音楽ナタリー Power Push - NW-WM1Z / NW-WM1A & MDR-Z1R特集

vol. 3 小西康陽

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vol. 1 大友良英
vol. 2 さかいゆう

愛知・ソニーストア名古屋で開催された体験会イベントに登場した小西康陽は、自身の手がけたピチカート・ファイヴ「眠そうな二人」やPIZZICATO ONE「きみになりたい feat. 吉川智子」をNW-WM1ZとMDR-Z1Rで試聴。Walkmanのようなポータブルオーディオプレーヤーにはあまりなじみがなかったという小西だが、「説明書を見ないでもすぐ使えた」と言い、そのサウンドに対しては「自分の部屋がジャズバーになったみたい」と感嘆する。ここでは小西と、Walkman開発者の寺井孝夫氏、ヘッドフォン開発者である潮見俊輔氏によるトークセッションの様子をお届けする。

音楽以外の機能はいらない

──小西さん、事前に新商品を使った感想をお聞かせください。

左から潮見俊輔氏、寺井孝夫氏、小西康陽。

小西康陽 感激しましたね。びっくりするくらいいい音だと思いました。例えばジャズが好きな人って、「オーディオ機器が変わると音もこんなに変わるんだ」っていうのを知ってると思うんです。僕も高校生の頃に学校をさぼってジャズ喫茶とかに行ってさ、そこでスピーカーから流れるベースの音を聴いて「こういう音がいい音なんだな」って思ったことがあって。そういうジャズ喫茶やジャズバーに行って聴いているような、自分の部屋がジャズバーになったような。そんな錯覚がありました。音楽に夢中になって、気が付いたら時間が経っちゃってましたね。

潮見俊輔 ありがとうございます。まさにこのヘッドフォンはマイルス・デイヴィスやハービー・ハンコックの作品のマスタリングをしたニューヨークにあるスタジオでも音響調整を行ったんですね。なのでそう言っていただけると設計者冥利に尽きます。

寺井孝夫 すごくうれしいです。このWalkmanは純粋な音楽専用機としての原点に立ち戻り、使い方も含めて「音楽プレーヤーはこうあるべきだ」というこだわりを詰め込んで開発しました。

潮見 ヘッドフォンについては空気感、つまりアーティストが音を奏でている空間そのものの音を目指しました。音楽が奏でられているその場にいるような雰囲気を出したい、アーティストが伝えたいことに対して何かを足したり引いたりすることがないようにしたいと思いながら作りました。

──小西さんはこのWalkmanはすぐ使えました?

小西 こういう機器は苦手だったんだけど、これはぶ厚い説明書とかを見なくてもすぐ使えた。適当に触ったら音が出ましたよ。

寺井 音楽再生に特化することでシンプルになったので、小西さんにもすぐ操作していただけたのかなと思います。今回のWalkmanでは社内の人間が集まって、“音楽の聴き方とは?”と1から見直すところから始めたんです。1人のリスナー、1人のミュージックラバーとしてWalkmanにはどうあってほしいかを考えて、今回新たなユーザーインターフェースを採用しています。

小西 こんなこと言っていいのかわからないけど、この商品はWalkmanって言ってるけどWalkmanじゃないよね。僕には部屋で聴くための高級なオーディオシステムと同じに見えるというか。

各種メニュー画面の位置関係。

寺井 まさに今回のWalkmanのユーザーインターフェースは、部屋のソファで音楽を聴くようなシチュエーションを想像して設計したんです。メインは再生画面で、そこを中心としてワンフリックでライブラリ、音質調整、再生リスト、ブックマークの各画面を呼び出せるようになっています。CDラックのイメージでライブラリを再生画面の上側に、下側には調整機器をイメージして音質調整機能をレイアウトしました。

小西 なるほど。

寺井 左側には再生リストを配置しています。これは再生している曲を確認するときに、左手にあるCDケースにちらっと顔を向けるイメージですね。そして、“お気に入りの曲を置くサイドテーブル”という感じで右側にブックマークリストを割り当てました。

──音質補正機能に関してもこだわりがあるんですよね。

左からイコライザー画面、トーンコントロール画面。トーンコントロール画面の右上にはソースダイレクトスイッチをレイアウト。

寺井 例えばイコライザーを 10バンド(31Hz~16kHz)に増やしたことで、より自分好みの音質に調整できるというメリットがあるんですが、それに加えて大まかな調整もできるようにバス、ミドル、トレブルのみの3バンドのトーンコントロールも搭載しています。

