ナタリー PowerPush - FUNKIST

暗中模索を経て完成 希望を歌う「7人の」アルバム

メンバーが楽曲を自分のものとして捉えてくれるようになった

──メンバー全員が同じ方向を見て臨めたというレコーディングの様子をもう少し教えてください。

今回は、震災や陽子ちゃんのことがあったからなのか、メンバーみんなが楽曲を自分のものとして、自分のメッセージとして捉えてくれるようになったのをすごく感じたんです。今までは染谷西郷の歌を後押しするみたいな役割でバンドがいたと思うんですけど、例えばヨシロウ(G)だったら「これは俺の曲だ。俺がこれを伝えるんだ」っていう気持ちでギターを弾いてくれてたんですよね。ほかのメンバーもみんなそういう気持ちで演奏してくれていて。歌詞に関しても「ここはこういう気持ちでいいの?」とか「ここがこういう感情なら俺はこういうアプローチで演奏したい」とか、すごくいろんなことを言ってきてくれるようになったんです。だから音楽的な部分ではFUNKISTらしくっていう部分を考えずとも、みんながちゃんと同じイメージを思い描いてレコーディングできていたことで、自然とベストなものになっていった感じでしたね。

──最高な状態ですね。しかも今回のアルバムには驚くことに陽子さんのフルートの音色もたくさん詰まっていて。

そうなんですよ。15曲中10曲に陽子ちゃんの音を入れられたんです。曲によっては2年前から長いスパンで作ってきたものもあったので、陽子ちゃんと一緒に練習スタジオで録ったテイクがいくつか残っていて。それをエンジニアにピックアップしてもらって、僕らが録った音に乗せていったんです。フルートの音を最後に乗せた瞬間、7人でスタジオに入っていた頃の空気がよみがえってきて、それがレコーディング自体をいい雰囲気で引っ張ってくれた部分もありましたね。

陽子ちゃんがバンドにもたらしたものがどの曲にも入ってる

──「ZAN」というインスト曲は、陽子さんがひとりで録音していた音源が元になっているそうですね。

はい。カラオケボックスにひとりで入って、クリックに合わせて吹いていた音源が残ってたんです。この曲は以前にライブでやったこともあったんですけど、その残ってた音源は全然アレンジが違ってめちゃくちゃカッコ良くなってたんですよ。ひとりで休んでる間にこんなの作りやがって、みたいな(笑)。しかも「まずAメロやります」「次は通してやります」みたいな感じで、音源にちゃんと説明が入っていたんですよ。頭のカウントも入っていたし。なのでこれはもう絶対形にしようと思って、その陽子ちゃんのカウントに合わせてみんなでレコーディングしたんですよね。

──いいエピソードですね。

まあでも陽子ちゃんはめちゃくちゃストイックな人だから、「そんなカラオケのテイク使わないで!」って言ってると思うんですけどね(笑)。そこは僕らを悲しませた罰だってことで。あと、僕はその陽子ちゃんのカウントをどうしても消したくなかったんですよ。だから「7」という曲の頭をセブンカウントにしてメンバー全員声を入れていったんです。陽子ちゃんの声を使いたいがために(笑)。

──アルバムのタイトルどおり、まさに7人で作り上げた作品と言えますね。ファンはものすごくうれしいと思いますよ。

陽子ちゃんのフルートが入ってない曲でも、ギターのアプローチが陽子ちゃんっぽかったりとか、メンバーみんなの心の中に陽子ちゃんがちゃんといるし、いつでもフルートの音が鳴ってますからね。だから6人だけど、7人で今まで作り上げてきたものがしっかり出てると思います。陽子ちゃんのアイデアや、彼女がバンドにもたらしたものがどの曲にも入ってるので、15曲全部が間違いなく7人のFUNKISTのサウンドになりました。

ニューアルバム「7」 / 2012年4月11日発売 / 2800円(税込) / ポニーキャニオン / PCCA-03574

  • Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. CRAQUE
  2. SHINE
  3. Dance in the world
  4. ROOTS
  5. Hello
  6. 絆 (Album Version)
  7. 7
  8. ZAN
  9. ALL TOGETHER
  10. 6才のうた
  11. 秘密戦隊FUNKIST7のテーマ
  12. Whose life is this
  13. 1/6900000000
  14. Waiting for your call
  15. NEW DAYS
FUNKIST(ふぁんきすと)

染谷西郷(Vo)、宮田泰治(G)、ヨシロウ(G)、JOTARO(B)、オガチ(Per)、春日井陽子(Fl)、住職(Dr)による7人組バンド。2001年結成以来、年間100本を越えるライブで、多くのファンの心を掴んできた。インディーズではアルバムを3枚、シングルを4枚のほか、染谷の母親の故郷である南アフリカでのツアードキュメンタリーDVDをリリース。2008年7月にシングル「my girl」でメジャーデビューを果たした。2009年2月にはメジャー1stアルバム「SUNRISE 7」を発売。同年4月には2度目となる南アフリカツアーも実施された。しかし、7月から春日井が体調不良のためバンド活動から離脱。その後は6人で活動を続けてきたが、2011年10月に春日井が逝去。バンドはそのまま残された6人でバンド活動を継続している。2012年2月に、春日井もレコーディングに参加した7人で最後のシングル「SHINE」を発表。3月には乙武洋匡との東日本復興支援コラボシングル「絆」、4月には春日井が残したテイクも使用したニューアルバム「7」を立て続けにリリースした。