降幡愛|令和の冬に流れる本気の80's

ブレーキは一切踏まない

──今回リリースされた2ndミニアルバム「メイクアップ」は、前作以上に濃い1枚になりましたね。

はい。めちゃくちゃ濃いです(笑)。ひと口に80'sと言っても、王道な曲からちょっとコアな方向に寄った曲までさまざまあって。なかなかパンチのある6曲を収録することができたなって思います。前作同様、どれもシングルカットできるクオリティの曲になっています。

──制作はデビューミニアルバムのリリース後にスタートしたんですか?

いや、曲は常に作っている感じなんですよ。デビューミニアルバムを含めた流れの中でできていった曲たちというか。ただ、こんなに早く2枚目をリリースすることになるとは本間さんも私も思ってなかったんですけど(笑)。

──ソロプロジェクトのすべての曲は詞先で制作されているんですよね。ということは、降幡さんから歌詞がどんどん生まれ続けているということでもあって。

そうですね(笑)。常に気になったことをメモするようにはしていますし、本間さんとお話しする中でパッとひらめいたりもするので、それを元に歌詞をどんどん書いていますね。本間さんはお忙しいので、「作業が追いつかない!」ってよくおっしゃってますけど(笑)。

──本作の収録曲の歌詞に何か傾向ってあります?

デビューミニアルバムでは男女のドロドロした関係を書いていった感じだったんですよ。なので、2ndに関しては「キラキラした80'sを意識した歌詞を書いてほしい」っていうリクエストをいただいて。でも、結局書けなかったんです(笑)。

──あははは(笑)。そうですよね。なんなら前作以上にドロドロしてますから。

ドロドロ感がより強くなっちゃったっていう(笑)。一応キラキラした歌詞を書こうとは努力したんですけど、最終的に「やっぱり人生はうまくいかないものだよな」という着地の仕方になってしまうんですよね。

──そこがすごく面白いですよね。今のJ-POPの傾向って、ネガティブな感情を描いたとしても最終的にはポジティブに持っていく曲が多いと思うんですよ。でも降幡さんの場合は真逆というか。

最後にはどん底に行く感じですから(笑)。そこに関してブレーキは一切踏まないんですよね。それはそれでいいんじゃないかっていう思いがあるので。音楽はポジティブであるべきという意見もあるとは思うんですけど、私はそれを綺麗事のように感じてしまうところもあったりして。裏にあるドロドロした部分までを描くのが80'sのいいところだとも思うし。

──楽曲を通して聴き手を応援するとか、わかりやすく何かをメッセージしたいという思いはあまりないですか?

ソロでやる音楽に関しては、特に何かを訴えたり、私はこういう人間ですとかっていうことを歌いたいわけではないんですよね。妄想することが好きな私が作った物語をそのまま楽しんでね、という感じだと思います。もちろん聴き手の方が自由に受け取っていただければそれでいいんですけど。

降幡愛の悪い部分が出た曲

──では、収録曲について伺っていきましょう。1曲目はリードになっている「パープルアイシャドウ」ですね。

私は雨が嫌いなので、そういう女の人の物語を作ろうと思って歌詞を書き始めました。曲としてけっこう前にできあがってはいたんですけど、梅雨時期にリリースできたらいいなと思っていたのでちょっと寝かせておいたんですよね。そうしたらまさかの冬リリースになってしまったという(笑)。ちなみに仮タイトルは「ウェットモーニング」でした。

──サウンド的にはスラップベースが印象的ですよね。

ドンピシャに好きな音に仕上げていただきましたね。すごくカッコいい。切ないイントロや、サビ前の“ジャッジャ!”っていう決めとか、もう超絶カッコいいところばかりで。やっぱり80'sは決めが大事ですね。

──この曲はMVも最高ですね。トレンディドラマを思わせるドラマパートがたっぷり盛り込まれていて。

振り切ってますよね(笑)。画面サイズが4:3になってたり、ちょっと画質が粗かったり、監督さんのこだわりが随所に込められていて。めちゃくちゃ最高だと思いました。ドラマパートの役者さんもね、すごくクサい芝居をしてくださって。ホントに素敵でした。

──で、ちょっと飛ばしてラストの6曲目「真冬のシアーマインド」について先に聞きたいんですけど。こちらはキラキラした雰囲気のウインターソングになっています。

自分で言うのもなんですけど、冬の定番曲になっても全然おかしくない仕上がりになったと思いますね。この曲では、本間さんに歌詞をお渡しした段階ですぐにメロディができたっておっしゃっていただけたんですよ。そういうことは初めてだったので、自分としてはめちゃくちゃうれしかったです。

──スキー場を舞台にしたキラキラ系ラブソングにも聴こえますが……。

そう受け取ってもらっても全然大丈夫です。ただ、女性の純粋な一目惚れ的心情を描いていると思いきや、実は……。表面だけではなく、いろんな側面も想像して聴いていただきたいです。ある意味、降幡愛の悪い部分がけっこう出た曲だと思います(笑)。

アーティスト・降幡愛の歌がここで1つ完成した

──本作には残り4曲が収録されていますが、ここからがいよいよ本番と言いますか。よりディープで過激な楽曲が登場します。

あはは(笑)。確かに「パープルアイシャドウ」と「真冬のシアーマインド」は一般の方も受け入れやすい2曲ですもんね。

──2曲目に収録されているのは、未成年の男性が年上の女性への愛を歌う「RUMIKO」。降幡さんの敬愛するマンガ家さんが想起されるタイトルですが。

曲の内容的にちょっと言いづらいですけど、勝手にお借りしました(笑)。このRUMIKOさんは「パープルアイシャドウ」の主人公の方なんですよ。「パープルアイシャドウ」の中で「ごめんなさいね」と言われている年下の彼が歌っている設定なので、ある意味、アンサーソング的な感じになってます。「RUMIKO、行っちゃうのかよ。オレを見てよ!」っていう。なので、この曲の歌詞に出てくる「濡れたアイシャドウ」の色はパープルです。

──なるほど! ワードでもしっかりリンクしていくという。

はい。これも「Moonrise」をリリースした頃にはすでにあった曲なんですけど、歌詞に出てくる「RUMIKO」のフレーズがコーラスっぽく使われているのが自分としてはすごく面白かったですね。歌詞を書いている段階ではアニメ「みゆき」の主題歌のように、名前をしっかり歌うイメージがあったので。本間さんが違った印象でメロディを付けてくださったのが新鮮でした。この曲の歌はミニアルバムの中で最後にレコーディングしたので、自分的にはアーティスト・降幡愛の歌がここで1つ完成した感じがしましたね。RUMIKOへの思いを艶っぽく歌えたと思います。