ナタリー PowerPush - fripSide

2人の信頼感と10年の歴史が生んだ デジタルミュージックの新しいカタチ

トラックメーカーsatと、声優としても活躍するボーカリスト南條愛乃によるユニットfripSideが5月8日、シングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時リリースする。

「sister's noise」の表題曲は現在放送中のテレビアニメ「とある科学の超電磁砲S」のオープニングテーマ。「only my railgun」や「LEVEL5 -judgelight-」など、これまでfripSideが手がけてきた「とある科学の超電磁砲」シリーズのテーマソング同様、アグレッシブなデジタルサウンドを前面に打ち出しながらも、キャリアをスタートさせてから10年を誇るユニットならではの“大人の余裕”のようなものを漂わせたサウンドに仕上がっている。

一方「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」は、2012年12月22日、東京・新木場STUDIO COASTで開催されたfripSide結成10周年記念ライブの模様を余すところなくパッケージ。全18曲を収録し、現fripSideの2人はもちろん、初代ボーカルnaoやサプライズゲストも登場する豪華な内容となっている。

11年目を迎えた今、最新モードのfripSideサウンドと、過去を総括する映像を同時に発表するその意図は? satと南條に話を聞いた。

取材・文 / 成松哲

satが教える「超電磁砲」サウンドの作り方

──fripSide結成10周年の集大成的アルバム「Decade」リリース時のインタビューで南條さんは「とある科学の超電磁砲」(以下「超電磁砲」)のテーマソングにして大ヒット曲「only my railgun」は「むしろfripSideのディスコグラフィの中では異色なのかもしれない」と言っていました。

南條愛乃 そうですね。

──そして実際に「Decade」を聴いてみると「only my railgun」のようなサイバー感あふれるトランスはfripSideの見せる表情の1つでしかないことがよくわかる。「Decade」にはハウスもあれば、いわゆるJ-POP寄りの1曲も収録されている。もっとバラエティ豊かな楽曲を作るユニットですよね。

sat ありがとうございます(笑)。

──ただその一方で「only my railgun」「LEVEL5 -judgelight-」、そして今回のシングル「sister's noise」と、テレビアニメ版の「超電磁砲」シリーズのテーマソングには一貫性のようなものを感じるんです。

sat それは実はたまたまというか(笑)。確かにトランスを取り入れたJ-POPサウンドの確立っていうのは僕が数年来探求しているテーマではあるし、超電磁砲のヒロイン御坂美琴は電気を自在に操れるエレクトロマスターっていうキャラクターではある。だけど「そういうsatの楽曲だから『超電磁砲』の楽曲だからトランスにしているんです」っていうものでもなくて。「超電磁砲」シリーズの主題歌のお話をいただくたびに、作品の世界にfripSideがどういう彩りを与えられるかを考えた結果、自然とああいう曲が並んだだけなんです。例えば同じ「超電磁砲」シリーズの楽曲でもPSP用ゲーム版のテーマ曲「way to answer」ってまったくトランスじゃないですし。

──けっこう生バンドに近い編成、アレンジのデジロックでしたよね。

sat なので今後もし、アニメの「超電磁砲」シリーズのお仕事をいただいたとき、その作品の内容がこれまでとはまったく異なるものだったなら、全然トランスではない楽曲を作るかもしれない。それは十分あり得るんですよ。

デジタルなのにナマ感漂うサウンド

──では今回トランスサウンドを選択した理由は?

sat 「超電磁砲S」はシスターズ編。美琴とそのクローンの物語が軸になるよ、という話をアニメ制作サイドから伺っていて。美琴と同じく電気を操る能力者がたくさん出るのであれば、よりデジタル感を強く出したいな、と思ってたんです。ところが制作サイドからは「メロウな楽曲をお願いしたい」というオーダーがくるという(笑)。その結果、テンポ感やアレンジは全然メロウではない。トランス的ではあるんだけど、メロディと歌詞は切ない感じに仕上がった。メロウな歌の世界とビリビリとしたエレクトリックなサウンドがうまく融合できたんじゃないのかな、と僕自身は思ってます。

南條愛乃

南條 確かに最初に曲をいただいたとき、今までのアニメシリーズのオープニング曲のような「電撃ビリビリ」な感じというよりは、その要素を引き継ぎつつもどこか切ない感じ、厳かな印象を受けました。今までのアゲアゲな感じとはまた違う。先ほどおっしゃっていたfripSideのいろんな顔のうちの別の1つを見せることで「超電磁砲S」といいコラボができている気はします。

──実際「sister's noise」ってそのビリビリ感というか、サイエンティフィックな感じはさせつつも、これまでの「超電磁砲」シリーズのテーマソングとは何かが違う。どこかオーガニックな感じ、“ナマ”の匂いがしますよね。

sat そう聴いてもらえるとうれしいですね。僕自身改めて「sister's noise」という曲を聴いたとき、南條さんの前のボーカル、naoさんと一緒にfripSideとして活動していた頃のことを思い出したんですよ。「あっ、そういえば第1期fripSideのときはデジタルでナマ感を出すっていう部分にすごくこだわってやってたな」って。昔と同じ曲を作ろうなんてことはもちろん考えてなかったんだけど、2002年のfripSide結成からこの10年のうちにいろいろ経験を積んで、作曲やアレンジやレコーディングのクオリティも高まった今、昔の自分が試したかったことをもう一度やってみた印象はありますね。

ニューシングル「sister's noise」 / 2013年5月8日発売 / GENEON UNIVERSAL
初回限定盤
初回限定盤 [CD+DVD] / 1890円 / GNCA-0280
通常盤 [CD] / 1260円 / GNCA-0281
CD収録曲
  1. sister's noise
  2. I'm believing you
  3. sister's noise〈instrumental〉
  4. I'm believing you〈instrumental〉
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「sister's noise」PV
  • メイキング映像
  • スペシャルスポット映像
ライブBlu-ray DISC / DVD「10th Anniversary Live 2012 Decade Tokyo」 / 2013年5月8日発売 / GENEON UNIVERSAL
Blu-ray DISC / 5250円 / GNXA-1024
DVD / 4725円 / GNBA-1400
fripSide(ふりっぷさいど)

fripSide

コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優として活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2008年に初代ボーカルnaoとsatでメジャーデビュー。2009年に南條愛乃が加入し、テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリース。その後もアニメやゲームに楽曲を提供していき、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」ではその存在感を確固たるものとした。2011年8月に発売された4thシングル「Heaven is a Place on Earth」はアニメ映画「劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH」の主題歌に起用。これまでとは異なる爽やかなサウンドで、ファン層を拡大した。2012年12月には結成10周年を記念したアニバーサリーアルバム「Decade」をリリース。2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister’s noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表する。