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中村正人(DREAMS COME TRUE)×富野由悠季総監督対談|子供たちの今と未来に願いを込めて

DREAMS COME TRUEが劇場版「Gのレコンギスタ」のテーマソング「G」を配信リリースした。「Gのレコンギスタ」は、機動戦士ガンダムシリーズで描かれた宇宙世紀(ユニバーサルセンチュリー)後の時代、リギルド・センチュリーを舞台に主人公ベルリ・ゼナムが海賊部隊の少女アイーダと、謎の少女・ラライヤ、そしてモビルスーツ、G-セルフと出会い、ベルリの運命が動き出すさまを描いた物語。2014年に放送されたテレビシリーズに新規カットを追加し映像を再編集したのが劇場版「Gのレコンギスタ」だ。劇場版は全5部作で、第1部「Gのレコンギスタ I『行け!コア・ファイター』」のテーマ曲はテレビシリーズと同じく井荻麟作詞、菅野祐悟作編曲による「Gの閃光」だったが、劇場版第2部「Gのレコンギスタ II 『ベルリ 撃進』」では「ガンダム」シリーズの生みの親である富野総監督直々のオファーを受けたDREAMS COME TRUEが新たにテーマソング「G」を書き下ろした。DREAMS COME TRUEはオファーを快諾したものの、「『G-レコ』を若者に訴求したい」という富野総監督の希望に応えられるか不安があったという。しかし完成した「G」は、「G-レコ」で描かれている若者たちの群像劇を色鮮やかに彩るテーマソングに仕上がった。2人の対談の話題は「G」、そして「G-レコ」の制作の裏側から、日米の次世代のポップスターが若者からの支持を得た理由、世界情勢まで多岐にわたった。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 上山陽介

とても腹が立っています

富野由悠季 僕はね、最近すごく腹立たしいことがあってね。

中村正人(DREAMS COME TRUE) はい、なんでしょう。

富野 順を追って話すと、僕は劇場版「G-レコ」第1部のポスターが刷り上がったときに、この質量を支えるにはテレビ版の音楽だけでは足りないと思ったわけ。もちろん、テレビ版用に菅野祐悟さんが作ってくださった楽曲は素晴らしいんだよ。だけど、このあと第2部から第5部まで続くシリーズもそれでカバーするのは楽をしすぎなんじゃないかって。

中村 ああ。

富野 それを亜阿子さんに相談したら「この『I』のポスターの絵柄に合うのはドリカムじゃない?」と。僕も絶対にマッチすると思ったんだけど、あのドリカムがオファーを受けてくれるわけがないと最初はあきらめてた。ただ僕は10年前に中村さんのラジオ番組に呼ばれたことがあるから、ひょっとしたらだまされてやってくれるかもしれないという希望もあって。

中村 だまされちゃいました(笑)。

富野 ダメもとでオファーしたら快く受けてくださったんだけど、1つだけ懸念があったんですよ。僕らの世代からするとドリカムは若い人たちに向けて音楽を届けているように見えるわけ。だけど「G-レコ」のターゲット層は、実際のドリカムのお客さんよりもずっと若い。

中村 それは失敗だ(笑)。

富野 でも楽曲だけ抜き出せば、このドリカムらしいある種の高揚感を持った「G」という曲は、このポスターにも映画本編にも見事にハマっているんだよ。ただね、それが伝わらない人間が僕の周りにいっぱいいて、もう死にそう。これは一般論にも通じるんだけど、「見ればわかるでしょ?」と言っても、見てわかる人ってほとんどいないんですよ。それが宣伝の担当者はリアルロボット風……つまりシックで重厚感のあるように見せたがるんだけど、「G-レコ」はそういう作品じゃないのよ。だから「そうじゃないでしょ? 違うでしょ?」と言って聞かせる作業をこの1カ月間強いられて、とても腹が立っています。このへんの話は全部書いてくれていいんだけど、それじゃあ誰も読まなくなっちゃうか(笑)。

中村 いや、皆さん読みたがると思いますよ。

富野 本当にね、作品を理解しないスタッフのやつらをぶっ殺してやろうかと思った。(音楽ナタリーのスタッフに向けて)これも活字にしていいからね。

中村 太字にして強調したいぐらいなんですね(笑)。

左から中村正人(DREAMS COME TRUE)、富野由悠季。

米津玄師とビリー・アイリッシュ

富野 この前、中村さんがあのアーティストのことを教えてくれたじゃない。僕はそれまで彼のことをまったく知らなかったんだけど、中村さんの話を聞いてからいろいろ聴いてみたんですよ。米津玄師さんの曲を。

中村 そうそう、最初のミーティングで総監督が「若者に訴求したい」とおっしゃったんだけど、「だったら僕らじゃなくて、米津玄師を使ったほうがいいですよ」と米津くんを推薦したんでしたね。でも、進行的に間に合わないから「じゃあドリカムでいいか」と(笑)。

富野 そういう言い方もできるか!?(笑)

中村 (音楽ナタリーのスタッフに向けて)今のもそのまま書いてください(笑)。

富野 でね、そのとき中村さんから、米津さんが今の日本のポップスの主流なんだと教わったんだけど、その理由がずっと謎だったの。それが昨日やっと解けたんですよ。きっかけはビリー・アイリッシュ。

中村 ああ、グラミー賞の授賞式をご覧になったんですね。

富野 グラミー賞で主要4部門を独占した18歳とは何者だと、さすがに気になって昨日ちゃんと聴いてみたんです。本当にね、1カ月ぐらい前からさっき言った米津問題で気になっていたことがあって。

中村 米津問題(笑)。その言葉を聞いたら米津くん絶対喜びますよ。

左から中村正人(DREAMS COME TRUE)、富野由悠季。

富野 ビリーさんのあの眠たげな歌を聴いて思ったことを僕なりの言葉で説明すると、社会というのは進歩ないしは進化するんだけど、その頂点に達すると退行し始めるという。つまり後戻りしちゃう。アメリカでトランプ大統領が出てきたというのは退行現象の最たるもので、今の世の中は完全に停滞しちゃってるんだよね。その鬱屈感がああいう形で表出している。だから米津さんとかビリーさんは退行現象なの。

中村 いやいやいやいや!(笑)

富野 時代をさかのぼると、例えばジャズという音楽がビッグバンドからビバップ、ハードバップと進化して、技術的にもどんどん高度なことをやるようになってきたときに、なんでロックみたいな音楽に全部持っていかれるのか。つまりあれも退行現象なんだよ。だから僕はThe Beatlesが出てきたときに「なんでこれが人気なの?」と思って10年ぐらいまともに聴けなかった。まあ、10年経ってからほぼ全曲聴いてみて「なるほどな」と感じる部分もあったんだけど、いまだに彼らの音楽はあんまり認めたくない。ここからドリカムの話に戻すとね、中村さんからは米津さんという提案をいただいたんだけど、あとから考えると「G-レコ」が退行現象に飲まれなくてよかったなという話なんですよ。

中村 これはまた、富野由悠季がすごいことを言いましたね。今、全世界を敵に回しましたよ。

富野 米津さんにしてもビリーさんにしても、今ある現象でしかないわけで。でも僕は歴史を見てる。3000年後のことを考えて「G-レコ」を作ってるから。