音楽ナタリー Power Push - Fo'xTails

怒濤のデビュー1年目で垣間見えたバンドのコントラスト

歌詞の第1稿は「重すぎ」、第2稿は「アホっぽい」

──峻洋さんのドラムに対しては、これまでにどんな指示が?

峻洋 僕の場合はデモの段階で、もともと自分が通ってきた音楽では聴かれなかったり、自分では思い付かなかったりするフレーズが入ってることが多いんですよ。

──そのへんは前回のインタビュー(参照:Fo'xTails「Innocent Graffiti」インタビュー)でも触れられていましたが、メンバー全員の音楽的なバックグラウンドがバラバラというのも関係してそうですね。

峻洋(Dr)

峻洋 そうですね。だから作曲者の指示によって今までの自分になかったものを自然に引き出してもらっているというか、新しい技を会得していく感じですね。メンバーそれぞれが自分の引き出しからいろんなものを放り込んでくるので、戸惑うこともありますけど、毎回変化があって面白いですよ。

──「BE STRONG」に話を戻すと、この曲の歌詞はわかりやすいというか、いわば応援歌ですよね?

takao はい。「Contrast」では「悩み」に対して正面から向き合うことをテーマに詞を書いたんですけど、「BE STRONG」はその次のステップとも言えるんです。つまり、弱い自分と対峙することが「強さ」につながる第一歩なんじゃないかと思って、それをド直球で書きました。聴いた人の背中を押せる1曲になるといいですね。

──一方で3曲目「Rainy」は有り体にいえば失恋ソングですが、最近失恋されたとか?

takao いや、違います(笑)。最初に鳴風が書いたメロディがすごく胸に響いたんで、「Rainy」では自分のリアルな心境を、言ってみれば自分自身の生き方みたいなことを書きたかったんですよ。でも、できた歌詞を鳴風に見せたら「重すぎ」って。

鳴風 重かったね(笑)。

takao じゃあ今度は気楽にいこうと思って書いたら「アホっぽい」と。

──両極に振れがちなんですね。

takao 「どういうこと?」って鳴風に聞いたら、この曲はある小説のワンシーンからヒントを得て作曲したって言うんです。要はその小説の登場人物の「ちょっとした後悔」をイメージして書いたと。そこで「なるほど!」と思って、恋愛に落とし込んだんです。その意味では俺の恋愛観でもあるし、歌詞にあるように、自分にも過去にうじうじしてた時期があったんで。

──この曲の主人公は、だいぶ別れを引きずってますよね?

takao 引きずってますね……。だから、そのうじうじしてる自分との決別というか、きっとそのうじうじはまたいずれ顔を出すんでしょうけど、「一旦サヨナラしようよ」という気持ちも込めました。

坂本が明るい曲を書いてきたら、ヤバい

──今takaoさんがおっしゃったように、鳴風さんは小説から着想を得て作曲することがよくあるんですか?

鳴風 俺の場合、本はだいぶ大きいかもしれませんね。

──ちなみにどんな小説を読まれるんですか?

鳴風 特定のジャンルや作家に偏るようなことはなくて、最近読んだのだと、ドラマ化された「怪盗探偵 山猫」シリーズ(神永学・著)は面白かったですね。

takao 鳴風は意外と本読むんで。

テラ坂本峻洋 意外と(笑)。

坂本 カバンから本が出てくるタイプには見えないもんね。電車の中でライダース着て本読んでる。

Fo'xTails

takao 鳴風は感受性が強くて、感じたものをすぐ曲にしたがるタイプ。

峻洋 「したがる」って(笑)。

takao いや、いい意味で! 何かのイメージを曲にするのがホント早くて、それは鳴風ならではの感性だなって思ってるんですよね。 

──テラさんと坂本さんは、どんなふうに作曲してるんですか?

