音楽ナタリー PowerPush - FoZZtone
バンドの葬式を挙げる
「死」と「葬式」
──「暗い」「寒い」といったイメージが出てきましたが、アルバムの資料にある渡會さんの解説文には「アルバム制作を始めると、『Return to Earth』という言葉のもう一つの意味『土に還る』に気付きました。つまり『死』です」とあります。
もともと僕は「世界の中心で、愛をさけぶ」みたいな、誰かが死ぬシチュエーションの中で謳われる愛とかがすっごいもう……サブイボ立つくらいイヤで。「死んじゃうから愛して!」とか「死んじゃうからこの愛ピュアです」みたいなことは脅迫と一緒だなと。
──一種の商法ですね。
そう、その商法をミュージシャンもちょこちょこやりだしてて。「僕の命はどうたらこうたら」とか、死ぬとか儚いとかそういうワードばっかり安易に使ってるんだけど、「いやお前、この間俺とぶっ倒れるまで飲んでただろ! そのときずっと女の子のことばっかり言ってただろ!」みたいな(笑)。そんな商法でファンの子をキュンキュンさせるメンヘラミュージシャンたちに対して「お前は95まで生きてしまう。ざまあみろ! さあ、老後のことを考えて音楽やれ!」っていう、そんなのを信条にしてたんですけど(笑)。でもさすがに10年やってきて、解散してくバンドも、捉え方はいろいろだけど死んでったバンドもたくさんいたりして。「あ、俺たちもひょっとしたら死ぬかもな」っていう漠然とした危機感を今まで見ないようにしてきたのかと思うと、全然目を向けないのもよくないなと思うようになったんですね。なので、商法めいたことはやりたくないけど、そこに目を向けつつも違うアプローチができたらなっていう。
──それが「土に還る」や「泥まみれの男に戻る」ということなんですね。
はい。最初は「アルマゲドン」のラストみたいに、カッコよくザッと並んで「帰ってきたぜ!」みたいな(笑)、急にThe Beatlesの「All you need is love」が流れる感じのほうが幸福感があふれていいんじゃないかなとは思ったんですけど。そういう「Return to Earth」を目指すのは嘘っぱちっぽいなあって気がしたんですよね。
──そこで改めて感じた、渡會さんにとってのリアルな「Return to Earth」とはどんなものだったんですか?
なんか、実家帰ったときとかにチヤホヤしてもらえるのって最初の2、3日くらいで、1週間くらいいると「ちょっと邪魔なんだけど」って蹴られたりするじゃないですか(笑)。「ええっ、帰ってきた日あんなにビールとか出してくれたのに! なんで!?」っていう。“出戻り”っていう感覚もあると思うんですよ、「Return」っていう言葉に対して。そういう意味で、「帰って来るべき地球」みたいな場所が、自分の中であんまりいいイメージじゃないんですよね。それこそ「Return to Earth」じゃなくて、やっぱり「Reach to Mercury」とか、別の星に行こうかっていう話もあって。そっちのほうが……永久にどこかを目指している感覚のほうがずっといいとは思ったんですけど。
──はい。
でも、ちょっともうこれ1回区切らんとなって。バンドのここがいかんな、とかこれをこのまま続けてたら無理だな、っていう問題点がしっかり見えてきたのもこのアルバムのレコーディング中だったんで。これはもう意図的にFoZZtoneの葬式を挙げよう、みたいな気持ちがありましたね。
──FoZZtoneの葬式、というのは大きなキーワードですね。
そもそもレコーディング前に「11周年目で出すアルバムは新しい第一歩にしよう」って言ってたんだけど、ほんとに新しい第一歩を踏み出そうとしてるのが俺だけだった気がします。なかなかメンバーもうまく切り替えができず、ちょっとね、フワフワフワーっとした状態になっちゃってて。これはいかんと。FoZZtoneってバンドはメンバーが常に動き回って、吐き出し続けてないとベストな状態ではないので。人に聴いてもらうための作品としてはあれなんですけど、とてもパーソナルな部分が強いアルバムになりました。
──そうだったんですね。個人的には、3rdアルバム「NEW WORLD」の「白鯨」という曲で気高さのシンボルとして登場していた鯨が今回は溺れている(「溺れる鯨」)ということが気になりました。
そこも、「NEW WORLD」っていうアルバムに対するケジメみたいなところがありますね。いろんなアルバムを「はい、もうおしまいだよ!」ってぶった切っていってるんです。
お客さんからのパワーで回復
──制作を終えて、今は皆さん同じ方向を向けているんでしょうか。
そうですね。今「追加公演!」っていう自主企画をやってるんですけど、制作でうまく力を発揮できなかったぶん、メンバーがライブに重きを置いていて。お客さんからすごくパワーをもらったことで、がんばろうっていうマインドになってます。アルバムとライブを経て、ようやく回復しました。
──それはよかったです。回復後、バンドはどうなっていきそうですか?
FoZZtoneってバンドがこの「Return to Earth」ってアルバムで1回死んだので……でもFoZZtoneはクマムシみたいに、水をピュッてやるとすぐ生き返るような生き物なんですよ。ただ、同じものが復元されただけじゃつまんないんで、次の作品はかなりぎっちり時間かけて作りたいなあと思ってます。次のリリースまで「もういいよ!」ってくらいさんざんライブやりまくってから新譜をバコンと出したいなっていう。まだ「Return to Earth」が出てないのに、さらに先の話してる時点でどんだけ未来見てんだって話ですけど(笑)。
- ニューアルバム「Return to Earth」2014年11月12日発売 / 3000円 / SPACE SHOWER MUSIC / PECF-3106 / Amazon.co.jp
- 「Return to Earth」
収録曲
- Return to Earth
- 溺れる鯨
- 開きっぱなしの扉か俺は
- Message from the front
- Gloria
- ベルティナの夜
- 青い炎
- Anomaly
- Cry for the moon
- 風によろしく
- Fortune Kiss
- ミニアルバム「Stomp the Earth」2014年9月3日発売 / 1944円 / SPACE SHOWER MUSIC / PECF-3099 / Amazon.co.jp
- 「Stomp the Earth」
収録曲
- アウトサイダー
- Stomp the Earth
- Stairway to you
- Morning Glory
- ひとりぼっちのミュージカルスター
- Return to Earth DEMO 2
FoZZtone(フォズトーン)
2001年に竹尾典明(G)が渡會将士(Vo, G)と前身となるバンドを結成し、2002年に越川慎介(Dr)、2003年に菅野信昭(B)が加入。2007年にミニアルバム「景色の都市」でメジャーデビューし、2009年に亀田誠治がプロデューサーとして参加した2ndフルアルバム「The Sound of Music」をリリースした。2010年に越川がバンドを脱退して以降はサポートドラマーに武並“J.J.”俊明を迎えて活動中。ユーザーが収録曲と曲順を決定できるという“オーダーメイドアルバム”のプロジェクト、組曲形式の楽曲をDISC 2に収めた2枚組アルバムのリリース、セカイイチとのコラボバンド「セカイイチとFoZZtone」の結成など、柔軟な活動を続けている。2013年にはバンド結成10周年を迎え、“オーダーメイドアルバム”やメジャー在籍時代のベストアルバム、5thアルバム「Reach to Mars」をリリースした。2014年9月にミニアルバム「Stomp the Earth」、11月にフルアルバム「Return to Earth」を発売する。