dustboxの曲作り

──ではここからはアルバムの話を。まずはアルバムを完成させた率直な感想を教えてください。

SUGA　YU-KIが入ってから初めて作るフルアルバムっていうこともあって、長い時間をかけて作ったんです。あえてけっこう前からある「Here Comes A Miracle」を入れたり、前作の「skyrocket」に収録されている「Rise Above」を入れたり……いろんな時期の曲を入れて1stアルバムみたいに作りたかったんですよ。実際にできあがったのを聴いたら、音も勢いがあって、本当にフレッシュな作品になりました。思った通りにできてよかったです。

──YU-KIさんが入ったことで曲作りも変わりました？

JOJI　作り方は変わらないです。けどYU-KIは注文をちゃんと形にしてくれるので助かります。俺は音楽理論がまったくわからないので「ここはバシっとして、ここはツクツクやって」って感じでしか言えないんですけど、YU-KIはすぐに「こういう感じですね」ってやってくれる。

──そうなんですね。

JOJI　アルバム作り、面白かったですよ。作品を作るときはいつもSUGAが曲をたくさん持ってきて、それをみんなで吟味していくんですけど、SUGAは自分が絶対に入れたいっていう曲以外、選曲は全部俺らに任せてくれるんです。で、俺らは曲を選びつつ、場合によっては「こういう曲が足りないから作ってみて」ってSUGAにオファーして……って進めていくんですけど、YU-KIはけっこう言うんですよ、「この曲とこの曲似てますよね？」って。で、俺は「だよな」って決意を固める（笑）。SUGAに言うタイミングとかは幼馴染の俺が判断して。

SUGA　曲を作るとき「今まで使ってないリズムを使おう」とか「とにかくメロディのいいものを作ろう」とか、テーマを決めるんですけど、そうすると1つのテーマに対していくつも曲ができちゃうんですよ。そこから絞り込む作業って自分ではどうしてもできなくて。選んでもらいつつ、足りないところをJOJIとYU-KIが指摘してくれるって感じです。

──今作でSUGAさんが絶対に入れたかった曲はどれですか？

SUGA　2曲目の「Dive」と最後の「Twilight」だったかな。JOJIとYU-KIは「Thunder」がいいって言ってたよね。実は「Thunder」はすごく昔からワンコーラスくらいあった曲なんです。

JOJI　俺らってそういうネタをいっぱい持ってるんですよ。途中まで作ってみるけどできあがらなくて、ボツにして。でもなんか頭に残ってて、次の作品の合宿のときにSUGAに「あの曲のあのイントロってどんなんだっけ？」っていうと、するするっとできあがるみたいな。

SUGA　「Thunder」は「starbow」（2010年11月発売）を作ってる頃からあって。でも完成はしなかったんだよね。

JOJI　「今じゃねえな」ってボツにして。で、今回引っ張り出したら、なんかできた。過去の曲だと「Spacewalk」（2008年11月発売の5thアルバム「Bloomig Harvest」収録）とかもそうだよね。しかもそうやってできた曲ってフックになるんだよね。

SUGA　そうだね。俺は音楽のアンテナは常に張っていて、CDショップで試聴したり、素材をいつもストックしているんですけど、それらとボツになった曲が合うタイミングみたいなものがあるのかもしれないですね。

わけもわからず録った「1000 Miracles」

──1曲目「1000 Miracles」、何をやってるか全然わからないんですけどカッコいいですよね。

JOJI　最高の褒め言葉っすね！ あの曲は……レコーディングの当日にまずSUGAがYU-KIに口頭で「とりあえずこうやって叩いて」ってフレーズを言って。わけもわからず叩くわけですよ。で、次に俺が「JOJIはここ弾いて」って言われて、「これ合ってるの？」って不安になりながらも弾いたんですけど。完成したのを聴いたらちゃんと合ってたんですよ。だから俺たちも何やってるかわかんないんです（笑）。

SUGA　しかもドラムは断片的に「ズンターンズクズクターン」だけとか録って。「じゃあ次シンバル叩いて！」「シャーン！」「OK！」みたいな。

JOJI　SUGAの頭の中には完成図があるんですよ。こっちはわけわかんないんですけど。

SUGA　いつもイントロダクションみたいな曲はそうやって作ってます。

JOJI　全曲録り終わったあとに「あともう1曲あるんだけど」って言って始まるんですよ。恐怖ですよね（笑）。

初めてのモータウンビート

──6曲目の「Pity Party」はモータウンビートが使われています。モータウンビートの曲はこれまでになかったですよね？

SUGA　これはレコーディングの2日前に、JOJIたちから「こういう曲作ってくれ」って言われてできた曲です。

JOJI　「こういうテンポの曲やったら面白いんじゃないか」ってYU-KIと話してたんですよ。

YU-KI　ベン・フォールズの曲を聴いてて「こういうの、いいよね」って。

JOJI　漠然と「こういうウキウキする感じの曲が欲しい」ってSUGAに言ったら「OK、わかった。できないかもしれないけど作ってみる」って言われて。

SUGA　だって2日前ですからね。ベン・フォールズは大好きなので、すぐにどんな感じの曲かは思い浮かんだんですけど、俺らっぽさが出せるかは不安で。でもできちゃった。

──ウキウキするサウンドとは対照的に歌詞はシニカルで。

SUGA　そうですね、けっこう怒りの感情をぶつけてますからね（笑）。

──「ぼろぼろになりながらも 俺はいつも全力さ あれから20年たった今でも 夢を追っている」（日本語訳）という歌詞から始まります。

SUGA　俺らはずっと前を見続けたいっていう気持ちを書いたんです。「傷の舐め合い」というフレーズも出てくるんですけど、みんなで集まってネガティブなことを言い合ってるんじゃなくて、俺らはもっと前に進むよって思いを書きました。