ファンキー加藤が4枚目のソロアルバム「F」を4月1日にリリースする。
アルバムとしては2018年発売の「今日の詩」から2年ぶりとなる本作には、リスナーの期待に全力で応えるファンキー加藤印の王道応援ソングはもちろん、地元・八王子での懐かしい仲間たちとの思い出を歌った「八王子キッド」、本格的なヒップホップチューン「デ・マ」、あまりにも率直すぎるフレーズが口をついて出てしまったという「DIVE」など、彩り豊かな全11曲が収められた。
この充実作がいかにして生まれたのか、制作を終えたばかりの加藤にじっくりと語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 斎藤大嗣
矢面に立ち続けなきゃいけない
──2019年はリリースがなかったですよね。まったく作品を出さない年って、デビュー以来なかったんじゃないですか?
そうですね。
──この期間中は何をしていたんです?
2018年に始まったツアーが1月で終わって、そこからちょっとお休みをいただいて、夏はイベントとかフェスもあって……。
──「OUR MIC FES」(※2019年8月に開催されたファンキー加藤主催のライブイベント)もありましたしね。
「OUR MIC FES」が大きかったかもしれないです。フェスを主催するのって、こんなにも労力が必要なのかと。その分成し遂げた充実感はとても大きかったし、刺激にもなりました。出てくれたアーティストはほとんど後輩だったんですけど、純粋に上だけを見て「不安はあるけど迷いはない」っていう姿勢やその目つきから、教わった部分はありましたよね。
──あと、加藤さんはけっこうテレビ番組にも出られてました。
再び矢面に立ち続けなきゃいけない気持ちだったのかな。ツアーで全国のファンの皆さんと会うことで自信も取り戻せたし、引っ込んでばっかじゃダメだなって。ケツに火が付いた、みたいなところはあったかもしれないです。
アルバムの中にある「希望のWooh」を見たかった
──ニューアルバム「F」には、2018年リリースのシングル「希望のWooh」から表題曲と「40」の2曲が収録されています。制作はこの2曲を軸に肉付けしていこう、みたいな感じで始まったんでしょうか。
そうですね。ただ、「こいつらがちゃんと収まるように」とかはあまり深く考えずに。
──この2曲はリリースからだいぶ経ってますし、アルバムに入れないっていう選択肢はなかったですか?
収録しないっていう発想はまったくなかったですね。アルバムの中にある「希望のWooh」を見てみたくて。
──新曲はどれから作り始めたんでしょう。
わりと同時にいろんな曲を制作していきました。まず最初に、アルバム全体の大まかな枠組みを考えるんですよ。スローテンポな曲が何曲あって、アップテンポの曲があって、ちょっと面白い曲があって、とか。
──その青写真を踏まえたうえで1曲1曲、加藤さんがデモ曲を用意した?
いや、ゼロからクリエイターのスタジオで一緒に作ることが多いです。1人で楽曲を作れる環境がないし、弾き語りの簡単なデモを作ったこともないんですよ。
──それはかなり意外です。
FUNKY MONKEY BABYS時代はモン吉が作ったメロディに俺が詞を乗せるスタイルだったし、自分の中では8:2くらいで詞に重きを置いていて。だからメロディをゼロから作りたいって気持ちは今もさほど強くないんです。
楽曲制作の筋肉は衰えてない
──アルバムを作っていく中で、「これで全体の方向性が見えた」と思えた曲はありますか?
「今だけを信じて」かな。この曲はずっとライブのサポートもやってくれている音楽プロデューサーの田中隼人(agehasprings)と一緒に作ったんですけど、スタジオに入った初日でほとんどの骨組みができあがったんですよ。ディレクターの反応もすごくよくて、俺も「ちゃんとファンキー加藤節のある、ライブ映えする前向きな曲ができたな」って思えた。
──人々がファンキー加藤に期待する要素しかない、みたいな曲ですよね。
シングル「希望のWooh」発表からちょっとブランクがあったんで正直心配してたんですけど、これができたことで一気にスイッチが入って、目指すべき方向性が定まりました。「やっぱり俺、ここなんだ」っていう。
──ずっと使ってなかった筋肉だけど、動かしてみたらちゃんと動いた。
そうそう。「楽曲制作の筋肉は衰えてないな」と確信できたのがこの曲でした。
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