ナタリー PowerPush - fripSide
より重く、より熱く、より新しいデジタルJ-POPの作り方
いつもの曲の作り方で科学の世界の最先端を紹介
──カップリングの「pico scope -SACLA-」なんですけど、まず基本的な疑問を解決させてください。この曲がPRムービーのテーマソングになっている「世界一小さいものが見えるX線レーザー『SACLA』」って?
sat 兵庫県にある理化学研究所の巨大施設ですね。イメージ的には粒子加速器なんかが一番近いと思うんですけど、ああいう全長何キロもあるようなメッチャデカい観測用の装置。平たく言ってしまうとメッチャデカい顕微鏡です。
──そのメッチャデカい顕微鏡を使えば世界一小さいものを見ることができる?
sat 物の分子構造を画像として捉えることができるらしいです。
──なぜそのメッチャデカい顕微鏡とタッグを組もうと?
sat 理研さんから「アニメーションという日本文化を通じて、日本の最先端の研究成果を世界の人たちに伝えるためにテーマ曲を作ってくれないか」っていうお話をいただいたからですね。そういう意味では普段と制作スタイルは変わらない。PRムービーは架空のアニメのオープニング風の映像なんですけど、オープニングだけとはいえ、キャラクターや世界観がちゃんと設計されている企画だったから、その作品に寄り添った曲を作ればよかったので。「SACLA」がどんなものであるのかについては、すごく勉強しましたけど(笑)。
──そのsatさんの猛勉強のおかげなんでしょうけど、すごく楽しい詞になってますよね。「未来を引き寄せる光」=X線を「集束して 今解き放つ」ことで「この小さな宇宙」=世界一小さいものの仕組みを「解き明かす」ためのもの、っていう施設の目的をちゃんと理解できる。森高千里「ロックンロール県庁所在地」みたいな“お勉強歌”とでも言うのか……。
sat まさにそう聴いてほしいんですよ。ただまさかこの曲が「black bullet」のカップリングになろうとは(笑)。
──シンフォニックサウンドという新機軸を打ち出した「black bullet」のカップリングが、いい意味でのノベルティポップである「pico scope」っていうのは確かに面白い(笑)。
南條 私、シングルをリリースする話があったときに聞いたんですよ。「カップリングはなんにするんですか?」「歌詞を書かせてくださいよ」って。そしたら「いや、カップリングは『SACLA』だよ」って言われてしまい……。だから私も「んっ!?」と(笑)。
sat まあ僕がレーベルのプロデューサーと相談して決めたんですけどね。「ダブルタイアップシングルにしようぜ!」って(笑)。
fripSideが提唱する最新エクササイズ
──全然「まさかカップリングになろうとは」じゃないじゃないですか(笑)。で、さっきの南條さんの口ぶりだと、この曲はシングルのために書き下ろしたものではない?
南條 去年の春頃には録っていましたし、年末のカウントダウンライブでも披露してます。テンポもそのままで。
──確かにこの曲って、なんとなればfripSide史上最速ですよね?
sat 「SACLA」のPRムービーが59秒なんですよ。その尺にAメロ、Bメロ、サビを入れてほしいというオーダーをいただいた結果、速くなっちゃいました(笑)。
南條 だからデモをもらったときの感想は「速っ!」でしたし、ライブで歌うことになったときも「マジかー」って感じでした。でもここまで速いと逆にもう笑えますよね。
sat 笑える笑える(笑)。
南條 歌い出しの「解き明かしたい」の直前に息継ぎをしたが最後、1コーラス目の中に息継ぎのポイントが見当たらないし、歌うと腹筋が痛くなるんですよ。それもスポーツしたりしたときには痛くならないところ、奥のほうが。インナーマッスルが鍛えられるので、皆さんもぜひカラオケで歌ってみてください(笑)。
sat そういうDVD出そうか?
南條 「pico scope」ダイエット(笑)。「スポーツしたり、踊ったりしなくても痩せられます!」。
──じゃあまずはエクササイズDVDをリリースするとして(笑)、それ以外に今後やってみたいことってあります?
sat うーん……。あんまり欲張りたくはないんですよね。粛々と精度の高い、いい曲を作り続けていきたい。それしかないです、ホントに。やっぱりアニソンアーティストですから。「ブラック・ブレット」というアニメや「SACLA」という最先端研究をいかに盛り上げるかが僕たちの一番の使命だと思うんですよね。その使命を果たした結果「これまでfripSideを聴いたことはなかったんだけど『ブラック・ブレット』の主題歌、いいね。ほかの曲も聴いてみようか」って思ってもらったり、逆に「fripSideが曲を書いてるんなら『SACLA』のサイトにアクセスしてみようか」って思ってもらったりしたい。そういう相乗効果があったとき、一番うれしくなれるタイプなんです。
南條 たぶん「アニメやゲームに寄り添いたい」っていうのが、fripSideの持っている一番のエゴなんですよね。
sat うん。でもその寄り添い方はあくまで僕たちのやり方、スタンスで。それでみんなをうならせたいっていうエゴを発揮したいんだと思います。
【fripSide】8thシングル「black bullet」 PV -short ver.-
未来光子 播磨サクラ
- ニューシングル「black bullet」 / 2014年5月14日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / GNCA-0333
- 通常盤 [CD] / 1296円 / GNCA-0334
CD収録曲
- black bullet
- pico scope -SACLA-
- black bullet(instrumental)
- pico scope -SACLA-(instrumental)
初回限定盤 DVD収録内容
- black bullet PV
- PV commentary
- PV making
- SPOT special ver. 1
- SPOT special ver. 2
- 理化学研究所 世界一小さいものが見えるX線レーザー「SACLA」 PRムービー
fripSide(フリップサイド)
コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2009年に南條が加入。テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリースする。その後もアニメやゲームの楽曲を多数手がけ、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」でそのスタンスを確固たるものに。さらに映画「劇場版ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH」の主題歌に採用された2011年8月の4thシングル「Heaven is a Place on Earth」ではこれまでとは異なるさわやかなサウンドで、ファン層を拡大。そして結成10周年となる2012年12月にはアニバーサリーアルバム「Decade」をリリースし、2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表。「sister's noise」はオリコン週間シングルランキングで1位に輝き、続く8月のシングル「eternal reality」では小室哲哉とのコラボレーションを果たすなど、アニソンシーン外でも大きな存在感を示す。そして2014年5月、アニメ「ブラック・ブレット」のオープニングテーマ「black bullet」をリリースする。