=LOVE|指原莉乃プロデューサーが今感じていること 作詞のこだわりや待望の1stアルバムを語る

5月12日にリリースされた=LOVE待望の1stアルバム「全部、内緒。」。本作はシングル計8作の表題曲のほか、指原莉乃プロデューサーが新たに詞を書き下ろした新曲8曲を収録したボリュームたっぷりの内容で、右肩上がりに人気を拡大させている=LOVEの魅力がふんだんに詰め込まれている。

音楽ナタリーでは2組に分けて行ったメンバーインタビュー(参照:=LOVEインタビュー|待望の1stアルバム「全部、内緒。」発売、4年間で培った表現力で魅せる新曲8曲の聴きどころは?)に引き続き、「全部、内緒。」の特集を展開する。今回はグループの全楽曲の作詞を手がける指原Pのインタビューを掲載。歌詞についてのこだわりや多彩なアルバム曲の制作経緯、アイドルをプロデュースするうえで感じていることなど、彼女が語った言葉を1万字超えの長尺テキストでお届けする。

取材・文 / 近藤隼人 撮影 / 佐々木康大

初作詞はあまりいい思い出じゃない

──今日は=LOVEのことをたっぷり語っていただこうと思いますが、こういう機会は今まであまりなかったんじゃないですか?

確かに! 初めてかもしれないですね。

──アルバムの話を伺う前に、まずはグループの始まりから振り返らせてください。=LOVEは4年前の2017年に結成されましたが、当時どんなアイドルグループを作ろうと考えてプロジェクトを始めたんでしょう?

=LOVE

私自身コンサートがすごく好きなので、生歌でちゃんと勝負できる、ライブに強いグループですね。コンセプトをかっちり決めるというより、曲も含めて自分の好きなものを作ろうと思ったのが最初です。

──オーディションにおけるメンバー選考の基準は何かあったんですか?

ちょっと誤解を招く言い方かもしれないですが、=LOVEのメンバーは生え抜きというより、もともとセミプロっぽい子が多いんですよ。芸能活動が初めての子もいましたが、半分くらいは経験者だったのかな。完成度を高めて、ほかのアイドルグループに早く追い付かなきゃいけないという思いがあって、歌やダンスのクオリティを優先したら自然とそういう形になったんです。なので歌とダンスのスキルやポテンシャルについてはオーディションの段階で重要視してましたね。今も別に面白くて笑いの取れるアイドルになってほしいとは一切考えてなくて、ステージで一番輝くアイドルでいてほしいと思っています。

──自分で作詞することも最初から決めていたんですか?

なんか自然とそういう形になったんですよね(笑)。秋元(康)さんがそうだからかな。自分で歌詞を書くのが当たり前だと最初から思ってました。逆にそこをやらなかったら、クリエイティブのプロデューサーとしてやることが少なくなっちゃいますし。

指原莉乃

──指原さんの初作詞曲は2012年発表のご自身のソロ曲「遠い街へ」「ifの妄想」ですよね。この2曲は2枚目のソロシングル「意気地なしマスカレード」にカップリング曲として収録されました。

あー、そうです! それ、秋元さんにバチギレされて、結果として自分で書くことになったんですよ。失礼ながらどういう経緯だったか詳細は覚えてないんですけど(笑)、その当時は2週間に1回くらいのペースで秋元さんにいろいろ注意されて怒られていて。もちろん私が全部悪かったんですが、いつもは許してくださっていた中、そのときは「そんなことなら自分でやりなさい」と言われてしまい、泣く泣く自分で書いたんです。あまりいい思い出じゃないですね(笑)。

──自発的に「自分で作詞したい」と話したわけじゃなかったんですね。

全然そんなこと言ってないです(笑)。秋元さんからしっかりアドバイスをいただきつつ、自ら進んで作詞したのはSKE48の松村香織のソロ曲(2013年発表の楽曲「マツムラブ!」)が最初ですね。

──現在、指原さんは=LOVEとその妹分である≠MEの2グループに歌詞を書いていて、作詞家としての経験を相当積んできましたが、2013年当時は手探りで作詞した感じでしたか?

そうですね。作詞って明確なルールや教科書があるわけじゃないし、完全に自分の中から生み出さなきゃいけない作業で。大物である秋元さんに「歌詞ってどうやって書くんですか?」と聞くのもなんか変な話だし、特にソロ曲のときは状況が状況で聞きづらかったですし。今も恐れ多くて、=LOVEの歌詞について「どうですか?」と尋ねることはないんですよ。でも、なんのときだっけな……1回だけ作詞について話を聞いてみたんです。そしたら「結局は指原の頭の中の出来事で正解はないから、なんでもいいんだよ」というお話をいただきました。

──「マツムラブ!」では作詞だけでなく、選曲やジャケット写真についてもプロデュースされましたが、その経験がきっかけでプロデュースというものに興味が湧いたり?