テラ ええと、その、僕はそんなに本は読まないんですけど……。

──いや、別に「本を読め」って言ってるんじゃないですよ(笑)。

一同 (笑)。

テラ まあ「Contrast」は原作コミックからイメージをもらいましたし、映画やドラマのちょっとしたシーンでも、気持ちが動かされたときは曲につながったりするのかなって思います。そういう意味では何か決まった作曲パターンがあるわけじゃないですね。あと、僕は鳴風くんみたいに衝動的に曲を書けるタイプではないので。

──慎重派というか、作り込むタイプ?

テラ そうですね。思い浮かんだ曲想をいったん寝かすというか、自分の中で下地が固まってから書き始めるみたいな。

──坂本さんは?

坂本 僕はそのときの自分の気持ちと逆の感情を曲にしてるのかも。音楽を聴くときでも、気分が沈んでるときこそ明るい曲をかけたくなったりするじゃないですか。それと同じです。

──じゃあ、仮に坂本さんがものすごいハッピーな曲を書いてきたら、ほかのメンバーからしたら「ああ、今こいつ相当落ちてんな……」みたいな?

坂本 そういうことです(笑)。

今年はアニソン系のイベントにもどんどん出たい

──ここまでのお話を伺う限り、曲作りで行き詰まるとか、“Fo'xTailsらしさ”みたいなものを出すことに対して悩んでる感じがまったくしないですね。まだいくらでもネタは出てきそうというか。

坂本 “らしさ”に関しては、結局どんな曲でもtakaoくんが歌えばFo'xの曲になるんだなって思います。

──たしかにtakaoさんの、伸びのあるエモーショナルな歌唱は特徴的ですよね。

鳴風 曲作りの面でも、俺は「タイアップでも自分を出そう!」とかは特に思ってないというか、逆に原作ありきのほうが気持ちを込めやすいケースもあるんで、オリジナリティみたいなことはあんまり意識してないですね。

takao 端から見てると、鳴風は意識しなくても“鳴風節”みたいなのが出てきちゃう感じ。

峻洋 結成した当初から個性的なメンバーがそろったなと思っていて、毎回音源を録るときに各々の人柄が勝手に出て、自然とFo'xの音になるようなイメージですかね。

テラ このバンドでやりたいことはみんな一緒なんで。

──では最後に、メジャーデビュー2年目の意気込みをお願いします。

takao 去年メジャーデビューして以来、「もっといろんな人に聴いてほしい」という思いがどんどん強くなってきているんです。ロック好きの人だけじゃなくて、それこそアニソン好きの人だったり。だから今年は、今まで以上にアニメに寄り添っていこうと思っています。

──アニソン系のイベントに出演したり?

takao はい。今までロックバンド界隈でずっとやってきましたけど、今後はアニソン歌手の方々ともバンバン競演したいなって。やっぱりアニメのお客さんて熱量がすごいんですよ。そういうパワーを感じたいし、こっちもそれと同じかそれ以上のパワーでお客さんに応えたい。俺らはロックがやりたくてロックをやってますけど、だからといってロックバンドとして見られたいとか、あるいはアニメ主題歌を歌ってるからアニソンバンドとして見られたいとか、そういうのは一切なくて。「Fo'xTails」というバンドとして、たくさんの人に自分たちの音楽を伝えていきたいです。

Fo'xTails
Fo'xTails(フォックステイルズ)
Fo'xTails

2013年結成のロックバンド。バンドReyのメンバーだった坂本尭之(B)、テラ(G, Programming)、峻洋(Dr)にtakao(Vo)、鳴風(G)が合流し、首都圏を中心にライブ活動を開始する。ポップなメロディ、ラウドロック由来のエモーショナルなサウンド、テクニカルなプレイで注目を集め、2015年2月、テレビアニメ「黒子のバスケ」第3期エンディングテーマ「GLITTER DAYS」でメジャーデビューを果たす。以降コンスタントに作品を発表し、2016年2月には通算4枚目のシングル「Contrast」をリリース。表題曲はテレビアニメ「Dimension W」のエンディングテーマに採用された。