映秀。初の対バンツアーに向けたソロインタビュー&ゲストTENDRE、NakamuraEmi、崎山蒼志との対談3本 (3/4)

映秀。×NakamuraEmi

NakamuraEmi

NakamuraEmi

「YAMABIKO」カバーの衝撃

──NakamuraEmiさんとの出会いは、映秀。さんが「YAMABIKO」をカバーしたことだったそうですね。

映秀。 はい。2年前くらい前、18歳のときですね。NakamuraEmiさんのことを教えてくれたのはお母さんなんですよ。いろんな音楽を勧めてくる人なんですけど(笑)、NakamuraEmiさんの曲は「おお! 超カッコいい!」と大好きになって。

NakamuraEmi お母さんに何か贈らないと(笑)。映秀。さんとの出会いは知り合いから「YAMABIKO」のカバーを「カッコいいから聴いてみて」と言われたのが最初なんですけど、衝撃でした。たくさん練習して、歌い込んで、曲が体に染み付いてるんだなと感じたし、歌詞がちゃんと耳に入ってくるのもすごいなって。

映秀。 ありがとうございます! めちゃくちゃ難しかったです(笑)。そのあと、「赤裸々」のライブ(「映秀。一夜限りのプレミアライブ『赤裸々』」)にお誘いして。

NakamuraEmi その時点ではお会いしたことがなかったんですけど、Twitterのメッセージで「Emiさんの音楽が大好きです。私事で申し訳ないですが、ライブを観に来ていただけませんか?」と連絡をくださって。そんなことは初めてだったし、すごくうれしかったんですよ。自分でこんなことを言うのもアレですが、先輩をライブに誘うのは勇気が必要だと思うし、率直にメッセージを伝えるって素敵なことだなって。そこからですね、交流が始まったのは。

映秀。 思い切って連絡してよかったです(笑)。

映秀。の歌詞に感じる言葉の可能性

NakamuraEmi オリジナル曲も聴かせてもらってます。まず衝撃だったのは、言葉ですね。私も年に1枚のペースでアルバムを出させてもらっているんですけど、自分が持っている言葉を使い切ってしまう感覚というか、限界みたいなものを感じることもあって。映秀。くんの曲を聴くと、「言葉にはまだまだ可能性がある」と救われるんですよ。アレンジやサウンドに関しても概念がブッ飛ぶというか。1曲の中で何回も“表情”が変わったり、「こんな表現があるんだな」と思わされるし、めちゃくちゃ広い可能性を持った人なんだなと。

映秀。 すごくうれしいです。言葉にフォーカスして話すと、今年は「拙い言葉でも、まっすぐに言う」がテーマなんですよ。ありきたりな言葉とか、1回使ったフレーズに対しても「歌詞には使えないな」と思ってたんだけど、それは違うかもしれないなって。僕の新曲「幸せの果てに」に「生きてるだけでさ 丸儲け」という歌詞があるんですよ。NakamuraEmiさんの「雨のように泣いてやれ」にも「生きてるだけで丸儲」というフレーズがあるんですけど、同じ言葉であっても、そこに行き着いた道筋や使い方がまったく違う。それでいいんだと気付いてからは、「この言葉はもう使わない」とか切り捨てなくなりました。

NakamuraEmi 映秀。くんの曲は、歌詞とメロディのリズムの組み合わせ方がすごくよくて、聴いてると体にスポッと入ってくるんですよ。「ここに入るべき言葉が入っている」という感じもするし、すごく考えられているなって。私は歌詞を優先するというか、“詞先(しせん)”が多かったんです。ちょっとくらいメロディにハマってなくても、「私はこれが言いたい!」っていう(笑)。

映秀。 詞先なのに、あんなにキャッチーなメロディになるんですね! カバーするのが難しいのは、言葉のリズムが独特だからなのかも。

NakamuraEmi 最近は「ライブでは聴き取りづらいかもしれないな」と思うようになって。メロディにハマる言葉を探してあげるのが大事だなって、葛藤しているところです。こういう話ができるのもいいですね。映秀。くんとは世代も違うし、いろんなことを考えている方なので、吸収させてもらってます(笑)。

左から映秀。、NakamuraEmi。

左から映秀。、NakamuraEmi。

──ライブで歌うときに意識していることは?

