ファンクを愛しつつ、もっと自由な発想で音楽を作りたい
──今回の曲の根底にある70年代、80年代のバラードというのは堂本さんにとってどのようなものですか?
人の心が揺れる音楽というか、音の世界に浸れるイメージがありますね。もちろん歌詞が刺さるという点もあるんですが、僕はサウンドを重視して聴いています。
──「Heart of Rainbow」のボーカルは、おっしゃる通りフラットさを意識して感情をあらわにしすぎず、メロディを丁寧にしながら、情感をじわじわと染み渡らせる歌い方だと感じました。突発性難聴を患われて以来、歌に関してはさまざまな試行錯誤を続けてこられたと思いますが、今の堂本さんにとって最適解の歌い方を見つけられたのかなと。以前はバラードを歌うことが体調的にしんどいことがあるとお伺いしていましたが、活路を見出されたのでしょうか。
そうですね。この「Heart of Rainbow」という曲は、1人ひとりの人生や選択、歩んできた道のりを「その人の色」として祝福する……聴いてくださる方々のそれぞれのストーリーへと心をつなげながら歌いました。サウンド面も含め、今までトライしてこなかったボーカルの表現に向き合えた1曲ではありますね。
──なるほど。新しい音楽表現の手応えを感じている、と。
はい。昨日もレコーディングをしていたんですが、今作っている新しい楽曲たちもチャレンジがあって面白いですよ。
──その新しいチャレンジというのはジャンル的なものも含むんでしょうか?
自分にとってファンクミュージックは、生きるのが難しいと感じたときに救ってくれた大切な存在なので、そこへの愛と感謝はずっと変わりません。今までもファンクミュージックの影響を受けながら、いろんな音楽を作ってきた。これまではR&Bやソウル、ファンクという比重が非常に大きいアウトプットをしてきましたが、今はもっと自由な発想で音楽を作りたいという欲求があって。
──へえ!
「Heart of Rainbow」は自分が歩いてきた音楽的な道のりを反映させつつ、「自分の音楽を次のステージに上げるとしたら、どういうことができるか」と考えた結果、生まれたものなんです。
堂本剛にとって虹とは?
──新しいサウンドや歌い方に挑戦されている一方で、歌詞には昨年リリースされたEPのタイトルでもあった「END RE」というワードが登場していますし、これまで同様、聴き手に寄り添う包容力があります。
今の季節は新しい環境に身を置いている方も多いですよね。そうでなくても、僕と同じように変化の中にいる人はたくさんいると思うんです。そういう人たちがこの曲を聴いて、「堂本剛も新しい環境でチャレンジしてるんだな、自分も自分らしく今を楽しんでみるか」と本当の笑顔を作り出してもらえたらうれしいなと考えています。自分にとって大切な存在の人たちの人生を思うこと、自分の大切な人生を思うこと、これを心の中で何度も駆け巡らせる中で、やがて虹色は生まれる。人生の色は人それぞれですからね。人と自分を思うことで虹が生まれる、そんな気持ちを持って歌詞を書いていきましたね。
──堂本さんは1997年のデビュー以来さまざまな名義で楽曲を発表されていますが、「虹」「Rainbow」はいろんな曲に登場します。
虹に対するイメージは、子供の頃からずっと変わらないですね。虹って、神様が作ったアートだと思うんです。科学的なことを言えば気象条件がそろって生まれるものですが、水と光というまったく違う要素が合わさって、誰もが見惚れてしまう存在になる。それって人間関係においても同じだと思うんです。自分とは違う考えや個性を持つ人と対話して、思いを重ね合わせることで希望が生まれる。僕は自分にはないものを持っている人と仕事をするとき、「おもしろ!」って思うようにしているんです。違うからこそ、自分1人ではたどり着けない景色が必ず見えるから。
──余談ですが、堂本さんのミュージシャンとしてのキャリアをさかのぼって「虹」「Rainbow」が登場する曲を調べてみたんです。「Nijiの詩」「The Rainbow Star」「1111111 ~One Another's Colors~」「闇喰いWind」などいろいろありましたが、その中で一番古いのが1998年に書かれた「Slowly」でした。
へー! 1998年! 面白いですね。虹は小さい頃から好きだったけど、自分の曲にそんなに早く登場させてたんですね。
──堂本さんが作られた「虹」にまつわる曲でセットリストを組んだら面白そうですね。
あはは、確かに。虹って毎日見られるものじゃないし、さまざまな可能性や要素が重なって生まれるものじゃないですか。自分の音楽を聴いてくれる方々とのご縁もそういうものだと思うんですね。普段は違う環境で生きている人たちが、1つの場所に集まって僕が作った音楽を聴いてくださる……ステージに立ってお客さんを見ていると、もう虹にしか見えないんです。その光景を前に歌うのが、僕にとっての幸せなんです。それで、ついつい歌詞に「虹」を登場させちゃうんですよね。
レコーディングとライブにおける歌の違い
──「Heart of Rainbow」には「さようならじゃない 何度でも逢える」と優しく語りかけるフレーズも出てきます。「さよなら」は万人共通で理解できる言葉である一方、世代によって意味合いや重みが変わってくる側面がありますよね。今回の曲では学生時代の別れとはまた違う、人生の後半戦に進んだ今だからこそ響くニュアンスがあるように聞こえました。
「さようなら」という言葉は聴いてくださった方の現在によって変わるもので、その受け取った形がどれも正解だと思います。この曲においては、胸の中で自分自身へと言っている言葉であり、大切な人へも伝えている感じです。決して離れることや別れることは寂しいばかりじゃない、思い合えばすぐに胸の中でつながれるんだからって。コロナ禍のときを振り返っていただくとニュアンスは伝わると思うのですが。「さようなら」って力強く未来へと進むためのポジティブな言葉でもありますからね。
──30年以上にわたって歌い続けていらっしゃいますが、堂本さんにとって「いい歌」とはどういうものですか?
