向井秀徳が語るテレキャスター論~新番組「Fender Radio Tokyo」収録レポート&インタビュー (2/2)

向井秀徳インタビュー

愛でてりゃいいんですよ

──収録を終えての率直なご感想を教えてください。

この雨の日に原宿でギターの話をする、というのがいいなと思って。

──雨の日がいい?

雨降りの朝に……(少し考えて)とても切ないや。なんとなくたそがれて、相づち打つよ。僕の弱さと君のジンジャーエール。なんとなく。安心な俺たち、旅に出ようぜ。安心な僕らはギター弾こうぜ。……みたいな感じですかね。

──(笑)。

ところどころに不安を生じさせるフレーズですけども。

──JASRACあたりからおとがめがありそうな。

ねえ?

向井秀徳

向井秀徳

──(笑)。ラジオでギターのことを話すのは、いいものですか?

まあ、飲み屋が一番楽しいでしょうね。Fender Flagship Tokyoが焼き鳥の1本でも出してくれたら、もっと楽しい場所になると思うんだよね。タレのね。タレの焼き鳥を2、3本出してほしいね。

──Fender Flagship Tokyoにはカフェが併設されていますが、カフェで焼き鳥は難しいでしょうね(笑)。

うん。

──収録でも話されていましたが、カフェが入っている楽器店というのはなかなか珍しいと思います。

そうだね。ギターを見るだけでも楽しいですから、美術館に来るような気持ちになる人もいると思うし。そこで腰を落ち着けてじっと美術品を見て時を過ごせるっていうのは、いい場所だなと思いますね。

──ゆったりとした展示が一般的な楽器店とは異なりますし、階段などには多数の写真パネルも飾られていて、確かに美術館っぽさがありますね。

一般的な楽器店であれば、バンダナを巻いた店員のお兄ちゃんが「これどうっすか? これなら初心者の方でもイージーに使えますよ」みたいに声をかけてきて「話しかけないで!」となるようなこともあると思う。洋服店でどぎついメイクのお姉さんから「これ羽織ってみませんか?」と話しかけられてドギマギする、というような経験は皆さんもあると思うんですけど、Fender Flagship Tokyoはギターという楽器を愛でる人たちの集まりの場ですからね。愛でてりゃいいんですよ。

──「愛でてりゃいい」(笑)。

「今なら何回払いだとこれだけお安くなりますよ」みたいな、そういう商売っ気があるわけではないと思うんですよ。「とにかく見てください、それでもし触りたくなったら触ってくださいよ」というふうに開かれた場所だと私は思っている。そうあってほしいと思っている。だから「これからギターを弾こう」とか「買い換えよう」とかそういう思惑とは関係なしに、ただ単純にここに来て、「テレキャスターは丸いな」とか「かわいいな」「キレイだな」と感じながら、そういうふうに時間を過ごせる場所であってほしいなと思ってるんだ。

──それを噛み締めながら、ちょっとコーヒーでも飲んで。

そうだね。

向井秀徳

向井秀徳

痛み分けっつうか

──テレキャスターの魅力について、収録の中で話しきれなかったことなどは何かありますか?

私、ギターを破壊するんですよ。破壊しようと思ってするんじゃなくて、破壊せざるを得なくなるんだけど。というのは、私はギターを道具と捉えておりますけども……例えば鉛筆を使い続けると、先がなくなっていくわけだね。すると新しい鉛筆に取り換えるわけですよ。つまり消耗品であると。ギターもある意味そういうふうに捉えているというか。もちろん大事に使うべきなんだろうけど、ギターというものを自分の感情の発露装置として使っておるもんで、そんな穏やかに扱うことはできないんだな。「この楽器とともに自分の魂を削っていってやろう」と。「燃やし尽くそう」と。実際にギターに火をつけることはないが、そういう気持ちで利用しているわけです。

──とてもよくわかります。

となると、私自身にもダメージがありますけども、楽器にもダメージが積み重なる。まず一番に影響されるのがピックアップのコイルや配線、電気回路の部分なんだけどね。ほとばしる汗がギターに染み付いて、塩分を含んだ水分が回路に侵食していく。そこでケーブルがダメージを受けて断線する、みたいなことはよくある。塩害というわけだね。そうすると、物理的にギターの音が出なくなる。「終わった」みたいなこともある。リアピックアップが一番多いね。テレキャスターのフロントピックアップにはカバーがあるから、順番的にいったらそのあとになるわけだけど。

──テレキャスターのフロントピックアップには金属カバーがついているのが普通ですね。ノイズ対策と物理的な保護が目的だと聞いています。

木材パーツにおいても、体に抱えて弾くわけだから、体の動きと同時にいろんな方向にひねくれ曲がってくるわけよ。私のハートみたいに。ネックを握って力任せにひん曲げたりはしていないわけですけども、それでチューニングが合わなくなるみたいな。あるよね、木だから。どういう状態が木にとってベストなのかってことも私にはわからんわけで、どうにかこうにかいい付き合いができる時間は必ずあるんだけど、それは過ぎ去っていくことが多い。その繰り返しですね。

向井秀徳

向井秀徳

──つまり、身体的にフィットする感覚がテレキャスターには強くあると。

身体の状態とリンクしているわけだね。私はテレキャスターしか使ってないからほかの楽器とは比べようがないんだけども、たぶんテレキャスターはそのリンク度合いが強いんじゃないかと私は思ってる。だから、痛み分けっつうか。

──痛み分け(笑)。一緒に戦っている以上、自分が傷付いたらちゃんと道着も破れないとおかしい、みたいな感覚?