NakamuraEmi ファンの方と“対話”することですね。歌詞がちゃんと聞こえるように仕上げたいし、身振り手振りだったり、みんなの顔を見て歌うことも大事だなと。それに対して受け取る側が「今はこの言葉を聴きたくない」ということもあると思うんですよ。「この曲はあまり合わないな」とか。でも、1週間後に何かが起きて、「そう言えばNakamuraEmiがあんなこと歌ってたな」と思うかもしれない。もしかしたら1年後に聴く人のそばにいられる曲になるかもしれないし、そのときに音楽を通して対話ができたらいいなって。昔はよくわらなかったけど、今聴くと「すごい歌詞だな」って思う曲もあるし。

映秀。 そうですね。僕も音楽はコミュニケーションの一環という感覚が強くて。言葉を使った表現でもあるから、受け取られ方もいろいろだし、解釈も人それぞれですよね。それを気にするのではなくて、どれだけ誠意を持って言葉を発することができるかが大事なのかなと。ナイフと同じで、傷付ける可能性があるという自覚を持って音楽や言葉を伝えたいというか。歌詞だけじゃなくて、日常生活も同じです。

「一緒にやりたい」──思いを伝える一番の方法

──NakamuraEmiさんが出演するのは、2月4日のZepp Fukuoka公演です。

NakamuraEmi 対バンライブは私自身も受け取るものがとても大きくて。対バン相手のライブのやり方だったり、人間力も感じられるので、大好きなんですよ。今回の映秀。さんのツアーは、全国に観に行きたくなるくらい、素敵なアーティストばかりで。その一員に入れてもらえて光栄です。

──対バンのオファーも映秀。さんが直接連絡したそうですね。

映秀。 はい。会社を通して連絡するほうが簡単かもしれないけど、それだと「一緒にやりたいです」という思いが伝わらない気がして。僕自身の思いで動いているのか、チームが決めたことかもわからないし、だったら率直に自分で伝えたほうがいいじゃないですか。

NakamuraEmi ありがとうございます。うれしいです。

──最後にお互いの好きな曲を1曲挙げてもらえますか?

NakamuraEmi いろいろあるんですけど、歌詞が刺さったのは「反論」ですね。「蝉が煩くてRECもできねえ」という歌詞があるんですけど、最後の最後で「うるせえ蝉よりうるせえ様に生きる 僕はそうするよ」という言葉にたどり着くんです。私の曲で「かかってこいよ」という曲があって。“おまえら、うるせえ”みたいな気持ちで書いたんですけど、年齢を重ねてきて、「すごいこと歌ってるな」と思ってしまって。

左から映秀。、NakamuraEmi。

左から映秀。、NakamuraEmi。

映秀。 わかります。そういうこと、ありますね。

NakamuraEmi そうなんですよ。「『かかってこいよ』をライブで聴きたいです」と言われることもあるんですけど、今の自分が歌うのはどうなんだろう?と思ったり。でも、「反論」を聴いたときに、自分自身が「そうなんだよな」と共感したし、もしかしたら「かかってこいよ」を聴きたいと思ってくれてるお客さんも、こういう気持ちなのかなって。なので最近、「かかってこいよ」をセットリストに入れるようになったんです。

映秀。 そうなんですね! 僕は「大人の言うことを聞け」にします。さっきも聴いてたんですけど、歌詞がグサグサ刺さって。あの曲って、リスナーに寄り添ってるわけでもないし、上から命令しているわけでもないんですよ。たぶん、自分と同じような思いをさせたくないから言ってるのであって、話を聞くだけ聞いて、違うと思ったら捨てればいい。その精神性がすごく好きだし、絶対に自分では書けない曲だなと思います。でも、「メジャーデビュー」も好きだし、「東京タワー」もいいし、やっぱり選べないです(笑)。

プロフィール

NakamuraEmi(ナカムラエミ)

1982年生まれ、神奈川県厚木市出身。2007年に中村絵美としてアーティスト活動を開始。2011年頃、カフェやライブハウスで歌う中で出会ったヒップホップやジャズに影響を受けて、歌とフロウを行き来する現在の独特な歌唱スタイルを確立。NakamuraEmiとして活動を始める。2016年1月に日本コロムビアよりメジャーデビューアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST」をリリース。その後もコンスタントに楽曲のリリースやライブ活動を重ね、2022年9月には藤原さくらとのマッシュアップソング「The MOON × 星なんて言わず」を配信リリース。