ナタリー PowerPush - EGOIST

「ギルティクラウン」が生んだユニット 満を持して1stアルバムリリース

ポップスのアルバムとしてすごく正しい

──アルバムとしては、まずはアニメのファンが聴いて楽しめる内容ということになりますか?

ryo そうですね。まず最初はアニメのファンの皆さんに聴いてほしいです。本編でEGOISTというユニットが活動する場面はどうしても少なくなるので、このアルバムで音楽的な部分からどういう存在なのか知ってもらえたらと思います。その上で、本編を第1話目からもう1回観てもらうといいかな、と。冒頭のシーンで集くんがヘッドホンでEGOISTを聴いているシーンがあるんですけど、そこでどんな音楽を聴いてどれだけ熱狂してるかっていうのは、このアルバムを聴くのと聴かないのとで印象が違ってくると思います。

──しかし一方で、これだけ完成度の高いアルバムですから、アニメを観ていない音楽ファンにも届いたらいいですよね。

ryo はい。アルバムタイトルとかはアニメからインスパイアされてますけど、原作を知らないと聴けないアルバムではないので。いろんなサウンドが入ってますし、本編を全然知らない人とか、さまざまな層の人に聴いてもらいたいなと思いますね。

──ryoさんはタイアップで音楽を作ることも多いと思うんですけど、やはり基本は純粋に曲としての良さを追求するわけですね。

ryo そうですね、あんまりタイアップがどうのとか考えず、まあ基本は目の前にある曲がいいかどうか、ですね。ただ、今回の場合はいのりちゃんは感情を音楽で表現するっていうルールで作ったって感じで。

──シングル曲は、いのりの感情だけでなく作品全体のメッセージ性がありますよね。アルバムが全体としていのりの感情を表すものだとすると、シングル曲とのバランスはどうやって取ったのでしょうか。

ryo まずバランスを取るために、曲をアルバムのどこに配置するかを先に決めました。初めから「Departures」は最後って決まっていて、「The Everlasting Guilty Crown」は、1曲目でアッパーっていきなりすぎるんで2曲目だなと。そういう最初と最後のイメージをまず固めてから作っていったんです。

──なるほど。確かに曲順がすごく秀逸ですよね。2曲目からぐっと盛り上がっていくんだけど、エレクトロニカとかアメリカのR&B的なものが入っていって、後半からガラッと変わっていく感じに聴こえるんですよね。最後はバラード的に終わるという。

ryo そうですね。まさにそういうイメージです。

──「手遅れ」あたりは曲も超とんがっててカッコいいですよね。

ryo トラックがいいように聴こえる曲っていうのは、実は歌がいいんだと思うんです。「この曲のギター超カッコいいよね」って思って聴いている曲でも、そこには必ずいいボーカルがいるんですよ。RADIOHEADだってあれだけトム・ヨークが歌えるからこそ、後ろでジョニー・グリーンウッドが無茶苦茶やってても「ギター超カッコいい」みたいに思える。トム・ヨークがちゃんと歌ってなかったら、確実に「ギター何やってんの?」みたいになると思うんです(笑)。そういう意味で、いいトラックを作れるのは、やっぱり優れたボーカルが前にいるからこそなんだと思うんですよね。回り回って、結局は歌なんだっていう。

──それは面白いですね。まさに優れたポップスとは何かということですよね。それが今回は、chellyさんというボーカルあってこその音だったということなんですね。

ryo 間違いなくそう思います。自分は今まで曲を作るときに、楽曲がどうの、歌詞がどうのっていろいろ解析していくところがあったんです。やっぱり自分が作る部分ありきで物事を捉えがちじゃないですか。だからトータルで見て曲がいいかどうか、歌詞がいいかどうか、それが伝わるかどうか、それで得られる感情がどれぐらいなのか、そういうのを自分の中で判断してたんですよね。でも、そういうのを抜きにしてフラットに物事をとらえてみると、やっぱり歌なんですよね。さっきも言いましたけどそれに気付かされたのが、アルバム製作の半ばぐらいでした。自分が曲を作って世界観を提示してたつもりだったんですけど、そうじゃないんだって。ユニット名がEGOISTで、自分のエゴに気づかされたので、ちょっと皮肉な感じというか(笑)。

──なるほど。しかし作曲者としての立場から、例えばsupercellとEGOISTで違うことをやってやろうみたいな意識はないんですか? supercellの場合は、生バンド的なもの、ロック的なアプローチが多いですよね。EGOISTの場合は打ち込みの路線を強調しているようにも感じます。

ryo 最初はそういうつもりだったんです。でも、やっぱりアルバムを作ってる途中で、さっきの監督の話じゃないんですけど「そういうことじゃないんだ」って思ったんですよ。楽器から曲が決まっていくんじゃなくて、歌に対して、どの楽器を使えば感情をうまく表現できるかを考えるべきなんですよね。

──なるほど。最初はジャンルでの区別を考えていたけれども、最終的にはボーカルになっていくっていうことですね。

ryo そうですね。だからさっきポップスって言いましたけど、自分の中でこれは本当にポップスのアルバムだって思ってます。それがジャンルとして何っぽいというよりは、普通に「歌がいいよね」っていう、その感じってすごい正しくポップスだと思いますね。

2ndシングル「♪(おんぷ)の国のアリス」 / 2012年9月12日発売 / PONY CANYON

CD収録曲
  1. 原罪の灯
  2. The Everlasting Guilty Crown
  3. Extra terrestrial Biological Entities
  4. 雨、キミを連れて
  5. Lovely Icecream Princess Sweetie
  6. 手遅れ
  7. LoveStruck
  8. Ce que j'aime ~inori no kyuuzitu~
  9. 想いを巡らす100の事象
  10. この世界で見つけたもの
  11. Planetes
  12. Departures ~あなたにおくるアイの歌~
初回限定盤DVD収録内容
  • Departures ~あなたにおくるアイの歌~ ミュージックビデオ
  • The Everlasting Guilty Crown ミュージックビデオ(TV Edit ver.)
  • Planetes ミュージックビデオ
  • 『ギルティクラウン ロストクリスマス』 Movie(Planetes Ver.)
EGOIST(えごいすと)

アニメ「ギルティクラウン」に登場する架空のアーティストを実体化した音楽ユニット。ryo(supercell)がプロデュースを手がけ、ボーカルは2000人を超える応募者から選ばれた17歳、chellyが務めている。2011年11月、シングル「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」でメジャーデビュー。2012年9月19日に初のオリジナルフルアルバム「Extra terrestrial Biological Entities」をリリースした。