私のファンじゃない人も曲を聴いて喜んでいて、その環境がすごく不思議だったのを覚えてますね。プロデュースするってこういうことなんだなって。

売れる気配ビンビンです

──結成から4年、シングル8枚のリリースを経て、=LOVE初のアルバム「全部、内緒。」が完成しました。メンバーもファンもアルバムの発売を待ち望んでいたと思いますが、このタイミングになったのはなぜなんでしょう?

正直に言うと、ここまで時間がかかっちゃったのは人気や知名度が上がるのを待っていたからですね。シングル曲が貯まっていってアルバムに2、3曲しか新曲を入れられない、という状況になるのがイヤだったので、個人的には結成1年目に出したかったんです。でも、結果的に今回8曲も新曲を入れることできましたし、作品の内容にはすごく満足しています。念願だったアルバムをやっと出せてうれしいですね。

──人気とともにメンバーのスキルも向上したことで、いろんなタイプの楽曲を入れることができたんじゃないでしょうか。

初期と比べると複雑な曲を歌いこなせるようになってきていて。なんなら私の技術が追い付いていないと思うくらいみんな成長しています。人気的な意味で言うと、私が=LOVEのプロデューサーとしてではなく、1人のタレントとしてテレビ番組に出演しているときに、そのゲストの方に「=LOVE聴いてるんです」と言われることがすごく多くなって、「なんだかすごいことになってきたな」と思うことはありますね。

──今年1月に日本武道館公演を成功させ、4月には地上波での冠番組がスタートするなど、順調に人気を拡大させているように思います。プロデューサーとしてもグループが売れてきていることを肌で感じているんですね。

もうビンビンですね(笑)。ビンビンに感じているんですけど、1歩ずつ確実に前に進むことが大事だと思っているので、焦らず、興奮しすぎずにいようと思っています。

指原莉乃

──今年に入ってYouTubeを始めるなど、指原さん自身も相変わらず忙しい日々を過ごしていると思いますが、4月にリリースされた≠MEのメジャーデビューミニアルバム「超特急 ≠ME行き」と合わせ、今回多くの新曲を作詞するのはかなり大変だったのでは?

短期間に計13曲も作ったんですよ。気が狂うくらい歌詞を書きました(笑)。収録曲が4曲のシングルと比べると、今回はものすごいスピード感で作らなくちゃいけなくて……つらかったですね(笑)。何が一番つらいかと言うと、それは曲選びで。集まる曲が本当にいい曲ばかりで、「この子にはこの曲を歌わせたいな。でも、これだと難易度高すぎるかな」とか考えすぎて頭がパンクしそうになって、いろんな人に意見を聞きました。

──詞を書くのと曲を選ぶのはどういう順序なんですか?

先に自分の中でだいたいのイメージを組み立てて、曲に入れたいフレーズを決めるんです。アルバムのリード曲「桜の咲く音がした」で言うと、「桜の咲く音」というフレーズを入れたいと考えながら曲を選んでいきました。そして自分のイメージがハマる曲が決まったら、そのあとに詞をガッツリ書いています。この話を秋元さんにしたら、秋元さんも最初にワードを思い浮かべて、それがハマる曲を選んでいると言っていました。

──そうなんですね。作詞の面で秋元さんの影響を受けていると感じることはありますか?

男性目線の曲になりがちなところですね。秋元さんは基本的に男性目線の曲が多くて、女性目線の曲が少ないんですよ。私の歌詞にはどこか秋元さんっぽいところがあって、それがうれしくもあり複雑で……でも、最近は=LOVEのグループとしての雰囲気が固まってきたので、逆に女性目線の曲しか書かなくなりました。アルバムではそういう私の作詞の変化も流れとして見ることができると思います。初期は男性目線の曲が多かったけど、最近は女性目線の曲ばかりという。もう=LOVEには“僕”系の曲は書けないかもしれないです。

──それは具体的に言うとどういう理由で?

あくまで私の考えなんですが、初期はメンバーみんな子供すぎて、何がなんだかよくわかっていない状況だったから、自分以外の目線、つまり僕目線の曲が合っていたのかなと感じていて。今は彼女たちに「自分はこうしたい」という自我や意志みたいなものがより芽生えてきたので、自分を表現しやすい女性目線の曲のほうが合っているんじゃないかなと思っています。自身の経験や心情と重ねて歌えるようになったというか。

──なるほど。指原さんは歌詞の意味をメンバーに説明しないと聞いたのですが、それはメンバーに自由に解釈してほしいから?

歌詞の解釈にこだわりはないので、好きに受け取ってもらっていいんです。私も秋元さんから「これはこういう歌です」と説明されたことはほとんどないですし、メンバーが自分で感じ取るのが一番かなと。


2021年5月19日更新