ナタリー PowerPush - ryo(EGOIST / supercell)

「名前のない怪物」「銀色飛行船」タイアップ2曲をryoが語る

こゑだとchellyで制作方法は全く違う

──今回の2枚のシングルは、supercellとEGOISTが相次いでリリースされる形ですけど、2つを同時に作っていて、こゑださんとchellyさんで作り方の違いはありますか?

こゑだちゃんの場合は曲自体、一緒に作っていく感が強いですね。Skypeをやってるせいで、彼女が住んでいる福岡と東京で距離が離れていても関係なく「曲できたから送るね」って送れるし。送ったら30分後ぐらいに「歌いました」って言って返ってくる。で、それを聴いて歌詞やメロディを手直ししてまた送ると、また歌い直して戻ってくる。それでも違ったら、そもそも曲の感じが違うっていうことでもう1回作り直したり。そういう感じでお互いが「いいよね」ってなるまで作っていくんです。

──作り直しする場合まであるんですか。

ありますね。やっぱり声で聴かせるものというか、その声でちゃんと魅力的に聞こえることが大事なので。chellyちゃんの場合はそういうことは逆に、基本的に作ったものを歌ってもらって、「おお、いいっすね」って言いながら曲を微調整して完成させる感じです。chellyちゃんの世界観や歌い方に合うように、メロディと歌詞を手直ししていく。

──いわばchellyさんというボーカリストのために楽曲が整えられていく感じなんですかね?

そういう風にとらえてもらってもいいですし、逆に、自分のために作ってるとも言えますね。chellyちゃんって何を歌ってもいい感じに聞こえるので。だから「こんな曲を歌ったらどんな感じになるんだろう」って、ワクワクしながら見ている感じではあります。

──一方で、こゑださんのほうは、今のお話だとすごくsupercell的な感じですよね。

そうですね。いいと思うまで作り込んでいく感じです。

──ネットを介してデータをやり取りしながら作り込む感じも、いかにもsupercellっぽいです。

こゑだちゃんと作るときは最初からこういうやり方だったんですけど、言われてみれば確かにそうですね。supercellはSkypeが生命線というか、あれがなかったら多分やれないので(笑)。

──Skypeでちょっとずつ作り込んでいくということは、いざスタジオに入って録りましょうとなったときは、曲としてほぼ完成してるんですか?

そうですね。90パーセントぐらいできてる状態まで作って、さらに録音までに95パーぐらいに近づけて、あとは本番でこゑだちゃんが好きなように歌うっていう感じです。

2012年は振り返らずに作ってきた

──今回のシングルはせっかく12月発売なので最後にお訊きしたいんですけど、今年1年を通してどんな仕事をしたかについての印象はありますか?

休みがないので季節感を感じるっていうことがないんですよ。こないだナタリーで「ODDS & ENDS」の話をしたときは半袖だったけど、今日は長袖だから「ああ、秋になったんだな」っていう感じですね(笑)。

──そっかあ。じゃあ自分の中での変化も、年や季節感で感じるんじゃなくて、作品ごとみたいな短いスパンか、あるいは数年単位みたいなもっと長いスパンで振り返るしかないんでしょうかね。

そうなんですけど、なんかまだ振り返る時間もあんまりないんですよね。あと5年ぐらいしたらちょっと余裕できるのかなとは思うんですけど。今は前のめりに倒れて死ぬぐらいの勢いで作り込んで、ようやく1曲できるって感じなんで、振り返る余裕はないんですよね。ちょっと落ち着いて振り返るとか仕事を休んでどこかに行くとか、そういうの全部含めて「その1日があれば、曲をもっと詰めて作れるんじゃねーの? もっと働けよ」みたいな意識が自分の中にあって。作品をベストなものにできなくなってしまうかもしれないことが怖いんですね。

──そこまで曲作りに打ち込むのはすごいですね。じゃあ、来年2013年も、そういう感じで作り続けていくんでしょうね。

いやいや、だからそれを変えたいと思うんですよ(笑)。もうちょっと仕事と日常を両立させると、そこでやっぱり好きになる音楽も変わってくると思いますし。今みたいな状態だと超癒やしの音楽か、超攻撃的な音楽ばかり好むようになるんですよね。だからやっぱり夏になったら古着屋さんでかかってそうなレゲエを聴くとか、冬になったらバラードでしんみりみたいな、そんな自分になってみたいですね。

──それもまあ、曲作りの発想を広げるための手なのかもしれないですけどね(笑)。

まあそうですね。そういう精神状態の変化に応じて音楽を作ったらどうなるかなということかもしれない(笑)。

EGOIST ニューシングル「名前のない怪物」/ 2012年12月5日発売 / Sony Music Records

CD収録曲
  1. prelude
  2. 名前のない怪物
  3. カナデナル
  4. 名前のない怪物(TV Edit 92s ver.)
  5. 名前のない怪物 -Instrumetal-
  6. カナデナル -Instrumetal-
  7. 名前のない怪物(TV Edit 92s ver.)-Instrumetal-
初回限定盤DVD 収録内容
  • 名前のない怪物 Music Video
  • 「PSYCHO-PASS サイコパス」Ending ノンクレジットムービー <NIGHT ver.>
  • 「PSYCHO-PASS サイコパス」Ending ノンクレジットムービー <DAY ver.>
CD収録曲
  1. 銀色飛行船
  2. リルモア
  3. アニメ映画「ねらわれた学園」特報用BGM
  4. 銀色飛行船 -Instrumental-
  5. リルモア -Instrumental-
初回限定盤A・B Blu-ray/DVD 収録内容
  • 「銀色飛行船」Music Video
  • アニメ映画「ねらわれた学園」特報
  • アニメ映画「ねらわれた学園」CM SPOT -supercell ver.-
EGOIST(えごいすと)

アニメ「ギルティクラウン」に登場する架空のアーティストを実体化した音楽ユニット。ryo(supercell)がプロデュースを手がけ、ボーカルは2000人を超える応募者から選ばれたchellyが務めている。2011年11月、シングル「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」でメジャーデビュー。2012年9月19日に初のオリジナルフルアルバム「Extra terrestrial Biological Entities」をリリースした。12月にはテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のエンディング・テーマに起用されたシングル「名前のない怪物」を発売する。

supercell(すーぱーせる)

コンポーザーのryoと複数のイラストレーター、デザイナーによって構成されたユニット。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。その人気はインターネットを通じて爆発的に広がり、2009年3月に待望のメジャーデビューを果たす。1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、翌年の「第24回日本ゴールドディスク大賞」にて「ザ・ベスト5ニュー・アーティスト」を受賞した。続く1stシングル「君の知らない物語」からはゲストボーカルにnagiを迎える。「君の知らない物語」はアニメ「化物語」の主題歌に起用され、こちらも大ヒットした。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリースし、オリコンウィークリーチャートで3位を獲得。その後、新ボーカリストを募集するオーディションを敢行し、2000人を超える応募者の中から福岡県出身のこゑだを選出。2012年12月にアニメ映画「ねらわれた学園」のオープニングテーマとなるシングル「銀色飛行船」をリリース。