音楽ナタリー Power Push - Fo'xTails

怒濤のデビュー1年目で垣間見えたバンドのコントラスト

サイバー感と人間らしさの「コントラスト」

──曲を決めるにあたっては、テラさん、鳴風さん、坂本さんの3人がそれぞれ作った曲を持ち寄ってバンド内でコンペにかけるそうですが、このテラさんの曲ですんなり決まったんですか?

takao はい。鳴風も坂本も曲を書いてきてくれたんですけど、今回はアニメの世界観にも、バンドのやりたい音楽にも、テラちゃんの曲が一番合うんじゃないかって。そこからは、バンドの5人にプロデューサーさんとかも含めた“Fo'xチーム”でアイデアを出し合って、曲を練り上げていった感じですね。

──「Dimension W」のサイバーパンク的な物語のイメージから、もっとデジタル色が強めの曲になるのかな、とも思ったんですよね。しかもプログラミングをなさっているテラさんの作曲なので、なおさら。

テラ(G, Programming)

テラ 実際、僕の中にもそういう選択肢はあったんですよ。ただ、バンドの持ち味というのを考えてたら、わりと自然に今の形になりました。デジタル要素も入ってはいるんですけど、あくまで装飾的なものとして、ですね。

──むしろデジタルの対極ともいえる、アコースティックギターも入ってますもんね。

テラ 原作は近未来の話ですけど、そこに暮らす人々が未来的に生きているかというと、必ずしもそうではなくて。特に主人公は「コイル」を使うのを頑なに拒否して、過去を引きずっていたりする。そういう人間味もたくさん出てる作品なんですよ。だから、アコギ自体は鳴風くんのアイデアなんですけど、クールなバンドサウンドにアコギの音色を差し込むことで、サイバー感と人間らしさのコントラストをですね……。

──「コントラスト」いただきました。

峻洋 急に来たね(笑)。

坂本 うまくまとめてやったと思ってる?

鳴風 それ、もうちょっとあとで言ったほうがよかったんじゃない?

テラ もうね、いつ言おうかなって、うずうずしてて。

自分が本当に思ったことしか歌詞に書けない

──作詞についてお聞きしますが、takaoさんの書く詞って、タイアップだからといってあからさまにアニメに寄せていないですよね。例えば「次元」とか「コイル」とか、直接的なワードを歌詞に入れ込むパターンもあり得たと思うんですけど。

takao 俺は自分が本当に思ったことしか歌詞に書けないんですよ。でも、だからといって原作を無視するというわけではまったくないし、今回は俺も原作コミックを読んですごいハマっちゃったので、主人公に自分自身を重ねたところもあります。

──歌詞に出てくる主人公は、だいぶ悩んでいるというか、厄介な状況にあるけれど、でも「閃光よ 走り出せ」と、突貫していく感じですよね。

takao それは俺自身の考え方というか、この歌詞にはいろんな感情を入れてるんですよ。例えば俺の中には、自分が決めたことに対して必ず反対するもう1人の自分が常にいるんですけど、その2人の自分の間の葛藤だったり、それこそ世の中に対する不満だったり。

──その不満はサビの「完璧を求める『異常』な時代」という部分に端的に表れていますね。

takao そうですね。完璧であることはいいことなんでしょうけど、完璧さを求めるあまり切り捨てられてしまうものもあるんじゃないか。不完全な、ダメな部分もあっていいんじゃないか、みたいな。

鳴風(G)

──そこはアニメの主人公が、近未来の基準からすると不完全な旧世代のガソリン車を愛用していたり、ヒロインのアンドロイドがポンコツ気味だったりする部分と通じる気がします。そんなtakaoさんの歌詞に対して、皆さんはどのような感想を?

鳴風 普段のtakaoは歌詞がある程度できた段階で「こういうのどうかな?」ってすぐ投げてきてくれるんですけど、今回はレコーディング間近に出してきて、有無を言わさずこの歌詞で録らされた感じですね。

一同 (笑)。

──「締め切りギリギリに渡されたって、もう直す時間ねえよ!」みたいな?