小西 DJミキサーのEQみたいな感じですね。

寺井 そうです。「ちょっと低音足りないな」とか、「もうちょっと高音ほしいよね」ってときに、気軽に調整できるものとして付けました。各音質設定は、ソースダイレクトという機能をオンにすることで無効にして、すぐに原音に戻せるようになっています。

小西 なるほど。

寺井 音の聞こえ方って、好みの問題以外にも雨が降っても違うし、機嫌が悪くても違うし(笑)。だから、気軽に補正してもらいつつ、原音に戻りたいときにはすぐに切れるようにしています。あと今回は“音の可視化”というのも1つのテーマでして、針の動きでレベルを表現したアナログレベルメーターふうのデザインを用意しています。

本当に生って感じがした

──小西さん、PIZZICATO ONEの「きみになりたい feat. 吉川智子」を試聴した感想はいかがですか?

左から潮見俊輔氏、寺井孝夫氏、小西康陽。

小西 強いインパクトがありました。ボリュームを大きくして聴いたんだけど全然痛くないし、すごくバランスもいいし、何より本当に生って感じがして驚きましたね。

潮見 癖のあるスピーカーやアンプを通して音量を上げて音楽を聴くと、耳が痛く感じたりキーンってなったりするんですけど、生の音だと大きくても聴けるものなんですよね。その生の雰囲気をこのヘッドフォンで感じていただけたのはうれしいです。

小西 あの曲は弦楽四重奏なんですけど、やたらとトレモロを入れてるんですね。それはヒリヒリした感じっていうか、ギザギザした感じを出したくて。全音符に全部トレモロを付けたんですけど、そのトレモロがビビッドで驚いた。

寺井 今言われて気付いたんですけど、音が伸びるときに人間臭さみたいなものもありつつ、安心できない恐怖感のようなものを感じたんですが、それが……。

小西 トレモロですね。多めに入れてます。

潮見 小西さんが出したかった音と比べてどうでしたか?

小西 もっと鮮烈っていうか、鮮明になった気がした。モノクロ写真のコントラストが、なんていうかこう……パチッと合ったような。そんな感じがした。

潮見 よかった、すごくうれしいです。

寺井 確かに、僕個人の感想で恐縮ですが、バイオリンの弦を擦ってる感じやボーカルの近さっていうのと、その後ろにある空間のコントラストにゾクッとしました。

Walkman

NW-WM1Z
NW-WM1Z

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 32万3870円[税込])

容量:256GB

再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません

ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)

本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11

外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm

重量:455g

NW-WM1A
NW-WM1A

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 12万9470円[税込])

容量:128GB

再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません

ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)

本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11

外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm

重量:267g

ヘッドフォン

MDR-Z1R
MDR-Z1R

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 21万5870円[税込])

形式:密閉ダイナミック

ドライバーユニット:70mm、ドーム型(CCAWボイスコイル)

感度:100dB / mW

再生周波数帯域:4Hz~120kHz

インピーダンス:64Ω(1kHzにて)

質量:385g(ケーブル除く)

接続ケーブル:ヘッドフォンケーブル(約3m) / バランス接続ヘッドフォンケーブル(約1.2m)

小西康陽(コニシヤスハル)
小西康陽

1959年、北海道札幌生まれ。1985年にピチカート・ファイヴでデビュー。豊富な知識と独特の美学から作り出される作品群は世界各国で高い評価を集め、1990年代のムーブメント“渋谷系”を代表する1人となった。2001年3月31日のピチカート・ファイヴ解散後は、作詞・作曲家、アレンジャー、プロデューサー、DJとして多方面で活躍。2009年にはアメリカ・ニューヨークのオフ・ブロードウェイで上演されたミュージカル「TALK LIKE SINGING」の作曲および音楽監督を務めた。2011年5月に「PIZZICATO ONE」名義による初のソロプロジェクトとして、アルバム「11のとても悲しい歌」を発表。2015年6月には2ndアルバム「わたくしの二十世紀」をリリースした。2016年8月にはピチカート・ファイヴの初期作品「カップルズ」と「ベリッシマ」のリマスター盤を、CD、アナログ、配信の3パターンで復刻リリース。また9月には、音楽を担当したHuluオリジナルドラマ「でぶせん」のサウンドトラックが発売された。