ナタリー PowerPush - FLOPPY
1年半ぶりの新作完成 写楽&戸田の“放課後”トーク
2010年12月にリリースされた「Over Technology」では、行きすぎた科学文明による世界の終焉と再生の兆しを哀愁たっぷりな電子ポップサウンドで描き出し、高い評価を獲得したFLOPPY。1年弱のユニット活動休止を経て、昨年12月にケラ&ザ・シンセサイザーズとのツーマンライブで復活した彼らが、約1年半ぶりとなる新作「GREENWORLD」を完成させた。充電期間を経ての新作となると、過剰な気負いが聴き手にも伝わってくるのが普通だが、なぜか彼らには皆無。その秘訣は、FLOPPYならではの“放課後感”にあった!
なお、特集の最終ページにはメンバー2人によるアルバム全曲解説を掲載。さらに、ナタリー読者に向けて期間限定で収録曲「星を看る人」のフルサイズ音源とオリジナル壁紙の無料配布も実施している。
取材・文 / 小暮秀夫
FLOPPYは外タレ
──FLOPPY休憩期間のあいだ、お2人はそれぞれの活動を精力的に行ってきたわけで、世間でよく言う充電期間とはちょっと違いますよね。充電っていう気持ちで休んだわけでもなく?
小林写楽(Vo, Technology) んー、でも充電期間みたいな感じですかね。それまで2作くらいは(間隔をあけずに)すぐ作ってた感じで、ひと休みしたいなとは思っていました。
──でも、結果、休みが全然ない(笑)。
写楽 でもやっぱ(充電期間を設けると)全然違いますね。
──前作「Over Technology」を作った頃から、休みたいという思いがあったわけですね。
写楽 口癖みたいな感じでしたね。常に「休みたい! 休みたい!」と言ってるんですけど、FLOPPYを始めて去年で7年とかで、その間休んでなかった分、休みたいなと。ただ、休み中は何かほかのことをしようかなとか、そんな感じですね。
戸田宏武(Syn, Technology) 元々、そこまでライブが詰まってるバンドでもないので、大げさに休止という程のものでもなかったです。
写楽 言ったら、本当は無言でそれくらい空いてもいいぐらいのゆるいスタンスだと思うんです、FLOPPYは。気付いたら1年ぐらいライブやってないな、みたいなスタンスだったんですけど、一応「休みます」って言ったほうがいいのかなって(笑)。
──何も言わずに1年ぐらい活動しないバンドって、けっこういますからね。
写楽 そうそう。自分の中ではFLOPPYは外タレっぽい印象があって(笑)。何やってたんだ、この2年間? 実はアルバム作ってました、みたいなそういうスタンスだったんですけど、なにぶん、邦楽はサイクルが速いので、ちゃんと休みますって言わないと、いらないことを考えられても困るので、休みますって。
部室で麻雀をしている将棋部
──写楽くんがやっているGalapagosSは、FLOPPYとはまた違ったタイプのバンドですよね。違ったことをやりたいという思いは前々からあったんですか?
写楽 そうですね、バンドがやりたいというか。バンドサウンドがやりたいというよりは、苦労がしたい、みたいな。
──バンド活動につきものの、人間関係の苦労がしたい、みたいな?
写楽 そういう苦労はあまりしたくないんですけど(笑)、1週間で5本ライブがある、みたいな。そういう苦労ですね。やってる最中は「このツアーが終わったら辞めてやる!」って思うんですけど、いったんそういうのがなくなると、「楽しかったなあ」って(笑)。部活を引退した後、急にOB面してどんどん顔を出しちゃうみたいな、そういう感覚でバンドをやろうと思いました。
戸田 嫌なOBですね(笑)。
写楽 今まで全然出てこなかったのに(笑)。そういう感じで、いかにもなバンド活動がしたいなあと思って。例えば長いツアーだったりとか、リリース、リリースみたいなのをやりたいなってことで、そういうのにつきあってくれそうな人にお願いして、一緒に。
──それはFLOPPYでは不可能なんですか?
写楽 FLOPPYではいろいろ無理ですね。
──戸田くんがつきあってくれない感じ?(笑)
戸田 部活のできない人(注:戸田本人)がいるもので。
──いわゆる帰宅部体質(笑)。FLOPPYはやっぱり帰宅部みたいな感じなんですか?
写楽 FLOPPYは、例えば将棋部なんだけど、部員の誰も将棋が指せない(笑)。そして部室で集まって麻雀をしている。そういう部活ですね。だから誰が部員かわからないけど、みんな楽しい、みたいな。
──とりあえず部室にはいると。
写楽 そうですね。「将棋はいつかやりたい」って人たちが集まっている(笑)。
希望半分、未練半分
──「GREENWORLD」の制作にはいつ頃から着手し始めたんですか?
写楽 去年の11月とか12月くらいに。
──今までと違ったことをやろう、みたいな気負いはなかったんですか?
写楽 逆の気負いというか、変わってないっていうのを出そうとは思いましたね。ここ何作か、出すごとにちょっとずつ変えていったものを、また1stを作ってるときの気持ちで作ったというか。間があいた分、基本に立ち返ろうかなあと思って作りました。
──戸田くんも基本に立ち返ろうという思いは?
戸田 僕はいつでもベストを尽くそうと思っています。
──「Over Technology」では発達しすぎたテクノロジーによって世界が破滅していく、というストーリーが歌詞にありましたよね。その続編的なものを作ろうという思いは?
写楽 世界観的にはその続編のつもりで作りましたね。「Over Technology」で星がダメになってしまって、自分らの新たな居場所を探しにいこうっていう。新しい星へ旅している最中という感じの話です、今回は。
──旅の途中のそれぞれの出来事が曲ごとに描かれていると。
写楽 歌詞はそういう感じですね。まだ旅立ったばかりで、元いた星への思い出だったり未練だったりのほうが強い感じですね。その中で次がこういう星だといいなという希望もありつつみたいな。そういう希望半分、未練半分な感じです。会場限定のシングルとして出した3曲目の「星を看る人」が最初にできた曲なんですけど、まだ旅に出たばっかりって気持ちが書かれていて。その歌詞を書いたときに、アルバムの歌詞の世界観をこういうふうにしようって決めた感じです。
» 帰宅部の固い絆
FLOPPY(ふろっぴー)
小林写楽(Vo,Technology)、戸田宏武(Syn,Technology)の2人によるテクノポップユニット。2004年に活動を開始し、2005年に初音源「FLOPPY」をリリース。以降、コンスタントにリリースやライブを行い、幅広い層からの支持を集めている。80年代歌謡曲を思わせるキャッチーなメロディと、近未来的なビジュアル、レトロフューチャーな世界観が特徴。2012年6月6日、およそ1年半ぶりとなるニューアルバム「GREENWORLD」を発表する。