=LOVE|指原莉乃プロデューサーが今感じていること 作詞のこだわりや待望の1stアルバムを語る

競争意識はあったほうがいいのか

──新曲の中で一番難産だった曲はどれですか?

指原莉乃

私は基本的に筆がバリ早で、一瞬で書けないと気持ち悪いんですよ。一度立ち止まっちゃうとダメなので、集中して一気に書き上げちゃうんですが、「セノビーインラブ」はかなり考えて歌詞を書きました。というのも、曲の中で歳の差の恋を絶対に成就させたくなかったんですよ。イメージとしては高校と大学くらいの歳の差なんですけど、解釈の仕方にしてはもっと幼い子とおじさんとの恋にも見えるし、その内容で最後にキスして終わったら気持ち悪いじゃないですか(笑)。途中まで書いてて「ヤバい! このままだとキスして恋が成就しちゃう」と思って、「絶対に成就させないぞ」というこだわりを大サビに詰め込みました。歌詞の中とは言え、変な関係にさせたくないんですよ。

──ほかにプロデュースするうえで徹底していることはありますか? 自身のアイドルとしての経験も踏まえて、これだけは絶対にやらないようにしている、ということなど。

うーん、総選挙(「AKB48選抜総選挙」)みたいなこととか……? でも、私自身はそのおかげでかなり成長しましたし、難しいですよね。48グループって精神的にめっちゃ強い子が多いんですよ。特に私の同期や先輩方、ちょっと下の後輩あたりは。いろんな人と比べられたりする経験を経ていろんなことを諦めた感情もあり、よくも悪くもメンタルが強いんです。それと比べたら=LOVEは悪い意味だけじゃなく繊細です。わからないんですけどね、競争意識があったほうがいいのかどうか。なかったらそれはそれで精神的に弱くなっちゃうし、いまだ模索中です。

──どちらにしろ、=LOVEではメンバー同士でセンターの座を懸けて競うような企画はやるつもりはなさそうですね。

それは私側の根本的な問題もあって、「この子がセンターの曲を書いてください」とお願いされても詞を書けないんですよ。例えばファン投票で1位になった子のセンター曲を書く、みたいな。自分が書きたいと思ったときに一番いい曲を書けると思っていて、秋元さんみたいにどんなときでもその子に一番合った曲を提供することはまだできないんです。それと、もちろんメンバーに順位を付けるのにも抵抗はあります。

──総選挙をはじめ、秋元さんはファンも最初は困惑するようなサプライズ企画をあえて仕掛けていく人ですが、指原さん的にはそこも真似はできないと。

どうなんでしょう。今まで自分が振り回されすぎて(笑)、やる側になるのを考えられないかもしれないですね。AKBメンバーはそういう環境に慣れすぎて、じゃんけん大会とかもみんな全力で楽しめるタイプでしたが、=LOVEに「じゃんけん大会やるからコスチュームを自分で選んで、好きなように自己プロデュースして」と言ってもまだ何もできなくて終わってしまうと思うんです。やってもそんなに面白くならないだろうなという気持ちと、そもそも自分がそんなに仕掛けたくないという気持ちがあります。振り回されるのも楽しかったですが、秋元さんのアイデアと当時のAKBのメンバーだったからこそあそこまで盛り上がったんだと思います。

──変にバズることを狙うのではなく、楽曲とライブパフォーマンスで人気を広げていくのが一番の近道かもしれません。

でも、楽曲に関してはどんな曲が誰に刺さるかわからないですし、王道の曲ばかりやっていてもファン層は広がらなくて。秋元さんが一番褒めてくる=LOVEの曲って「ようこそ!イコラブ沼」なんですよ。なんか意外ですよね。ホントに何が誰にハマるかわかならいから、いろんな曲をいろんなタイミングでやらなきゃいけないんだなと思っています。一方で、自分が好きな王道の曲ばかりやりたいというもどかしさもあるんですけど。

プロフェッショナルな魂を持ってほしい

──楽曲以外の面で、アイドルグループをプロデュースしていて難しいと感じることはあります?

まあみんな若い女の子なので、メンバーにいろいろありますよね。これは=LOVEの話というわけではなく、今のアイドルは昔と比べて辞めることに対してのハードルが下がったなと感じています。私もHKT48時代、最後の数年は卒業のタイミングを頭の隅で考えつつ活動していたんですけど、すぐに辞められなかったのは、秋元さんにどうしても言えなかったのが理由の1つなんです。グループに向き合って素敵な曲を書いてくださる秋元さんに対して申し訳なさがあって、意を決して口に出して言えたときが本当に卒業するときでした。でも、辞めることへのハードルが下がったというのも、本人たちが自由に生きている証なのかもしれません。自分の好きなように生きるのが今のアイドルのあるべき姿なんだと思います。「私の時代はこうだった」と言うつもりはないですし、今後=LOVEのメンバーから「辞めたい」と言われたら無理に止めることはしないです。そもそも、辞めたいと思うのはアイドルに限らず普通のことじゃないですか。「仕事辞めたいなー」と思うことは誰にでもあることで、アイドルに関しては芸能がすべての幸せではないですし、その子自身の人生ですから。メンバーにはいろいろ葛藤や悩みがあって、それと向き合うのは大変ですけど、楽しくもありますね。秋元さんにはそこまでやらないほうがいいって言われますけど。

指原莉乃

──それは、プロデュース以外のことで深入りするなという意味で?

