レコーディングはホントに楽しかった
──今回クレジットを見て驚いたんですが、基本的にはドラム以外のほとんどすべてのパートをご自分で演奏されてますね。ワンマンレコーディングと言っていいぐらい、藤巻さん1人の作業で作られてる。
そうですね。「日日是好日」は「今、自分が持ってるものでやりきろう」という思いで作ったんですが、今回は最初1曲ずついろんな人にプロデュースしてもらおうという構想があったんです。ただディレクターと話していたら、「デモがすごくいい感じだから、このままやりきったら?」とアドバイスをもらって。確かに2ndアルバムを作ったときも、もっともっとできそうだという手応えがあったし、あふれるものもあったんです。自分1人でやりきることで見えてくる世界があるかも、と思えてきて、「よしやるか!」と。
──デモ作りはどういう作業なんですか?
メロディと歌詞の断片、それからコード感のようなものをギターを弾きながら作って、1コーラス分できたらPro Toolsに録音して、ああでもないこうでもないといじって、ドラムパターンを作り、それが決まるとベースラインも決まってくる。そうしてギターソロみたいな上モノをどうしようか……みたいな。ピアノを入れてみたり、ホーンを入れてみたり、構成や展開をあれこれいじったり、全体のバランスを考えながら細かく修正していくんです。
──その段階では完全に1人の作業ということですね。
そうですね。そのあとレコーディングスタジオで、打ち込みのドラムを生のドラムに差し替えたり、ギターを録り直したり、ホーンをダビングしたりする。プリプロのアレンジを生かしている部分が多いですね。タブくん(タブゾンビ)と一緒にブラスアレンジした「Blue Jet」みたいな曲は、自分でブラスのラインだけ入れておいて、タブくんとやり取りしながら生で入れ直したり。
──お話を聞いていると楽しくできたのでは?
すごく楽しかったですよ! 今回のレコーディングはホントに楽しかったです。
──そういう喜び、解放感が音ににじみ出ている感じがします。
ああ。僕の場合、バンドで音楽活動を始めて、プロデューサーが付いて、という形でレコーディングをやってきたわけじゃないですか。そうするとね、どこかで自分の“仕切り力”が弱くなるんですよ。何をもって正解とするかという責任のあり方が、バンドとソロでは違って。多数決で決めることもあるし、プロデューサーの意見にしたがったほうがいい場合もある。バンドのときは、ほかのメンバーに委ねるみたいな選択肢もあるんです。そのほうがうまくいくことも多いし。ソロになって、まずコミュニケーションのやり方がわからなかったんですよ。でもエンジニアさんやいろんなミュージシャンとやるようになって、そうしたものがわかるようになってきたんです。どうやったら楽しく、いいものができるか。空気感も含めて、そういう場をいかに作り上げていくかっていうやり方が、アルバム3作目にしてようやくわかってきたんです。レコーディングスタジオの現場の雰囲気って、すごく大事なんですよ。最初はね、遠慮しあって言いたいことが言えないとか、小さいことを気にしすぎちゃうんですけど、だんだんそういうのがなくなって、ディレクションがすごくスムーズになった。
自分の原点に対する思いを込めた「北極星」
──プリプロできっちり作り込んでいくことで、自分のやりたいことが明確になっていたからでしょうか?
それもありますね。ドラムとかもすごく細かく打ち込んでいったので。でも(玉田)豊夢くん(ニューアルバムの8曲に参加)とかドラマーの皆さんがホント素晴らしくて。ちゃんとこっちのニュアンスを汲み取って完璧にプレイしてくれました。デモの打ち込みをそのまま使った曲もありますけど、量感とか質感を考えて、生のドラムに適宜置き換えていったんですね。ギターやベースもラインで録ったりアンプで鳴らしたりして、聴き比べながら。
──ちなみにタブゾンビさんはどういうつながりなんですか?
