音楽ナタリー PowerPush - fhána
アニソンシーンを疾走中 広がっていく4人の世界
好きなものの空気感がみんな似てる
──約半年ぶりのリリースとなる新曲「星屑のインターリュード」は、放送中のテレビアニメ「天体のメソッド」のエンディング主題歌になっています。fhánaらしい切なさはにじませつつも、疾走感のあるサウンドがすごく心地いい仕上がりですね。
佐藤 これまでタイアップしてきたアニメと違い、今回はオリジナルテレビアニメなので原作がなかったんですよ。なので、オファーをいただいた段階でできていた3話分くらいの脚本とキャラクターデザインなんかを見せていただいてイメージを膨らませていきました。ある意味、いつもよりは事前情報が少なかったと言えるんですけど、脚本の久弥直樹さんはfhánaのメンバーが好きなゲームの脚本をやってらっしゃる方だったので、「わかる!」「この感じだ!」っていう感覚があって。スッとその世界に入っていけたから逆に作りやすいところもあったんですよね。その結果、fhánaがメジャーデビューさせていただく前にやっていた音の世界観に近い雰囲気というか、僕らがもともと持っていた要素を素直に出せたところもあって。
kevin 僕らは好きなものの空気感がみんな似てるんですよ。なので「天体のメソッド」という作品からは共通したイメージを受け取ることができて。
yuxuki うん。そこはすぐに共有できました。ただ、曲自体は佐藤さんからスムーズに上がってきたんですけど、アレンジが今回はけっこう大変だったんですよ。
佐藤 そうだね。今回のアレンジは、メロディの雰囲気から1990年代初期のJ-POPのキラキラした感じをコンセプトにしたんです。その懐かしい切なさみたいな雰囲気はアニメにも合うと思ったし。で、実際デモを作ってみたところ、あまりにもベタに1990年代っぽすぎて2014年にfhánaが鳴らす音としてはちょっといなたい、ちょっと普通に古臭いぞみたいな感じになってしまって(笑)。なのでそこから時間をかけてアレンジを詰めていったんです。
“古今東西ダンスミュージック祭り”
──具体的にはどのように手を加えていったんですか?
佐藤 まずはリズム。今回はfhánaとして初となる四つ打ちにしようっていうのは決めていたんですけど、普通にやってしまうとシンプルになりすぎてfhánaとしての多様性が出ないなと。なのでちょっとブラックミュージックを意識したベースラインを入れることで、ノリに躍動感を出すことにしたんですよ。
──なるほど。
佐藤 で、そこからyuxukiくんに今風のEDMっぽいシンセの音を入れてもらい、さらにストリングスも入れることにしたんですけど、そのストリングスアレンジにはまたすごく時間をかけたんです。結果的には5回くらい書き直して、歌と歌の合間に合いの手のように入ってくる速いオブリっぽいフレーズにしたんですよね。それはちょっとディスコソウル的な感じのストリングス使いになっていて。
kevin 結果、基本は1990年代っぽい曲ではあるけど、それぞれの音を取り出して聴いてみるとけっこういろんなことをやっているっていう。
yuxuki “古今東西ダンスミュージック祭り”みたいになっててけっこう面白いんですけど(笑)。
──まさにfhánaらしい多様性が出たと。
佐藤 ですね。いろんな音を不思議なバランスでまとめることで、一言では言い表せないオリジナリティにつながったと思います。
yuxuki で、なおかつそれをサラッと聴かせるっていうね。
「フリーキックは遊び」という感覚
──towanaさんの歌声もサウンドにマッチしていますね。前回のインタビューではアップテンポの曲を歌うことに慣れていないというお話をされていましたが、今回はすごく気持ちよさそうに乗りこなしている感じがあります。
towana 3枚目のシングル「divine intervention」も速い曲だったので、ちょっと慣れてきたのかも。ただ、私はバンドサウンドになじみがあるので、四つ打ちのリズムに声を当てていくのがちょっと大変ではありましたね。キーの高さは自分に合っていたので、気持ちよく歌えました。
佐藤 fhánaのメロディーは日本的な頭打ちじゃなくて、かなり裏拍を意識しないといけないからね(笑)。キーについては、今までの曲はわりと低いところから高いとこまでのダイナミクスがすごくあったんですけど、今回は全体的に高いところで落ち着いてるね。
towana そうそう。低いところがないから歌いやすいんですよ。私は低いところが苦手なので(笑)。
──あと個人的には余韻のある長めのアウトロがすごく好きで。
yuxuki 最後の最後にまさかの転調をするアウトロですね。ラスサビでは転調しないのに(笑)。
佐藤 普通にスッと終わってもよかったんですけど、もう1つ深みを出したいなと思ったのでちょっとミニマルミュージックっぽいアウトロをつけたんですよ。あれはもう僕の中では完全に遊びの部分ですね。
──アニメの中では使われない部分ですしね。
佐藤 そうなんですよ。アニメで流れるパートはものすごく緻密に考えて作るんですけど、Dメロや間奏、アウトロでは好きなこと、やりたいことを盛り込みがちですね。サッカー元日本代表の選手で中村俊輔さんっているじゃないですか。彼は緻密にいろんなことを考えながらサッカーをしているんですけど、唯一フリーキックは自分の中で遊びなんだっていう発言をしているんですね。なんかそれと同じ感覚だなって僕は勝手に思ってるんですけど。その気持ちわかるわあ、みたいな(笑)。
kevin 佐藤さんはめっちゃサッカー好きですからね。
yuxuki うん。夜中の4時頃に「起きてますか?」ってLINEが入ったんで仕事の話かなと思ったら、「ウイイレやりませんか?」って言われたこともあるし(笑)。
佐藤 サッカーはいいですよ。この件、ぜひ記事の中に入れていただきたいんですよね。インタビューで話してもなぜかいつもカットされてるんで(笑)。
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収録曲
- 星屑のインターリュード
- ソライロピクチャー
- 星屑のインターリュード(Avec Avec “twilight town” Remix)
- 星屑のインターリュード(Instrumental)
- ソライロピクチャー(Instrumental)
fhána(ファナ)
佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga(s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)という3人のプロデューサーと、女性ボーカリストtowanaによる4人組ユニット。それぞれ個別に活動していた佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人が2009年に出会い、ボーカリストを固定しないユニットとして始動した。2012年秋にはゲストボーカルの1人だったtowanaが正式加入。「僕らはみんな河合荘」「ウィッチクラフトワークス」「ぎんぎつね」「有頂天家族」といったアニメ作品でテーマソングを担当して高い評価を集めた。さらにChouChoや相沢舞のプロデュース、さよならポニーテールやDECO*27の楽曲のリミックスなども行っている。2014年11月5日にシングル「星屑のインターリュード」をリリースした。シングル表題曲はアニメ「天体のメソッド」のエンディング曲。