ナタリー PowerPush - DUSTZ
1stアルバム「TROIS」はLIMP BIZKIT参加の話題作
Ray(Vo)、KenT(G)、Gus(B)の日本とフランスのハーフ3人によるミクスチャーロックバンド、DUSTZ。メジャーデビューから2年半、ついに待望の1stアルバム「TROIS」を完成させた。
MBS・TBS系テレビアニメ「BLOOD-C」のオープニングテーマに起用され大きな話題となった「spiral」をはじめ、日本語、英語、フランス語の3カ国語を駆使した歌詞の世界観は、ほかのバンドにはないオリジナリティを確立している。
中でも注目はDragon Ashの「Fantasista」のカバー。この曲には彼らがリスペクトするアメリカのミクスチャーバンド・LIMP BIZKITのウェス・ボーランド(G)とジョン・オットー(Dr)が参加している。
今回は、メンバー全員にインタビューを行い、1stアルバムに収録された楽曲への強い思いについて語ってもらった。試行錯誤を繰り返した彼らが辿り着いた形とはどんなものなのか、このテキストから感じてほしい。
取材・文 / 田中隆信
今の音楽的志向はバンドを始めた頃に戻ってる
──1stアルバム「TROIS」がついに完成しましたが、デビューシングルの「Break & Peace」のリリースが2009年5月ですから、まさに“待望の”という言葉がふさわしいアルバムだと思います。
Ray(Vo) ホント、待望のアルバムです。2年かかりましたからね。これまでに4枚のシングルをリリースしてきましたが、僕らはちょっと変わった音楽をやってますから、シングルだけでは伝え切れない部分がたくさんあるんですよ。ですから、アルバムを聴いてもらうことによって、DUSTZってこういうバンドなんだということがわかってもらえるんじゃないかなって思ってます。
Gus(B) 今はとにかくホッとしてます。デビューしてから2年が経ちましたし、アルバム自体もおよそ1年かけて作ってきましたから、僕ら3人もすごくテンションが上がってます。シングルのリリースもうれしいんですけど、それとはまた違った感慨深さがあります。
KenT(G) アルバムの制作は大変な作業ではありますけど、楽しくやれたと思います。曲も最近作った曲もあれば、2年前の曲もありますし……、いや、メジャーデビューする前の曲もありますからもっと前の曲もありますね。その間にバンドとしても成長してきましたから、アルバムを通して聴くことで成長も感じられると思うんです。
Ray 「Break & Peace」と「Brilliant Day」のときはドラムがいて4人編成だったのが、その後でドラムが脱退し、3人になりましたし、メジャーデビューした頃とはサウンド的にも全然違ってるんです。3人になったことで、音楽的志向はバンドを始めた頃に戻ってるような気がします。今回のアルバムに入っている「FLY」や「Border Line」はメジャーデビュー前の曲ですが、僕らが影響を受けていたミクスチャーロックに近いものになっていますから。
──メジャーデビューしたのは2009年ですけど、DUSTZ自体は2005年に結成されてますから、そこから現在までの集大成的な作品になってる感じですね。
Ray まさにそんな感じのアルバムです。作り始めた1年前と比べてもいろいろ変化や成長があったと思いますね。例えば「Criez」は、ドラムが抜けて僕らが3人になったときに作った曲で、今叫びたいことや吐き出したいことを歌ったテンションの高い曲でした。アルバムもこういうテンションで作っていくんだろうなっていうラフなイメージがあったんですけど、やっていくうちにそのイメージも変わってきたんです。
──じっくりと時間をかけて作れたことが、いい結果になったと。
Gus はい。この1年の間にもいろんなアイデアが出てきて、さっきRayが言ってたように、最初は「Criez」や「Toi=Moi:▽」のようなデジタル音満載の曲が中心になるはずだったんですけど、途中でもっとロック寄りの路線に変更したり、もっとポップな方向に進んだり。歌詞に関しても日本と英語とフランス語をどういう割合にしていくかを3人で話し合ったり。いろんなことを試したり、考えたりしました。
日本語は漢字があるから深い感情を伝えやすいと思う
──今、歌詞の話も出てきましたが、このアルバムを聴くと、日本語、英語、フランス語の3カ国語がうまく融合されていて、それがDUSTZのオリジナリティになってるなって感じました。歌詞はどういうふうにして作っているんですか?
Gus まずオケを作って、歌詞のテーマを決めるんです。
Ray 例えば1曲目の 「Toi=Moi:▽」だと「コール&レスポンス」、それに加えて僕が思い描いていた「Toi et Moi」という言葉をテーマにして3人で話し合いながら作っていきました。大きく分けると、僕が英語と日本語、Gusがフランス語で、KenTは突拍子もないアイデアを出すという役割分担です(笑)。
──KenTさんは飛び道具的な?
Ray はい。僕とGusが悩んでるときに、「それってネタなの?」って思うようなツッコミを入れてくることがあるんですけど、あとで冷静に考えてみたらそれが案外良かったりするんです。「それ、攻めてて良いよね」って。
──3カ国語を使うことで、歌詞の幅も広がると思いますし、この制作スタイルはバンドにとって大きな武器だと思います。
Ray そうですね。言語によって使いやすい言葉と使いにくい言葉、伝わりやすい言葉と伝わりにくい言葉がありますよね。日本語は漢字があって、その中にいろんな意味を含ませることができますから、深い感情を伝えやすいと思うんです。英語は発音がリズミカルなのでラップなどリズムに乗せて聴かせることもできますし、フランス語は発音が柔らかいのでアンニュイな雰囲気を出すことができます。
KenT 僕らがよくやってるのが、歌詞を書く前に3人で曲を1回聴くことです。聴きながら「Aメロはフランス語かな」とか「サビはやっぱり日本語だなあ」とか、イメージから決めていくんですよ。
──その3つの言葉の割合もすごく絶妙ですよね。例えば、1曲目の「Toi=Moi:▽」は日本語の歌詞は少ないんですが、だからこそ逆に日本語の歌詞の部分が印象深い感じがしましたし。
Ray まさにそこが狙いなんです。日本語に関しては、そういう使い方をよくしています。聴いてる人に日本語詞のイメージを強く持ってもらうことができますし、あとで英語の部分やフランス語の部分もちゃんと読んでもらえれば、その曲の世界観をより深く理解してもらえると思いますから。
CD収録曲
- Toi=Moi:▽
- spiral
- Fantasista
- Re:member
- FLY
- Orphee
- Ca c'est Paris
- ホシクズメイロ ~Lost in star DUSTZ~
- Border Line
- Criez
- Break & Peace
- Brilliant Day DJ BASS Low -Life-Dogs Mix
DVD収録内容
- 「Criez」ビデオクリップ
- 「Swallow」ビデオクリップ
- 「spiral」ビデオクリップ
DUSTZ(だすつ)
Ray(Vo)、KenT(G)、Gus(B)からなるスリーピースバンド。全員が日本とフランスのハーフで、同じフランス人インターナショナルスクールに通っていた幼馴染み同士で2005年に結成。ミクスチャーロックをルーツとするタフなサウンドで耳目を集める。2008年にインディーズよりシングル「Future」を発表した後、2009年5月にシングル「Break & Peace」でメジャーデビュー。同年、フランスで行われた音楽祭に招聘され、現地のライブでは数千人を動員する。2010年にドラムが脱退し、現在の3人編成に。12月からクリエイティブディレクターの小島穣二、舘鼻則孝、塩内浩二のタッグによるキービジュアルを採用し、妖しくファッション性の高いビジュアルが話題を呼ぶ。2011年12月、1stアルバム「TROIS」をリリース。