花王「Essential THE BEAUTY」のテレビCMおよびブランドムービーに使用されているyamaの楽曲「世界は美しいはずなんだ」が11月24日にリリースされた。
「世界は美しいはずなんだ」は大木伸夫(ACIDMAN)が書き下ろした楽曲。疾走感にあふれたサウンドに乗せて、未来への希望が高らかに歌い上げられている。この曲は広瀬アリスが出演している花王のヘアケアシリーズ「Essential THE BEAUTY」のテレビCMやブランドムービーにも使用されており、「誰もが自分の髪に自信を持ち、もっと自分の可能性にチャレンジしたくなるような世の中になってほしい」というテーマの映像と共鳴するような作品にもなっている。
この曲のリリースを受けて、音楽ナタリーはyamaと大木の対談をセッティング。「世界は美しいはずなんだ」の制作秘話や、「Essential THE BEAUTY」のブランドムービーの印象などについて語り合ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / 藤田二朗(photopicnic)
どんな化学反応が起きるか見てみたい
──yamaさんの新曲「世界は美しいはずなんだ」は、大木伸夫さんの作詞作曲による楽曲です。まずはお互いの印象を教えてもらえますか?
大木伸夫(ACIDMAN) yamaさんの存在は知っていたんだけど、楽曲提供のお話をいただいてから改めて曲を聴いて。とにかく声が素晴らしくて、すぐに「やります」とお返事しました。すごく深みがあるし、憂いもあって。「どんな経験をしてきた人なんだろう?」という。
yama ありがとうございます。ACIDMANの音楽はもともと好きで、曲が素晴らしいのはもちろんですが、大木さんの透明感のある声もすごくいいなと思っていたんです。「この方に曲を書いていただいて、どんな化学反応が起きるか見てみたい」と思い、お願いさせていただきました。大木さんは大先輩ですし、ACIDMANはレジェンドなので、承諾していただいたときは「ありがとうございます!」という感じでしたね。
──「世界は美しいはずなんだ」は、花王のヘアケアシリーズ「Essential THE BEAUTY」のテレビCMとブランドムービーに使用されています。
yama 実は「Essential」は以前から使ってたんですよ! 誰もが知ってるブランドだし、CMやブランドムービーに使用してもらえるのは、とてもありがたいしうれしいですね。ブランドムービーでは、仕事の悩みを抱えた女性がヘアケアをすることで気持ちがリセットされて、前向きになっていく姿が描かれていて、楽曲の世界観ともしっかりつながっていると思います。
大木 そうだね。かなりストイックな世界観の曲なので、「ヘアケア商品のCMと合うのかな?」と思っていたんですけど、すごくハマっていますよね。さすが花王さん(笑)。
yama 「世界は美しいはずなんだ」のMVも、このブランドムービーと同じようなストーリーで。現代社会を生きていくうえで悩みや葛藤を抱えつつも、生活の中で彩りになる何かを見つけるというテーマになっています。
大木 楽曲自体にしっかりテーマがあるし、ストイックな世界観の作品なんですけど、制作自体はすごく自由にやらせてもらいました。最初はyamaさんの「春を告げる」をイメージして作ろうと思っていたんですけど、yamaさんのスタッフサイドから「ACIDMANの『式日』の雰囲気でお願いしたい」という話があって、「なるほど」と。yamaさんとしても、新しいイメージを打ち出したいタイミングだったのかもしれないですね。
yama デモ音源を聴かせてもらったとき、あまりにも素晴らしくて、笑みを抑えきれませんでした。歌詞も聴き手に訴えかけるものがあって、ジーンと来て。「本気で歌わなくちゃいけない」という気持ちがさらに強くなりました。
「世界は美しい」と僕らは言い切ることができるはず
──歌詞からは「世界を肯定したい」という意思を感じます。例えば「あの銃もあの花も最初は一つだったんだ」というフレーズ1つ取ってもそうですが、大木さんの哲学や価値観がしっかり込められていて。
大木 そうですね。yamaさんのために書いた曲なんだけど、僕自身のアイデンティティや「この世界に対して歌いたい」と思っていたことも表現したくて。yamaさんにそういう部分がなければ外そうと思っていたんだけど、実際に会って話したときに「大丈夫だな」と確信したんです。世界の美しさを信じようとしていたし、一方では、若い世代特有の葛藤や存在の不安定さもあって。「世界は美しい」と僕らは言い切ることができるはずなんですよ。僕はいろいろな経験を経て、そこにたどり着いたんだけど、yamaさんはまだ不安を抱えているし、自分自身の揺らぎとも戦っている最中だと思っていて。ときには葛藤したり、反抗することもあるけど、心の中では世界を信じたい。だからこそ、闇に向かうのではなくて、星に手を伸ばそうとする瞬間を描きたかったんです。
yama 今、大木さんが話してくれたことがすべてですね。1番の歌詞では「信じないさ」と歌っているんだけど、2番は「信じたいんだ」となっていて。自分自身、「世界は美しい」と言い切れない部分がまだあるし、自信もないんですけど、「それでもこの世界で音楽を続けたい」という思いは強くあるんです。そういう状況と重なる歌詞だし、自分自身も救われた気持ちになりました。あと、「きれいなだけでは終わらせたくない」という意識もありました。透明感のある曲なんだけど、必死に手を伸ばしている姿も表現したかったので。
──2番の冒頭には「海の向こうの国で / 子供達がゴミと捨てられて」というシリアスな歌詞もあります。
大木 今も世界のどこかで実際に起きていることなんです、それは。臓器売買によって子供たちが命を落としているという現状は絶対に忘れちゃいけないし、そういう残酷さもしっかり描きたくて。この歌詞を書いたのも、yamaさんの覚悟が決まっているのがわかったからなんです。今は数秒で曲の良し悪しを判断される時代だし、僕らが音楽を始めた頃よりも、ずっとシビアだと思うんです。その中でもyamaさんは「絶対に歌い続ける」と決めていて。だからこそ僕もこの歌詞を書けたし、yamaさんにはこの曲を伝えるメッセンジャーになってほしかったんですよね。
yama 臓器売買のことは大木さんからも聞いていたし、歌うときは常にその状況をイメージしています。それが最後のサビ(「世界は美しいはずなんだって / 未来は美しいはずなんだって / 誰かが歌っていた / そんな言葉を信じたいんだ」)につながるので、すごく大事な部分だと思います。大木さんは、そういう楽曲のイメージもお話ししてくれて、レコーディングにも立ち会ってくださったんです。
大木 レコーディングの一発目に発したyamaさんの声がとにかく印象に残っていて。低音域がすごく深くて、高い音は一気に抜けていく気持ちよさがあるんですよ。エンジニアとも「こんな声、聴いたことがないね」と話してました。ディレクションと言っても、yamaさんの思うように歌ってもらって、最高のパフォーマンスが出せるようにしていただけですけどね。歌い終わったあとのトークバックも、「いいね!」ってすぐ返してました。ディレクターが「ちょっと待ってね」とか言い出すと、ボーカリストは不安になるので。
yama あれはそういう配慮だったんですね(笑)。ありがとうございます。
次のページ »
「春を告げる」のその先