映秀。初の対バンツアーに向けたソロインタビュー&ゲストTENDRE、NakamuraEmi、崎山蒼志との対談3本

映秀。初の対バンツアー「一味同心 2023」が1月28日に北海道・Zepp Sapporoでスタートする。

「一味同心 2023」は映秀。が自らオファーしたアーティストを迎え、全国5カ所のZepp会場を回るツアー。対バン相手はTENDRE、NakamuraEmi、Tani Yuuki、キタニタツヤ、崎山蒼志で、いずれも映秀。と交流のあるアーティストばかりだ。

音楽ナタリーでは1月25日に新曲「幸せの果てに」をリリースした映秀。にインタビュー。さらにTENDRE、NakamuraEmi、崎山蒼志との対談も行い、アーティスト同士の関係性、対バンツアーへの意気込みなどについて聞いた。さらに、インタビューに参加できなかったTani、キタニのメッセージも紹介する。

取材・文 / 森朋之撮影 / 星野耕作

映秀。ソロインタビュー

映秀。

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生きていること自体が幸せ

──まずは映秀。さんの2022年を振り返ってみたいと思います。20歳の誕生日の3月17日に「縁(えにし)」をリリース。さらにEP「赤裸々」、配信シングル「星の国から」「よるおきてあさねむる」を発表しました。

そうか、意外と出してますね(笑)。今振り返ってみると、2022年はプライドを捨てる年だったと思っていて。「カッコいいことをやりたい」という気持ちは誰しもあるだろうし、それがクリエイティブにつながっていた部分もあるんだけど、“カッコつけ”が邪魔になっている気がして。いろんなものを脱ぎ捨てて、音楽に向き合いたいと思うようになったんです。今年のテーマは「主観で生きる」なんですよ。

──もっと思うようにやるというか。

そうですね。2022年はちょっと考えすぎてたんですよね。どういう曲を作りたいのか、自分にとって歌とは何か、どうして音楽をやってるのか。そういうことを自分に問いかける時間が長かったんです。その中で得られることもあったし、自分のことをよく見て、知ることもできたんだけど、今年はもっと感情に従うというか、気持ちいいと感じることをやりたいなと。楽曲でいうと「星の国から」くらいから、ちょっとずつモードが変わってきて。以前は自分を俯瞰したり、別の主人公を立てて歌詞を書くことが多かったんですけど、自分から湧き出てくる言葉を歌にしたいなと。それが恥ずかしかったんですよ、前は。自分の素直な言葉に芸術性があるとは思えなかったし、日記を読まれているような感じがあって(笑)。でも、聴いてくれる人たちや制作チームのみんなから「いいね」と言ってもらえる曲って、思ってることを純粋につづった曲だったりするんですよね。取り繕うことなく、拙くてもいいから主観で書きたいなと。新曲「幸せの果てに」もそうですね。

──「生きてるだけでさ 丸儲け」というサビのライン、すごく率直ですよね。

サビの歌詞とメロディは、2021年の12月からあったんですよ。友達のミュージシャンとセッションしたときに出てきたんだけど、ずっとそのまま寝かせてあって。このタイミングで、どうやったら曲としてアウトプットできるか考えながら制作した曲ですね。「生きてるだけで丸儲け」は明石家さんまさんの座右の銘として有名ですけど、自分自身ともつながっていて。生きていればつらいこともあるけど、全部が全部イヤというわけではないというか。それって、人間の特権だと思うんですよね。例えばダイエットや筋トレをするときって、途中は苦しいじゃないですか。それはキレイになるためにやってることだと思うし、実は過程もすべてハッピーなんですよ。その考えを突き詰めると、生きていること自体が幸せなんだろうなと。命が絶えず循環してる中で、今、ここにいられることは奇跡。もちろん葛藤や悩みもあるけど、そういう感情を持てることに対する感謝を忘れちゃいけないなって。

──めちゃくちゃ深いですね……。「苦しみを糧にしろ」という歌詞も印象的でした。

“悲しいことは忘れよう”というのもメンタルを保つうえで1つの方法だと思いますけど、この曲はそうじゃなくて、“きついことやつらい悩みも感じてみよう”というか。向き合うのは大変だし、体力も必要ですけど、そういうときに支えになれる音楽を作れたらすごくいいなと思ってるんです。テーマ的には暗くなっちゃいそうですけど(笑)、あえて明るく歌うことで「俺はこんなふうに生きてるよ」ということも示したくて。もちろん聴いてくれる“あなた”に対して歌ってるんだけど、自分に向けて言ってるところもありますね。