そうだね。道具としてはそう思ってます。「そうか、お前は逝ったか。じゃあ次だ」つって、ある意味軽やかな付き合い方といったらいいんでしょうかね。「これが俺の同志」みたいなことでもないわけですよ。

弾けないんだもん、だって

──例えば今「理想の1本を作ってください」と言われたとして、どんな扱い方をしても常にベストコンディションを保ってくれるような楽器は求めない?

人によってはそれが感性にフィットする場合もあるんだろうけど、私の場合はない。自分の使い勝手に合わせてアレンジすることはあります。ただ、それはずっとは続かないです。

──今この取材をしている場所がFender Custom Shopのフロアですけども、仮にここで新しいテレキャスターを作るとしたら、今ならどういうものをオーダーしますか?

私はカスタムオーダーはしないね。来たものに対して合わせる、みたいなことだろうね。「このギターは死んだ。次だ。次はこれか、よしわかった」と。じゃあそれをどう鳴らすか、ということをまず考える。それがフェンダー・テレキャスターであれば、私は鳴らせると思っているわけだ。個体によって全然違うといえば違うんだけど、現状フェンダーが作ったテレキャスターという種類のものであれば、私は信頼感を持って手に取ることができますから。だから「おニューよろしく、OK」みたいな。

──いうなれば、人との出会いに近い感覚なんですね。「こういう理想の人材を作り上げよう」という考え方ではなく、「出会った人とどう付き合うか」。

うん、そうですね。

──その中で、“フェンダー・テレキャスターという一群”の中から来た人であれば、だいたい話が通じるであろう信頼感があると。

そう。だから仮にフェンダーの長い歴史の中で「あれ?」と思うような、「テレキャスターの思想を全部一新しました」みたいなことが起きていたとしたら、使うことはできなくなってると思うんだよね。ずっとフェンダー・テレキャスターのサウンド、トーン、鳴りようというのは、根本的にはまったく変わっていないわけよ。だから私は使う。使うというよりは、それ以外使えない。別のギターを渡されたら、軽音楽部に入りたての女子中学生ぐらいにしか弾けないと思いますよ。弾けないんだもん、だって。

──“話が通じない”わけですよね。

そうなんですよ。世の中にはテレキャスター以外にもカッコいいギターがたくさんある。それを鳴らしている誰かの姿を見て、音を聴いて「最高だね」と思うんだけど、見るのと鳴らすのとは違うわけで、私には鳴らせないですね。そういうことなんですよ。

向井秀徳

向井秀徳

腐れ縁ですよ

──そう考えると、もしこの世にテレキャスターがなかったらと思うと恐ろしいですね。

最初にテレキャスターを使って「これだ」と思えたから、今につながっているわけだけども。もし最初の段階で私が……例えば釣り竿を手に入れて、そこで一発カツオを一本釣りしていたとしたら、私は一本釣りの漁師になっていたかもしれんし。

──なるほど! そういう意味でも、やっぱり“出会い”なんですね。

そうすね。これはもう、腐れ縁ですよ。テレキャスターを選んだんじゃなくて、出会ってしまったということだから。

──「なぜ山に登るのか?」「そこに山があるから」みたいな感じで、そこにテレキャスターがあったから。

そういうことなんだろうね。

──では最後にお聞きします。ズバリ、向井秀徳にとってテレキャスターとは?

痛み、ですね。

──やはりそこが肝なんですね。

うん。痛いんですよ。でも、自分の痛みを確認できるというのは悪くねえなと思って。

──ちゃんと痛みを感じられるからこそ、余すことなく感情の発露ができる?

かもしれないね。

向井秀徳

向井秀徳

FENDER FLAGSHIP TOKYOとは?

原宿・表参道エリアに位置する、フェンダー世界唯一の旗艦店。地下1階から地上3階までの全4フロアで構成され、グローバルで展開されているギターやベースから、ここでしか手に入らない旗艦店限定モデルまで、幅広いラインナップを取りそろえています。さらに、アンプやエフェクター、アクセサリーなども充実しています。

また、選ばれし職人によって生み出される最高峰のギター・ベースを取り扱うフェンダーカスタムショップ製品を100本近く展示・販売する専用フロアも設置。カスタムオーダー専用ルームでは、専任スタッフとともに理想の一本をオーダーすることが可能です。

店内には、フェンダー初のファッションブランドとして、「WEAR THE MUSIC = 音楽を纏う」をテーマに独自のファッションスタイルを提案する「F IS FOR FENDER」を展開。さらに、フェンダー唯一の常設カフェ「FENDER CAFE」やイベントスペースも併設し、トークショーやライブ、ワークショップなど、多彩な音楽体験を不定期で提供しています。ここは、楽器販売にとどまらないライフスタイル提案型の空間として、音楽ファンの交流拠点となっています。

所在地
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