タブくんはもともと、レミオのストリングスを入れたライブで、ホーン隊として入ってもらったのが最初です。2011年だったかな。再会したきっかけはカロリーメイトのCMですね(参照:藤巻亮太、カロリーメイト新CMでタブゾンビ迎え「3月9日」セルフカバー)。「学生を応援したい」というテーマで、「3月9日」をカバーしてほしいというオファーがあって。自分が高校時代にブラスバンドをやっていて、野球部とか応援していたことを思い出して、「3月9日」をブラスアレンジしようと思ったんです。それでタブくんにひさびさに連絡を取って。パフォーマンスもカッコいいんですけど、作るアレンジも素晴らしくて。
──タブゾンビさんにブラバンというイメージはあまりないですよね。
ないですよね(笑)。ないんですけど、だからこそ面白いというか。ハマリましたね。変態的なフレーズを入れたりしてくれるし、ラストの即興的な部分とかカッコよくて。「Blue Jet」にしても、そういう構築と即興、オーソドックスな部分と変則的な部分のバランスがうまくいって、いい形でハマりましたね。
──アルバム全体の流れの中で、彼の参加曲がいいアクセントになってると思います。
そうですね。
──アルバムタイトル曲の「北極星」は、本作でも核になる曲の1つだと思います。
東京で曲作りしてるときに煮詰まって。実家(山梨)の近くの公民館を借りて、そこに機材を持ち込んで夏の間に曲を作ってたんです。公民館の窓を開けるとすぐそこにぶどう棚があって甲府盆地があって南アルプスがあって。僕が18年間見てきた景色、山梨の田舎の風景があって。ここの景色、ここで出会った人とか起こった出来事が僕の原点だなと心から思えたんです。レミオの2人に対する思いとか、近くの神社で練習していたとき……“神社時代”というのがレミオにあるんですけど……その頃のこととか。そういう自分の原点に対する思いがあふれてきたんです。「この街の景色が僕にとっての北極星で、これからも僕は変わっていくだろうけど、ここで起こったこと、感じた何かが自分の感性の深い部分を作ってるんじゃないか」と思ったんです。
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曲を作ることによって、自分の過去の時間を成仏させていく
- 藤巻亮太「北極星」
- 2017年9月20日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
初回限定盤 [CD]
3564円 / VICL-64845 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64846
- 収録曲
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- 優しい星
- Blue Jet
- Have a nice day
- another story
- マスターキー
- 波音
- go my way
- 紙飛行機
- 北極星
- 愛を
- Life is Wonderful
- LIFE(※初回限定盤ボーナストラック)
- 3月9日(※初回限定盤ボーナストラック)
- 藤巻亮太 Polestar Tour 2017
-
- 2017年10月22日(日)
大阪府 Zepp Osaka Bayside - 2017年10月23日(月)
愛知県 THE BOTTOM LINE - 2017年10月27日(金)
宮城県 darwin - 2017年10月28日(土)
新潟県 新潟市秋葉区文化会館 - 2017年11月5日(日)
広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA - 2017年11月6日(月)
鹿児島県 姶良市文化会館 加音ホール - 2017年11月8日(水)
福岡県 イムズホール - 2017年11月12日(日)
山梨県 甲斐市双葉ふれあい文化館 - 2017年11月18日(土)
東京都 昭和女子大学人見記念講堂
- 2017年10月22日(日)
- 藤巻亮太(フジマキリョウタ)
- 2000年12月に前田啓介(B)、神宮司治(Dr)とともにレミオロメンを結成し、ギター&ボーカルを担当。「3月9日」「南風」「粉雪」など数々のヒット曲を発表する。2012年2月にレミオロメンの活動休止を発表し、同月に初のソロシングル「光をあつめて」をリリース。10月には1stアルバム「オオカミ青年」をリリースした。以降もソロ活動を活発に展開し、2016年2月に初の写真集「Sightlines」を、3月に2作目となるオリジナルフルアルバム「日日是好日」を発表している。2017年9月に3rdアルバム「北極星」をリリース。