うーん、難しい質問ですね。時代によっていい歌の基準も変わってくるので。今はピッチが正確であることが重視される時代だとは思います。機械やマシンに頼って生きているからこそ、歌にも完璧さを求めてしまう。当然ピッチを的確に当てていくことで聴きやすくもなるし。その一方で歌に“人らしさ”も求められている。
──その両方の共存が大事。
そういうことです。
──その中で、堂本さんは歌とどう向き合っていますか?
レコーディングにおいては、音楽を作る職人として、聴き手に届きやすいように徹底的に精度を上げています。もちろん歌に感情は入れるけど、正しい音程もちゃんと取って“ながら聴き”でも心地よい温度感を探る。「Heart of Rainbow」のレコーディングでもそういうことを意識しました。一方ライブでは、やり直しができないその瞬間の自分を、ダイレクトにアウトプットし続けたい。僕はオーディエンスとして、ライブで音源と同じものを聴きたいというより、ライブではライブのよさを楽しみたいので、音源とライブは切り離して考えているところがあって。自分の表現においてもすみ分けができているので、レコーディングで歌うことも、ライブで歌うこともどちらも楽しいですね。ビンテージギターのよさも、新しいギターやデジタル機器のよさも、両方楽しめるのが今の時代の素敵なところだなと。
47歳を迎える心境
──「Heart of Rainbow」をリリースしたあとは、「NEW CHAPTER」と銘打った全国ツアーが始まります。その後、DOMOTOとしてのリリースやドーム公演を挟み、8月にはニューアルバム「new chapter purple」のリリースと、スケジュールが目白押しです。
.ENDRECHERI.のツアーでは新譜もかなり披露する予定ですが、同時に懐かしい曲も今の解釈で届けたいなと思っています。「こんな曲も歌うんや」というタイプの新曲もあるんで楽しみにしていてほしいですね。
──過去を振り返りつつ、未来を示すようなライブに?
そうですね。.ENDRECHERI.のテーマが「人生は一度きりでも、何度だって生まれ変われる」「生まれ変わりたいと感じたなら、今この瞬間に生まれ変わろう」ですから。もし、このインタビューを読んで共鳴していただけるような言葉が1つでもあったら、ぜひライブに遊びにきてほしいですね。ずっと応援してくださっている人も新しく僕に触れてくださる人も、ひさしぶりに堂本剛に触れてくださる人もみんな大歓迎です。MCは今も昔も、笑いあり涙ありでやらせてもらってます!
──(笑)。最後に、4月10日にまた1つ歳を重ねられますが、今の心境はいかがですか?
「えっ、もうちょっとで50やん!」ってなってます(笑)。自分の頭が追いついていないところがあるかも。一方で後輩の方とごはんに行くと、彼らの食べる量の尋常じゃなさに驚いて、「ああ、自分も歳を重ねたんやな」と実感したり(笑)。戸惑うこともありますが、47歳も新しいチャレンジをしながら楽しく過ごしていきたいと思っています。チャンチャン(笑)。
公演情報
.ENDRECHERI. 2026 LIVE TOUR「NEW CHAPTER」
- 2026年5月2日(土)大阪府 オリックス劇場
- 2026年5月3日(日・祝)大阪府 オリックス劇場
- 2026年5月5日(火・祝)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 2026年5月6日(水・振休)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 2026年5月23日(土)奈良県 なら100年会館 大ホール
- 2026年5月24日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
- 2026年5月29日(金)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2026年5月31日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2026年6月27日(土)神奈川県 横浜BUNTAI
- 2026年6月28日(日)神奈川県 横浜BUNTAI
プロフィール
.ENDRECHERI.(エンドリケリー)
1979年4月10日生まれ、奈良県出身のシンガーソングライター堂本剛のプロジェクト。ジャパンカルチャーを軸に音楽、ファッション、アートを横断するクリエイティブプロデューサーとして、さまざまなアウトプットを続けている。音楽面ではPファンクの創始者ジョージ・クリントンに感銘を受け、ファンクミュージックを軸にしたジャンルレスな音楽を発信。2022年にはファンク専門の米音楽メディア「Funkatopia」が選ぶ「2021年のファンクアルバムベスト20」にアルバム「GOTO FUNK」が、プリンスやSilk Sonicらの作品と並んで選出され話題となる。2023年にはジョージ・クリントンのバンドParliament-Funkadelicのメンバーとしてライブ出演し、2024年にはジョージ・クリントンをフィーチャーした「雑味 feat. George Clinton」をリリース。2025年、ミニアルバム「END RE」を発表しし、全国9カ所で約3万人を動員する全国ツアーを行った。2026年5月より全国6都市を回るツアー「NEW CHAPTER」を開催。8月にはニューアルバム「new chapter purple」を発表する。近年は世界的なIPである「パックマン」やNetflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」とのファッションコラボアイテムをプロデュースしている。
堂本剛 / .ENDRECHERI. 【STAFF】 (@hotcake_staff) | X
.ENDRECHERI. / Tsuyoshi Domoto (@tsuyoshi.d.endrecheri.24h.funk) | Instagram




