クリストフの愛おしさ
──「イントゥ・ジ・アンノウン」の話が出たので、次は音楽について聞かせてください。今作の音楽をどう感じられていますか?
正直に言うと前作の音楽がヒットしすぎていたので、世界中で期待値がすごく上がっていたと思います。「誰目線なんだろう?」と思いつつ、作るのが大変だろうなという心配までしていました(笑)。でもどの曲も本当に素敵で、公開から2カ月近く経ちますが、もっともっと「素敵な音楽がたくさんありますよ」と広めたいと思っているくらい好きです。
──その中であえて好きな曲を挙げるとすると?
クリストフが歌う「恋の迷い子」です。歌詞がいいんですよね。プロポーズをしたいと思っているのに、なかなかできない。そのうえアナに置いて行かれてしまった残念感がよく出ているし、何より歌がうまい! そして1人残されたことをかわいそうと同情すべきか、笑っていいのかもわからない。あのシーンを含めて、とても惹かれました。
──あのシーンはどちらかというと、笑っちゃいますよね(笑)。
そうなんです(笑)。「このカット割りは何?」みたいな。歌の尺も長いし(笑)。前作でアナと出会った頃のクリストフは、もっとツンツンしていて、人に興味がなさそうな雰囲気でしたよね。それがアナと出会って恋をして、彼女のあとを追いかけるまでになったところが素敵。映画を観たあと改めてアルバムを聴く中で、クリストフの愛おしさがギュッと詰まった曲だと思いました。ある意味でディズニーっぽくない音楽でもあるし、それが映画の中でいいスパイスになっていてよかったです。
アナの見方が変わった
──ほかに、映像と共に惹かれた楽曲はありましたか?
はい。1つはエルサが洞窟にたどり着いて駆け込んでいくシーンの歌「みせて、あなたを」です。明るい曲ではないのに、エルサの強さと、ようやく自分の謎を紐解けるという興奮が伝わってくる。それに映像がまたキレイなんです。氷の美しさがとても印象的でした。
──もう1つは?
アナが歌う「わたしにできること」です。これも印象的なシーンで流れる曲で、自分と重ねてしまう曲でもあります。私が好きになるキャラクターはキャピキャピしたかわいらしいタイプよりも、自立していて「がんばるぞ」みたいなタイプ。アナもまっすぐでがんばり屋なんだけど、前作では残念ながら私の“第一線”ではありませんでした(笑)。でもこの曲が流れるタイミングのアナは独りぼっち。そこで歌う「わたしにできること」は、最初はつらいと嘆く歌詞だけど、すぐに“次の一歩”とか“私にもできる”と言って、最終的に“やるべきことをやらなくちゃ”と決断する。私自身あまり落ち込むタイプじゃないし、芯は強いほうだと思うけれど、もし自分がアナと同じ状況に陥ったら、すぐに未来に向かう選択なんてできないです。だからアナの見方が大きく変わりましたね。“正しいことをしよう”という歌詞も、それを歌うときのアナの表情が変わるのもカッコいいし、心打たれる歌だと思います。
──オラフの愛らしい歌「おとなになったら」はどうでしょう?
前作でオラフが歌う「あこがれの夏」もすごく好きでした。オラフってずるいですよね(笑)。かわいいし、何をしても面白いし、「おとなになったら」ではワケのわからない“サマンサ”が出てくるし(笑)。「それはどこから来たの?」って思わずツッコミたくなる。特にソリのシーンなんてずっとしょうもないことをしゃべっていて、「ちょっと静かにしようか」なんて思ったりもしたけれど、振り返ってみると、すごく大切なことを話していたんですよね。そういう意味でオラフがキーマンだと思いました。今作の背景にある物語を含め、映像の色合いも暗めだったりするので、オラフがいることで子供たちが笑えるシーンが登場するのはすごくいいなと。
──個人的には北欧の先住民族にインスパイアされたノーサルドラの人たちが森で合唱する歌が映画の空気感を変えたと思ったのですが、あの歌はどう思われますか?
あの「ヴェリィ」という曲は、前作のオープニングでも流れた曲なんです。私はずっとサントラを聴き続けていたので、慣れ親しんだあの歌をノーサルドラの人たちが歌い始めたときに、ブワっと鳥肌が立ちました。「何を歌っているのか意味はわからないけれど、心に染みるな」と思っていた歌が、あのシーンで急に登場するから「またここでもつながっている!」と思えてうれしかったです。ミュージカルというのは基本的に歌詞がセリフの役割を果たしているけれど、あの曲だけは言葉じゃなくて、心で1つになれる瞬間が描かれていて、それも素敵だと感じましたね。
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エネルギーが伝わってくる「イントゥ・ジ・アンノウン」
2020年2月3日更新