ナタリー PowerPush - FUNKIST

暗中模索を経て完成 希望を歌う「7人の」アルバム

次の世代に渡すバトンはこのままでいいのか

──陽子さんのことと同じくらい、昨年の震災は本作に大きく影響を及ぼしたのだろうと思いますが、「ROOTS」という曲はそこで改めて発露した感情や、世の中に対する問題提起を最もダイレクトに描き出していますよね。

強烈ですよね。自分たちでも「大丈夫なのか!?」っていう思いはありましたけど、今この時代にこれを歌わなかったらFUNKISTじゃねえだろっていう気持ちもあって、ギリギリのところを突くメッセージを書きました。

──そこで一番伝えたかったことは?

例えば原発はいいのか悪いのか、もっと広い意味で言えば戦争はいいのか悪いのか、そういうことへの答えをメッセージにしたかったわけじゃないんですよ。だって答えはそれこそ幾万通りもあるし、そこにたどりつくための道筋はそれ以上にあるわけだから。じゃ何を伝えたいかって言うと、今の大人が次の世代に渡すバトンはこのままでいいのかっていうことで。そこに対しての問題提起をしたかったんです。で、そういうメッセージを発信して受け取ってもらうためには、高いクオリティのサウンドによる説得力が絶対に必要だと思ったので、人間が奏でてきた音楽の歴史をたどる組曲みたいな構成にしたんですよね。そういうサウンドが作れたから逆にあそこまで尖ったメッセージを乗せれたっていうところもあったし。

──そこから次の曲「Hello」へつながっていく流れがテーマ的にも絶妙だと思いました。これは次の世代である西郷さんの娘さんに向けた曲なんですよね。

はい。「ROOTS」と「Hello」は僕の中ではセットだっていうイメージなんです。震災や陽子ちゃんのことで命には限りがあることがよくわかったので、この2曲はその覚悟を持って書きました。伝えたいことはちゃんと伝えようって。この曲はストリングスを入れたりコーラスを入れたり、MAN WITH A MISSIONのDJ Santa Monicaにスクラッチを入れてもらったり、めちゃくちゃ予算をかけました。頭に入ってるのは僕の娘の声ですし(笑)。

──若干の親バカっぷりが(笑)。

ですね。アハハハ。

希望を見せられないんだったら音楽をやるべきじゃない

──あと、メンバーである宮田泰治さん(G)に向けて書かれた「6才のうた」という曲も収録されています。これはどのようにして生まれたんですか?

インタビュー風景

宮田とは6歳の頃からの幼なじみなんですけど、陽子ちゃんのことがあったときに何も言ってやれなかったんですよ。あいつと陽子ちゃんは夫婦だったから、世界で一番愛してる人がいなくなってしまったわけで。そんなときに何も言えない僕ってどうなんだろうってずっと思ってたので、じゃ曲にすることで僕らがいるからなっていうことが届いたらいいなと思って。歌詞を一斉メールでしれーっと送ったら宮田から「お、お前……」っていう返信が来ましたね(笑)。

──西郷さんと宮田さんの関係がよくわかる素敵な曲だと思います。ただ、その後に控える「秘密戦隊FUNKIST7のテーマ」が(笑)。

アハハハ。台無し感ハンパないっすよね(笑)。まあこれはアルバムではおなじみのクールメンズの曲で、チープなトラックはオガチ(Per)が作ってくれました。

──遊ぶところは遊びつくす姿勢もFUNKISTらしいです。

そうなんでよね。ちょっと照れくさい「6才のうた」の後、余韻ぶち壊しでバカなことやれるっていうのが僕ららしさでもあるんですよ。宮田に「お前らありがとうな」って言わせる隙もなくあのくだらないイントロが始まるっていう(笑)。

──本作はさまざまな曲を通して希望という光がはっきりと見える最高のアルバムだと思います。

ライブに関してもそうなんですけど、希望を見せられないんだったら音楽をやるべきじゃないと思うんですよ、僕らは。どんなに厳しい環境であっても、音楽をやることが僕らの希望でもあるし。これを聴いた人たちが、これは自分の歌だ、これは自分のことを書いてくれたのかなって思ってくれたり、楽しいだけの世界じゃないけど明日もがんばってみようかなって思ってくれたら最高にうれしいですね。子供っぽい言葉ですけど、生きるって素晴らしいってみんなに思ってもらいたいから。今回はそういう希望をちゃんと示せたアルバムを作れたと思ってますね。

ニューアルバム「7」 / 2012年4月11日発売 / 2800円(税込) / ポニーキャニオン / PCCA-03574

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CD収録曲
  1. CRAQUE
  2. SHINE
  3. Dance in the world
  4. ROOTS
  5. Hello
  6. 絆 (Album Version)
  7. 7
  8. ZAN
  9. ALL TOGETHER
  10. 6才のうた
  11. 秘密戦隊FUNKIST7のテーマ
  12. Whose life is this
  13. 1/6900000000
  14. Waiting for your call
  15. NEW DAYS
FUNKIST(ふぁんきすと)

染谷西郷(Vo)、宮田泰治(G)、ヨシロウ(G)、JOTARO(B)、オガチ(Per)、春日井陽子(Fl)、住職(Dr)による7人組バンド。2001年結成以来、年間100本を越えるライブで、多くのファンの心を掴んできた。インディーズではアルバムを3枚、シングルを4枚のほか、染谷の母親の故郷である南アフリカでのツアードキュメンタリーDVDをリリース。2008年7月にシングル「my girl」でメジャーデビューを果たした。2009年2月にはメジャー1stアルバム「SUNRISE 7」を発売。同年4月には2度目となる南アフリカツアーも実施された。しかし、7月から春日井が体調不良のためバンド活動から離脱。その後は6人で活動を続けてきたが、2011年10月に春日井が逝去。バンドはそのまま残された6人でバンド活動を継続している。2012年2月に、春日井もレコーディングに参加した7人で最後のシングル「SHINE」を発表。3月には乙武洋匡との東日本復興支援コラボシングル「絆」、4月には春日井が残したテイクも使用したニューアルバム「7」を立て続けにリリースした。