フルカワユタカがソロとして2枚目の作品「I don't wanna dance」を完成させた。なんとタイトル曲は、DOPING PANDAを思わせる四つ打ち英語詞のダンスロックナンバーだ。

この春のライブからバンド時代の楽曲を解禁し、「無限大ダンスタイム」と呼ばれるアッパーなコーナーも復活させたフルカワは、いったいどこに向かおうとしているのか。ナタリーでは4年半ぶりとなるインタビューで、本人にじっくり話を聞いた。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 佐藤類 ライブ撮影 / 中野修也

解散したくなかった

──DOPING PANDAの解散ライブから早いもので3年半が経ちました。まずは当時のことから伺いたいんですが、解散を決めた際の心境はどんなものだったんでしょうか?

フルカワユタカ

うーん、とにかく覚えてるのは、解散するのがイヤだったってことですね。

──そうなんですか?

イヤでしたね。でも解散せざるを得なくなっていくんです。全員、次の目標がなくなってしまって。

──どういうことでしょう?

バンドとして目標を持って続けていくには、やっぱりそれなりの仕組みが必要なんですよね。事務所やレコード会社の協力とか、ビジネス的な成功とかも全部含めて。それによってできあがる船があるんですけど、その船がどうも進まないぞっていうことがだんだんわかってきた。それで1人ひとりモチベーションが下がっていってしまったんです。

──そうだったんですね。

だから僕が号令かけてやめたというよりも、「ああ、もうこれは続かないんだな」っていう状況になってしまって。だから自分はやめたくなかったっていうのだけは間違いないです。

──じゃあDOPING PANDAでやり残したこともありますか?

はい、まだ全然途中だったんで。「YELLOW FUNK」(2011年4月リリース)でチャレンジしたことを、もっとちゃんと形にするチャンスが欲しかった。「YELLOW FUNK」の楽曲は自分の理想にすごく近付けてたと思うし、20代からずっと洋楽を追っかけて、洋楽に追いつこうと思ってDOPING PANDAをやってたけど、あの作品でそこじゃないところに行けた気がしてたんですよ。ちゃんとオリジナリティがある、ドーパンにしか作れない音楽にたどり着きかけた、と思えたところだったんですよね。

──当時のフルカワさんはそれまでとは違う、新しい音楽性を模索していましたよね。

あの頃はほんとに苦しかったですね。「YELLOW FUNK」では自分でミックスをやることにしたけど試行錯誤ばかりで、どうにも前に進まない感じがあって。それに3.11があって発売が1カ月遅れたんです。震災のせいだけじゃないんですけど、やっぱりキツかったし、ツアーも惨憺たる結果で、セールスも落ちて。次に向かっていこうって雰囲気がどんどんしぼんでいったっていう。

大失敗だったZeppツアー

──そもそもDOPING PANDAの後期に、フルカワさんが激しい変化を求めていたのはなぜだったんでしょうか?

あの当時「decadence」(2009年6月リリース)までの自分たちがニセモノな感じがしてたんですよね。

──ニセモノというのは?

やっぱり生まれながらの才能を持ってるナチュラルボーンの人にはかなわないんです。まるで革新的じゃない、焼き直しのような音楽をやってたとしても、ナチュラルボーンの人はどんどん先に進んでいってしまう。そういう人たちに蹴落とされていくのがつらかった。自分たちはこんなに新しいことをやって、真摯に音楽を作ろうとしてるのに、なんで彼らに圧倒されちゃうんだろうって。

──それを「decadence」のときに感じた?

フルカワユタカ

あのときのZeppツアーが大失敗だったんですよ。こんなことを赤裸々に言うべきじゃないのかもしれないけど。自分たちは方法論とか仕掛けで勝ってきた部分があったから、やっぱり行き詰まっちゃったんですね。そこでナチュラルに強くならなきゃいけないって思いました。

──バンドとしての強度を上げていくということでしょうか?

自分たちの実力を鍛えて、もう1回ちゃんとやらなきゃいけないって思って作ったのが「YELLOW FUNK」であり、あの当時のツアーだったんです。照明も削ぎ落として、同期も減らして、なるべくフィジカルにやるっていうところを追求してた。そこを乗り越えれば、強くて負けないDOPING PANDAになれる気がしてたんです。ただそれをやれるほどの時間はもうなかったというか。

──なるほど。

お客さんだって、お金払ってそんな実験に付き合わされるのもイヤだろうし。そこがシビアに結果となって戻ってきてしまった。

──本物になるために新しく始めようとした矢先だったのに、バンド解散によって……。

終わっちゃうんですよね。

ニューアルバム「I don't wanna dance」 / 2015年11月4日発売 / 2160円 / Niw! Records / NIW-113
ニューアルバム「I don't wanna dance」
収録曲
  1. I don't wanna dance
  2. deep sleeper
  3. slow motion
  4. 君は神様だったから
  5. in my dreams
  6. LIVE at 渋谷WWW 0517(bonus track)
ライブ情報
無限大ダンスタイム WEST
2015年12月2日(水)大阪府 梅田Shangri-La
無限大ダンスタイム EAST
2015年12月4日(金)東京都 LIQUIDROOM

サポートメンバー

村田シゲ(B / □□□, CUBISMO GRAFICO FIVE, Circle Darko)
新井弘毅(G / ex. serial TV drama, alice in underground)
カディオ(Dr / QUATTRO)

オフィシャルサイト最終先行抽選予約
2015年11月15日(日)18:00締切

一般発売日:2015年11月21日(土)

フルカワユタカ

フルカワユタカ

1997年にDOPING PANDAを結成。2000年に初の音源となるシングル「Dream is not over」をリリースし、2005年にアルバム「High Fidelity」でメジャーデビューを果たす。個性的なダンスロックサウンドで多くの音楽ファンの注目を集め、4枚のアルバムをリリースして全国各地の夏フェスを席巻した。2012年4月に開催したワンマンライブを最後に解散し、以後はソロ活動を本格始動。2013年11月に初のソロアルバム「emotion」をリリースした。2015年10月に約2年ぶりの音源となるミニアルバム「I don't wanna dance」を発表し、12月には大阪と東京でワンマンライブ「無限大ダンスタイム」を開催する。