ナタリー PowerPush - FUNKIST

メンバーの死を乗り越え語る新曲に込めた意味と思い

昨年10月13日、メンバーである春日井陽子(Fl)が逝去したことで、深い悲しみに襲われたFUNKIST。解散という選択肢がバンド内に浮上したともいうが、彼らは最終的に「かけがえのない友」の意志を受け継いでいくため前へ進むことを決意した。その後押しともなったのが、今回リリースされるニューシングル「SHINE」。PSP用ゲームソフト「テイルズ オブ ザ ヒーローズ ツインブレイヴ」とのコラボレーションによって生まれた「SHINE」「NEW DAYS」「Brave」という3編の収録曲は、春日井陽子を含む7人で最後にレコーディングされたものだ。

ナタリー2度目の登場となる今回は6人のメンバーが揃い、今、その心の内に広がる思いをたっぷりと語ってもらった。笑いの絶えない取材現場は実にFUNKISTらしいものであったし、それは彼らが現実をしっかりと受け止めて大きな悲しみを乗り越えたことの証明であったように感じられた。そんなメンバーたちの姿を微笑んで見守る春日井陽子の存在を、「7人のFUNKIST」をテキストの向こう側に感じてもらえたらと思う。

取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 中西求

このCDに7人で歩いてきた11年間を全部詰め込めた

──久しぶりのリリースとなるニューシングルは、バンドにとってすごく大きな意味のある作品になりましたね。

染谷西郷(Vo) はい。昨年の10月にフルートを担当していた春日井陽子ちゃんが天国に行ってしまったんですけど、これがメンバー全員、7人で最後にレコーディングしたCDになったんです。そういう意味で、天才的なフルート奏者だった陽子ちゃんが全力で生きていた証みたいなものや、僕らの友情、7人で歩いてきた11年間を全部詰め込めた1枚になっていると思います。

──レコーディングは陽子さんが亡くなる1カ月前に行われたそうですね。

インタビュー写真

染谷 とにかく楽しかったですよ。ずっとゲラゲラ笑ってた。もう笑わせないでくれって陽子ちゃんが怒ってたのを覚えてますね(笑)。

ヨシロウ(G) うちらのレコーディングは大騒ぎなんですよ。気付けば喉がかれてるみたいな。「俺、今日歌ったっけな?」みたいな。

宮田泰治(G) どっかんどっかん笑いながらやってるからね。

オガチ(Per) 僕すごく覚えてるんですけど、陽子ちゃんはスタジオに入ったときに「笛を吹くのがすごく楽しい」って言ってたんですよ。ずっとライブを休んでましたからね。で、そのときに自分はそこまで音楽を楽しんでたかな、みたいなことをすごく思ったんですよ。もっと楽しまなくちゃなって。陽子ちゃんにはそういう大事なことを最後に教えてもらった気がしますね。

──本作からは陽子さんの存在をいつも以上に色濃く感じられますよね。

染谷 そうですね。例えば2曲目の「NEW DAYS」だと、普段ソロパートを作るときってだいたい8小節くらいなんだけど、今回は陽子ちゃんのフルートソロは倍くらいあってもいいかもねって思って、たっぷり尺を取ったんですよ。あとは全部録り終わったあとに、急に陽子ちゃんの声を収録したいなと思って「時は巡り / 僕ら出会い」っていう言葉を入れてもらったりもしたんです。そのときはただなんとなくそうしたんですけど、今できあがったものを聴くと、やっぱり陽子ちゃんの息吹をすごく感じられる1枚になってて。だから正直、陽子ちゃんが亡くなってすぐはあんまり聴くことができなくって。その存在が大きすぎてまだ受け止めきれないっていうか。

この先の未来も陽子ちゃんと出会ったからこそ辿りつける

──それだけ大切な人が急にいなくなってしまったとき、バンドとしての未来についてはどう考えていましたか?

染谷 亡くなった直後は、バンドをどうするかっていうのをみんなで真剣に考えました。僕らは寄せ集めのミュージシャンでここまでやってきたわけではないし、大事な仲間たちとおじいちゃん、おばあちゃんになるまでずっと続けていくと思っていたんですよ。なので陽子ちゃんがいなくなってしまったFUNKISTはFUNKISTなのかとか、陽子ちゃんがいなくてもFUNKISTをやる価値があるのかとか、本当にいろいろ考えましたね。でも、7人で最後にレコーディングしたこのCDを届けられるのは俺らしかいないんだなっていう部分で背中を押してもらったんです。すごく大きなギフトを残してくれたんだなって。それに今、僕らが立ってるこの場所もきっと陽子ちゃんと出会ってなかったら立ててない場所だと思うし、これから先の全ても陽子ちゃんと出会ったからこそ辿りつける未来だと思うんです。だからそういう意味で僕らはずっと7人だし、ここから再出発というよりは、今まで続いてきた道をこれからも歩いていけばいいんだなってすごく実感できるようになったんですよね。

──ファンもそう望んでいたと思いますしね。

染谷 そうなんですよね。陽子ちゃんが亡くなったときに、ファンの人たちから「メンバーと同じくらい私だってつらい」とか「もう立ち直れません」とかっていうメッセージをたくさんもらって。「がんばって」とか「負けないで」とかそういう応援ではなく、俺らと同じ気持ちでいてくれたっていうのがすごくうれしかったんですよ。だから「SHINE」のテーマでもある「友情」にものすごく支えられたんですよね、前に歩き出すまで。

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FUNKIST盤 CD収録曲
  1. SHINE
  2. NEW DAYS
  3. Brave
  4. Waiting for your call
テイルズ盤 CD収録曲
  1. SHINE(OPテーマ)
  2. NEW DAYS(EDテーマ)
  3. Brave(挿入歌)
  4. スペシャルミニドラマ
FUNKIST(ふぁんきすと)

染谷西郷(Vo)、宮田泰治(G)、ヨシロウ(G)、JOTARO(B)、オガチ(Per)、春日井陽子(Fl)、住職(Dr)による7人組バンド。2001年結成以来、年間100本を越えるライブで、多くのファンの心を掴んできた。インディーではアルバムを3枚、シングルを4枚のほか、染谷の母親の故郷である南アフリカでのツアードキュメンタリーDVDをリリース。2008年7月にシングル「my girl」でメジャーデビューを果たした。2009年2月にはメジャー1stアルバム「SUNRISE 7」を発売。同年4月には2度目となる南アフリカツアーも実施された。しかし、7月から春日井が体調不良のためバンド活動から離脱。その後は6人で活動を続けてきたが、2011年10月に春日井が逝去。バンドはそのまま残された6人でバンド活動を継続している。2012年2月には、春日井もレコーディングに参加した7人で最後のシングル「SHINE」をリリース。