鳴風 そうそう(笑)。

takao いや、今までの歌詞はわりとストレートな言葉で書いてて、作詞の早い段階からメンバーに見てもらいつつ、一緒に手直ししていく感じだったんですよ。でも今回はもっと複雑というか、聴く人によって印象が変わるような歌詞にチャレンジしたくて、自分の中のハードルをすごく上げたんです。だから自分だけで書いては直し、書いては直しして、ギリギリまで待ってもらって。

坂本 出すのは遅かったけど、決まるのは早かったよね。

takao そう、「Contrast」はほぼ一発OKでした。

とにかく「楽しく演奏したい」と思って書いた曲

──カップリング曲に関して、2曲目「BE STRONG」は重いビートのラウドな曲、3曲目「Rainy」は一転してポップで切ないミドルチューンと、1stシングルから一貫して「1枚の中であれこれやってやろう」みたいな気概がうかがえますね。

takao 毎回、ハードな曲から歌モノまでシングル1枚を通してリスナーの皆さんを楽しませたい、濃い1枚にしたいという意識を持っているので、そう言ってもらえるとうれしいです。

──両曲とも作曲は鳴風さんですが、それこそ「コントラスト」じゃないですけど、対照的な2曲ですね。

鳴風 「BE STRONG」はなんかこう、あまり意味を持たせずに作ったというか……とにかく「楽しく演奏したい」「好き放題にギターを弾きたい」っていう気持ちで作曲したんですよね。だからメンバーに要望はほぼ何も言ってない。「ベースはバキバキに」「ドラムはグルーヴィに」くらいだよね?

坂本 そうだね。

峻洋 自由だったね。

──逆に言うと、ほかの曲では何かしら指定があったりするんですか?

坂本尭之(B)

坂本 曲によりけりですね。例えば「Contrast」は、作曲者であるテラちゃんの頭の中に「坂本が弾いたらこうなる」というイメージが明確にあったみたいで、彼が上げてきた打ち込み状態のデモを踏まえて僕が実際に弾いてみたら「いや、ここはこうしてほしかった」ってすごく細かく指摘されて。そういう意味では「BE STRONG」はざっくりしてました。でも、どっちがいいとかではないんですよね。作曲者の意図を汲み取れるかどうかっていうのは僕自身のキャパの問題だから。自分としては「バキバキ」したつもりでも「そのバキバキじゃねーよ」って突っ返されることもありますし。

──坂本さんとしては「どのバキバキだよ?」と。

坂本 そういう抽象的な、作曲者の頭の中にあるイメージをなんとかして引き出したい。その過程で、音でぶつかることはたまにありますね。お互いが納得するまで。

鳴風 「BE STRONG」は好きなベースの音で録れたよ。

坂本 よかった(笑)。

takao 「BE STRONG」の坂本のベースは、レコーディングで音出しした瞬間からみんな「これ、すげーいいね!」ってなったよね。いつもなにかしら要望がある鳴風も今回は「お、カッコいいじゃん」って。まさに「楽しく演奏したい」っていうのを全力で体現できた曲だと思います。

坂本 レコーディングもサクッと終わったよね。

Fo'xTails(フォックステイルズ)
Fo'xTails

2013年結成のロックバンド。バンドReyのメンバーだった坂本尭之(B)、テラ(G, Programming)、峻洋(Dr)にtakao(Vo)、鳴風(G)が合流し、首都圏を中心にライブ活動を開始する。ポップなメロディ、ラウドロック由来のエモーショナルなサウンド、テクニカルなプレイで注目を集め、2015年2月、テレビアニメ「黒子のバスケ」第3期エンディングテーマ「GLITTER DAYS」でメジャーデビューを果たす。以降コンスタントに作品を発表し、2016年2月には通算4枚目のシングル「Contrast」をリリース。表題曲はテレビアニメ「Dimension W」のエンディングテーマに採用された。