──高揚感のあるサウンドも、楽曲のコンセプトに合ってると思います。

アレンジは今回、自分でやってますね。それもフェーズがあって、自分でコツコツやるのが楽しい時期もあれば、新しい世界を見るために、ほかの人と一緒にやりたい時期もあって。去年は1人で完結させることが多かったから、2023年はいろんな人とセッション、ディスカッションしながら作ってみたいですね。

映秀。

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ライブが前より好きになった

──映秀。さん、コミュニケーション能力高そうですよね。

それはどうかわからないけど(笑)、コミュニケーションについても、いろいろ考えてますね。去年、「人を大切にするって、傷付けないように接することではないな」と思ったことがあって。「それは違うんじゃない?」みたいなこともちゃんと言うべきだなって。どう伝えるかも大事ですよね。スマホばかり見てる人に対して「携帯置いたら?」ではなくて、「何も持たずに遊びに行こうよ」と言うとか。

──言葉に対する意識も変化している?

言葉を大切にしたいとは思ってます。例えば「がんばれ」という言葉にもいろんな解釈があるし、他人と認識がズレることもある。それは当然起きることなんだけど、なんでこの言葉を使うのか、しっかり意思を持つことが大事なのかなって。それは人と接するときもそうだし、作詞にもつながっていると思います。

──ライブに対するスタンスはどうですか?

前よりも好きになってきましたね。ライブが嫌いだったわけではないんですけど、曲を作るほうが楽しかったんですよ。でも、ライブで得たものが楽曲制作に生きることがわかってきて。コロナ前もそれほどライブをやっていたわけではないんですけど、お客さんの前で歌えることのありがたさを感じるようになりました。

映秀。

映秀。

同じ屋根の下で作り上げたい

──そして2023年1月から2月にかけて、初の対バンツアー「一味同心 2023」が開催されます。対バンツアーをやろうと思ったのはどうしてなんですか?

去年、Tani Yuukiさんのライブ(「Tani Yuuki Presents LIVE "LOTUS"」)に呼んでもらったんですけど、すごく学びが多かったんですよ。具体的に言うと、ライブを観ながらメロディと言葉がすごく印象に残ったんです。僕自身は「バーッとやろう!」みたいな勢いだったんですけど、Taniさんは歌がしっかり耳に残るライブをやっていて。そのときに「真ん中に歌声があるべきだな」と再認識したし、好きなアーティストと一緒にライブをやることで、もっと学びたいなと思って。

──なるほど。今回の対バンアーティストは、TENDRE、NakamuraEmiさん、Tani Yuukiさん、キタニタツヤさん、崎山蒼志さんです。

好きなアーティストの皆さんに自分で声をかけさせていただきました。皆さん以前から交流もあるんですよ。蒼志とは一緒にサウナに行ったり(笑)、普通に友達として接しているし、キタニさんともごはんに行ったり、曲作りの合宿をやったこともあって。TENDREさんとは象眠舎(CRCK/LCKSのリーダーでマルチプレイヤーの小西遼によるソロプロジェクト)のライブで一緒にステージに立ったこともあるんですよ。NakamuraEmiさんはもともと僕のお母さんからオススメされて、自分も大好きになって。僕のカバー動画をきっかけにつながることができて、対バンツアーにも出てもらえることになりました。ただライブを観るだけではなくて、同じステージに上がることで気付くこともたくさんあるだろうなと。僕自身も学びが多いツアーになると思うし、めちゃくちゃ楽しみですね。

──ライブを楽しみにしているオーディエンスに対しては、どんな思いがありますか?

自分のライブに関して言えば、完成したものを披露するという感じではなくて。同じ屋根の下でともに過ごすわけだから、一緒に作り上げたいですね。音楽はコミュニケーションだと思っているし、こっちも受け取るものがたくさんあって。楽しく会話するような気持ちで来てもらえるとうれしいです。

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映秀。×TENDRE