ナタリー PowerPush - FLOPPY
1年半ぶりの新作完成 写楽&戸田の“放課後”トーク
帰宅部の固い絆
──アルバム全体の方向性に関して、2人で綿密に話し合ったりするんですか?
写楽 そういうのはしないね。
戸田 そうですね。歌詞を作るのは写楽さんなので、そこのコンセプトは写楽さんに一任して。
──じゃあ、戸田くんが「星を看る人」の曲を作ったときも、そういうイメージがあったわけではない?
戸田 そういうのは何も考えずに作曲しています。曲を聴いて写楽さんがどのようなイメージをされて、どのようにアルバムの方向がいくのかっていうのはお任せで。圧倒的信頼関係で成り立ってます(笑)。
写楽 固い絆(笑)。
戸田 帰宅部の固い絆で(笑)。
──決して熱くはない絆ですね(笑)。
戸田 「甲子園、代わりに行ってくれよな!」っていう(笑)。
写楽 「甲子園の砂が買えるらしいよ」っていう(笑)。
戸田 ネットオークションで(笑)。どうにか楽に甲子園に行けないかって、お互い考えています。
──アニメとかマンガでも世界崩壊系のものっていろいろありますけど、何か好きなのってあります?
写楽 少女マンガが基本的に好きなので、少女マンガのそういうSFチックなものが常に頭の隅にある感じですね。ちゃんとしたSFみたいなのはFLOPPYには使わないというか。
──好きな少女マンガ家は?
写楽 萩尾望都さんとか、清水玲子さんとか。
──戸田くんはSFで好きな作品はありますか?
戸田 SFマンガといえばF先生でしょうか。あと、「スター・ウォーズ」というハリウッド映画を完全に知っています。
「バーボン!」と「ファック!」
──壮大なテーマを大作アルバムとしてまとめあげるのではなく、7曲という分量にまとめたのは何か理由があるんですか?
写楽 自分がほかのアーティストの14曲入りアルバムとかを通して聴くのが耐えられないっていうのがあるんです。7曲くらいで濃いのが詰まってるほうが好きですね。作るに当たっても7~8曲なら乗り越えられるんじゃないかっていう気持ちがあって、もし「次のアルバムは16曲入りのを作ろう」って言われたら「あー、無理だー!!」って(笑)。
戸田 これくらいの分量どころか、僕は2曲だったので、本当に申し訳ないです。自分はこれくらいがリミットですので、5曲とか10曲作れと言われたら帰宅させていただきます(笑)。
──充電を経て小道具がバージョンアップしたりとかは?
戸田 一段と衣装が暑くなりました(笑)。「ナイロン」という風通しの悪い超未来素材なんですけど。
写楽 小道具はあんまり変わらないというか、変えないようにしたというか。以前はライブでは電子ドラムがいて4人編成だったんですけど、最近はドラムがいなくなって3人編成で、基本に戻ったという感じですかね。
──基本に戻ろうとした理由というのは?
写楽 FLOPPYは元々歌モノを大事にしようと思って始めたんですけど、ここ何作かはちょっとカッコいいって思われることしたい、みたいな(笑)。音楽やってる人に「FLOPPY、ちょっとカッコいいことやってる」と思われようとしていたんですけど、今回はそれよりも「あ、いい歌だね」っていうふうに思ってもらえたらなあと。
──なんで、カッコよく思われることをやめたんですか?
写楽 あんまり思われないみたいで(笑)。しかも自分も本当にそれがカッコいいのかわからないでやってたので、それよりも単純に自分が歌っていて気持ちいいものをやろうかなっていう。
戸田 そういうコンセプトがあったんですね(笑)。
──戸田くんは、知らなかったんだ?(笑)
戸田 気付いてなかったです。言っていただけたら(胸のポケットに)バラとか挿してきたのに(笑)。
──バラが戸田くんのカッコいいイメージなんだ(笑)。
戸田 いや、よくわからないのですが、何かスポーツカーでライブハウスに来るとかですかね。飲料がバーボンとか。
写楽 バーボンね。
戸田 二言目には「バーボン!」。
写楽 そして語尾は「ファック!」(笑)。
戸田 これはカッコいい(笑)。友達にはなれませんが。
大人の放課後感
──それぞれの充電期間中にバンドをやってたっていうのも面白いですよね。帰宅部体質の戸田くんはソロで1人コツコツと何かをやろうという考えはなかったんですか?
戸田 たまたまそのタイミングで三浦(俊一)さんにNESSのお話をいただいて、ぜひぜひ、っていうことでした。1人で作りたくないということでもないです。時間があれば、放っておけば1人でもどんどんモノは作りますので。
──普通、バンドが充電期間にそれぞれ別活動をするのは、そこで得たものをバンド本体に反映させるためだったりしますよね? でも、お2人がそれぞれやってきたことが今回ダイレクトにFLOPPYに反映されているかというと、そういうわけでもなくて。
写楽 そうですね。オイラはないですね。
戸田 僕もそれは特にないです。
──活動を休止してそれぞれ別の活動をやっていたら、普通だったら解散の危機が訪れてもおかしくないですよね。そういうのがないのが面白いなと。普通に戻ってきて、あくまでもFLOPPYとしてのアルバムを作るというのが。
戸田 元々いろいろやっているので、今さらよそでお互いが何をしていても特に問題がないのではないでしょうか。それが平常ですので。
──普通に将棋部の部室に戻ってきた感じなわけですね。
写楽 自分はそんな感じですね。「1週間バスケ部入ったけど、超キツかったよー」って言いながら戻ってきた感じ。
戸田 家に帰っても母親に怒られるので、将棋部にちょっと顔出すか、みたいな感じで。なぜ、部活に例えるのですか?(笑)
──まあ、FLOPPYは一貫して放課後感があるということで(笑)。それって意識したことがあります?
写楽 今まで意識はしなかったですけど、今言われて、大人の放課後感みたいのはあるかもしれないですね。学生の頃だったら、放課後はいろいろな遊びをしたわけじゃないんですけど、大人だからできる遊びを今してる感じが。遊びって言っちゃったらアレなんですけど、遊びの延長線上にFLOPPYがあるというか。
戸田 もちろん、締切は大変ですが、比較的楽しく音楽を作っていますので、遊びの延長で仕事をさせていただいているといった感じでしょうか。
写楽 去年久しぶりにやったライブ(2011年12月に東京・新宿LOFTで行った、ケラ&ザ・シンセサイザーズとのツーマンライブ)のときは緊張したというか、前の自分がどういうふうにライブを迎えてたのかとか、覚えてないくらい不安でした。でもその後3回ライブをしているので、今はまた通常モードに戻ってるかなって思いますね。また部活例えなんですけど(笑)、1年ぶりに授業に復帰したら追いつくのにすごい必死になりますけど、1年ぶりに将棋部に来たら同じテンションでみんなに混ざっていけるなあっていう。
戸田 将棋部みんな留年してますから(笑)。
写楽 だからFLOPPYは授業部分とかじゃなくてて、本当、放課後だから変わらず同じテンションでできるっていうのがあると思います。
FLOPPY(ふろっぴー)
小林写楽(Vo,Technology)、戸田宏武(Syn,Technology)の2人によるテクノポップユニット。2004年に活動を開始し、2005年に初音源「FLOPPY」をリリース。以降、コンスタントにリリースやライブを行い、幅広い層からの支持を集めている。80年代歌謡曲を思わせるキャッチーなメロディと、近未来的なビジュアル、レトロフューチャーな世界観が特徴。2012年6月6日、およそ1年半ぶりとなるニューアルバム「GREENWORLD」を発表する。