「1人でタレントをなんとかできるはずがないから、マネジメントはマネジメントの人たちに任せなさい」ということですね。クリエイティブのプロデュースに全力を注げって。とは言え、=LOVEは48グループほど人数が多いわけではないので、見れる限りのことは見ようとも思っています。

──指原さんはときどき、LINEでのメンバーとのやり取りをスクリーンショットしてTwitterに上げたりしていますが、なんでも相談しやすい関係性なんでしょうか?

どうなんだろう(笑)。そうでもないと思いますよ。私が秋元さんに「卒業します」と言うのが怖かったように、わりとハードルがあると思います。この間、なぎさから「MVでやりたいことがある」とLINEで連絡が来て、「えっ!」とびっくりしたんです。いつもは私が決めたことを「わかりました!」と楽しんでやってくれるし、メンバーから意見を言われるのが初めてだったんですよ。めっちゃ怖くて、自分のやりたいことに振り切ったアイデアが送られてきたらちょっとショックというか。監督は誰々で、照明をこうしてほしいとか、こう見られたいという思いを詰め込みすぎたアイデアが来たらどうしようと思いつつ、その意見は尊重してあげたいなと考えてドキドキしていたんですけど、「どんなことがやりたいの?」と聞いたら、「くまの髪型とツインテールをやりたいです」と言われて安心しました(笑)。「それはもちろんやろう」と返しました。

──蓋を開けてみたらかわいらしい話だったと(笑)。そういうふうに活動内容のことで連絡を取るのは珍しいんですね。

LINEはけっこうしてると思いますけどね。コンサートのあとに「ここがよかった」と話したり。それで言うと、≠MEメンバーのほうがガツガツ送ってきますね。若いから私に対してあまり怖さを感じてないんだと思います。=LOVEのほうが慎重で、じっくり考えて連絡してきます。全然普通に連絡してくれてもいいんですけど。

──メンバーへのインタビューでは、みんな口をそろえて指原さんのことを「神」と言っていて、畏れも入ったリスペクトの感情を抱いているのを感じました。

指原莉乃

いやいやいや、聞かれたら「神」って言うしかないですもん(笑)。でも、けっこうドライな関係ではあるかもしれないです。最近はコロナの影響で機会がないですが、スタッフさん含めメンバーとごはんを食べに行くとき、いつもめちゃくちゃ緊張しますから。

──それはメンバーのほうもすごく緊張してると思いますよ(笑)。

してますよね。だから全員が緊張していて、しょうもない話をしていて終わっちゃうんです(笑)。でも、プロデューサーってそんな感じなのかもしれないですね。メンバーのパーソナルの部分も詳しくは知らないんです。

──最後に、=LOVEを今後どんな存在にしようと思っているか、グループとしてのビジョンを聞かせてください。

いい意味でプロフェッショナルな魂を持ってほしいと思っています。私が見た先輩方はどんなに忙しくてもカッコよかったですし、精神的に参っていた瞬間はあっても強かったんですよ。変なわがままも言わず、自分のことを客観的に見ていて。=LOVEメンバーもわがままは言わないんですけど、これから売れてきたときにどうなっちゃうか怖いんです。贅沢な想像かもしれませんが、例えば1日にCM3本撮るみたいな状況になったとき、今のままだったら体力的にも精神的にも潰れちゃうんじゃないかって。なので今のうちにメンバーの心臓を強くしたいですね。すでにかなり成長してプロフェッショナルになってきているんですけど、人気に対して気持ちが追い付くようになってくれたらうれしいです。そしてそんな彼女たちを支えられるプロデューサーやマネジメントでいないといけないなと思っています。

ツアー情報

=LOVE全国ツアー「全部、内緒。」
  • 2021年5月8日(土)茨城県 結城市民文化センター アクロス 大ホール
  • 2021年5月15日(土)福岡県 福岡市民会館
  • 2021年5月21日(金)埼玉県 さいたま市文化センター
  • 2021年5月23日(日)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2021年5月29日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2021年6月15日(火)栃木県 栃木県総合文化センター
  • 2021年6月22日(火)東京都 中野サンプラザホール
  • 2021年6月26日(土)福島県 とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター)
  • 2021年7月7日(水)神奈川県 横浜アリーナ

2021年5月19日更新